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226(05/11/15)
フルムーン映画鑑賞はいかが

 さて。1本お薦め映画を紹介したい。以前、市民参加の映画製作を話題にしたことがあるが、原題「Turn Over 〜天使は自転車に乗って〜」が、タイトルを「二人日和」(監督・野村惠一)に変更して、いよいよ11月26日から都内の岩波ホールで新春ロードショー公開される。

 舞台は京都。神社の宮司などが祭典の際に身につける装束を、伝統の技で作り続ける職人・黒由 玄(栗塚旭)と妻・黒由千恵(藤村志保)、老夫婦の物語だ。寡黙に仕事に打ち込む玄と、可愛らしさが残る千恵の楽しみは、朝の一杯のコーヒーを共にするところから始まる。コーヒーをこぼしたり、夕食の箸を落として不思議がる千恵は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)に冒されていた。

 妻の病を知った玄は、偶然知り合った大学生の男を自宅に招き入れ、若者が得意とするトランプ手品を妻に伝授して貰うことで、少しでも病気の進行を遅らせようと努める。だが、その甲斐もなく症状は徐々に重くなっていき……。

 刺激的なシーンも激情的なセリフもなくストーリーは淡々と展開していくが、これが年老いた子供のいない老夫婦の日常そのものでもあるのだろう。静かに目盛りを減らしていく限られた歳月のなかで、永年連れ添った夫婦がどのように愛情を表現しあっていけるのか、どうすれば「あんたと一緒に暮らしてきて良かった」と思え、最期に微笑むことができるのか。

 ストーリーの展開に興味をそそられながらも、つい、そのような思いが脳裏をよぎる。そして、死を前にしながら心を通い合わせていくドラマの2人と、自らを照らし合わせながら、涙がこみあげ、拭っても拭っても、膝元にボトボト落ちるのだった。ムリヤリ涙腺を絞られたのではなく、勝手に涌き出てくるのだから仕方がない。

 もちろん、ツッコミを入れたくなるところが、ないではない。助演を務める大学生の男と彼女のカップル、その風貌と演技がNHKの朝の連続テレビ小説風であるところ、そして一緒に鑑賞した連れ合いが指摘していたことだが、ALS患者はこんなに簡単に衰えないのではないか、など。

 だが、それを差し引いても、十分に観る価値がある佳作だ。昭和の風景をCGという書き割りで描いた映画を観ながら「昔は良かった」などと懐かしむくらいなら、これからの老い先、夫婦の暮らし方について思いを馳せることができる「二人日和」を、強くお薦めしたいと思う。

 ドイツ・フランクフルトの「第5回ニッポン・コネクション」で、あの「血と骨」や「世界の中心で、愛をさけぶ」をおさえてグランプリを受賞したことも話題の1つ。映画のチラシには、「京都の町屋を舞台に夫婦の愛を繊細に綴る珠玉のラブストーリー」、「ミドルエイジのための極上の純愛映画が誕生した」とある。看板に偽りは、ない。

 音楽評や書評ならまずまず書けるが、映画評というものが僕は不得手。おまけに実はこの映画、昨年10月の東京映画祭の関連イベントで初披露された時に観たので、登場人物の印象的なセリフなど、細部の記憶は薄れてきている。映画評の実績がある知り合いのライターさんがブログを書いてくれているので、リンクさせていただこう。

●ネットの片隅で“I”を叫ぶ 「反則なまでに美しい日本映画
●とりあえず俺って何様? 「老いてなお持つ恋心

 プロデューサーの山田哲夫さん、本当にお疲れさまでした。どうぞ、一人でも多くの人が岩波ホールへ足を向けますように。

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227(05/11/15
今年も長いトンネル突破間近

 さて。去年も同じようなことを書いたが、毎年この時期にピークを迎える大きな仕事で、ようやく遠くに光が見えてきた。まだまだ校正ラッシュで多忙な日々が続くが、「今年も何とか乗り越えられそうだなあ」という実感。

 毎年10月半ばから11月半ばまで、ほぼ毎日、朝から深夜までパソコンに向かう日々が続く。ひたすら情報収集や電話・メール問い合わせ、原稿執筆に明け暮れ、もちろん休日はナシ。ホームページのコンテンツ充実やメルマガ発行も放ったらかしで、先日は某メルマガ配信サイトから「発行周期を守ってください」とお叱りを受けてしまった。

 正直なもので、ろくにコンテンツ更新がないと、サイトへのアクセスは右肩下がりに落ちる。「頻繁な情報更新がないウエブサイトは見放される」というのは、僕の憶測混じりの持論だったが、どうやら間違いなさそう。

 ありがたいことに、長いトンネルを抜けた後には、複数の小さな仕事と、複数の大きな仕事が待ち受けている。景気はやはり、少し上向きのようで。

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228(05/11/17
プリンターのランニングコストって…

 さて。もう1週間ほど前のことだが、よりによって最も多忙だった時期にインジェット方式のプリンターがダウンしてしまった。1日当たりの出力枚数は恐らく365日平均でも10枚は下らないと思うが、まあ、3年半の間、よく酷使に耐えてくれた方だろうと思う。

 電子メールで原稿や校正をやりとりする時代になったとはいえ、物書きにとってプリンターは必須の道具の1つだ。ディスプレイ上でも原稿を推敲することはできるが、ここぞという時には出力し、印刷された紙で確認することで、改めて客観的に文脈を読みとれることもある。それに、複数の手元資料をデスクトップに広げるのも不便だから、どうしても出力せざるを得ない。

