【No.119】 2003年1月6日号

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モノづくり日本、自信回復の予感

 僕は経済学者でもなければ、経済記者でもありません。とくに分野を選ばない雑食系のフリーライターの一人ですが、それなりに齢を重ねてくると、時代に対する予感のようなものが時々わいてきます。最近の予感は、「そろそろ日本経済にも好転の兆しがあらわれるのではないか」というもの。具体的には、モノづくり日本の自信回復です。

 バブル崩壊からの立ち直りができないなか、日本の企業は生産拠点をどんどん海外に移転して、安い労働力で安い製品を作り、価格破壊で支持を得る方法を選んできました。安いモノでなければ売れないような風潮のなか、多くのメーカーはコスト低減に奔走したわけですが、乾いたタオルをいくら絞っても限界はあるわけで、そろそろ息切れ気味。消費者も、古くからの言い伝えである「安かろう、悪かろう」を改めて胸に刻んで、ライフスタイルを見直し始める、というのが僕の楽観的なシナリオです。

 価格破壊の象徴に、マクドナルドとユニクロがありました。昨年8月、マクドナルドは一度やめた激安路線を復活させましたが、たぶん今度は失敗するのではないかと思っていたら、案の定、客はあまり戻ってきていない様子。狂牛病の影響はあるものの、安いモノはそれなりのモノであることに、お客も気づき始めているのでしょう。

 もう一方のユニクロも本体の安売り衣料品は苦戦が続いているものの、「付加価値」型の食品業であるSKIPはなかなか好評らしい。実際にお試しセットを申し込んでみて、期待ほどではなかったというのが正直な感想ではありますが、生真面目なお百姓さんが大切に育てた野菜などを、それなりの値段で販売するというのは、実に正しい商売。一見、バブル時期にもてはやされた高級野菜と似て見えますが、あっちが高級野菜なら、こっちは王道野菜。「