 どうにもやり過ごせなくなって、新品のプリンターを求めて近くの量販店に走った。売り場に辿り着いてビックリしたのは、もはやプリンターは写真プリント機になってしまっているということ。モノクロ文書を中心としたSOHO用途の機種が皆無なのだ。年賀状のシーズンが近く、住宅街の量販店だから仕方ないとも言えるのだが……。

 目的にピッタリの商品がない以上、よりマシな機種を選ぶしかない。都心まで買い物に行く時間はないし、価格ドットコムで購入して配送を待つ余裕もない。そこで、カラー出力の機能が最も低そうな昨年モデルのプリンターを購入した。インクタンクが小さいので不満があったが……。

 不満は的中で、実際に使い始めてみたら、あらまあ、1週間でモノクロのインクタンクが空になってしまった。これから一体、何個のインクタンクを常時ストックしておかなくてはならないのやら、頭が痛い。

 以前まで使っていたプリンターの場合、初期コストとランニングコストがどのくらいなのか計算してみた。Excelで記録してある経費を合計してみたら、プリンターそのものは19,000円くらいだったが、インクタンクの購入代金合計は、3年半で何と約5万円。げげっ。こんなに使っていたんだと、改めて驚いた。

 プリンターの類は消耗品で儲けるビジネスモデルになっている、というのは先刻承知しているが、これほどランニングコストがかかっていたとは。機種選びの重要ポイントは、消耗品にありと、つくづく実感。

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229(05/11/25
Mac OS Xへ踏み出すか否か

 さて。プリンターに続いて、やはり3年半前に購入したMac本体も、そろそろ寿命が近づいている。僕の愛機はiMac DVだが、CRT画面がビビリ始め、いつプツンと切れても不思議ではない状態。CD-ROMドライブが機構的にヘタってきて、少し分厚いCDディスクだと、スロットイン方式の口から排出しにくくなってきたのも悩ましい。企業などから借りたCD-ROM収録の画像を取り込むのも、自分用の音楽CDを作成するのも、見送らざるを得ない状況だ。

 現在使っているOSは9.2。今から新品を購入するとなると、時世としてはMac OS X Tiger(v10.4)になる。少なくともOS XのTiger以前のバージョン(v10.2など)には、せざるを得ない。ハードそのものは、Mac mini+安価な液晶ディスプレイで10万円程度だが、問題はソフトウエア。使い慣れたワープロソフト(EGWORD)や、ホームページ作成用ソフト(Dreamweaver、Fireworks)、Windowsユーザーとのファイル共有化には必須となるマイクロソフトのOffice for Macも、少なくともアップグレード版の購入が必要。まあ、10万円以上の出費になるのだろう。あわせて20万円か。うーむ。

 Mac miniにはクラシック環境で動かすことができるソフトウエアもついているので、現状のソフトで間に合わせることもできそうだが、実際に使ってみたら問題が続々……という可能性もあるしなあ。究極の選択として、中古のiMacで急場しのぎ、という方法もあるが。うーむ。

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230(05/11/28
東北新幹線のカタログ

 さて。障害者プロレス「ドッグレッグス」仙台興行に行くため、日曜日、東北新幹線に乗った。東北新幹線には、飛行機のような車内誌が置いてある。読み物中心の「トランヴェール」と、もう1つは通販カタログ誌の「Train Shop」だ。このジャパニーズイングリッシュなタイトルのカタログ誌がなかなか珍品ぞろいで、非常に愉快。

 例えば、自宅の神棚に置いておく、賽銭箱状の貯金箱。ご先祖様に手をあわせるたびに10円なり100円なりをチャリンと入れ、貯まった頃に、賽銭箱の浄財を自ら頂戴するというキテレツな代物だ。天然木製で、鍵付き、26,250円なり。

 例えば、一人用のミニこたつ。自分の膝小僧だけが入る大きさで、6,800円なり。やはり天然木製。これが置いてあるワンルームマンションを想像すると、なかなか笑える。ウケ狙いの景品としては面白いかも。

 例えば、膝下までのロング丈のトランクス(パンツ)。和式便所で“大”をするときは、下ろしたパンツが膝のあたりに固まってしまって、使いにくそうだ。6枚組で5,145円なり。

 例えば、ある種の浴場を思わせる、金ピカのたらい(湯桶)。銀イオンでカビがつかないのがウリで、これを使うだけで風呂場のカビをシャットアウトできるという。うーむ、にわかには信じがたい。1個9,240円なり。

 例えば、使わないときはステッキに変わる傘。宴会マジックのように、傘がするするとステッキに早変わりするものだが、濡れた傘をステッキに収納したら、ステッキの中はカビだらけになりそう。そもそもステッキを持ち歩くサラリーマンって、いるのかしらん。10,290円なり。

 例えば、人が近づいてきたのをセンサーで感知して犬の鳴き声を出す装置。機械に収録された鳴き声は単調だろうから、大した防犯効果はないんじゃないの。13,440円なり。

 ……といった具合。飛行機の機内カタログは、割合まっとうな商品が多いだけに、このカタログ誌の珍妙さは、なかなか面白かった。2時間弱の間、まったく退屈せずに過ごせたという意味において、貴重な存在かも。

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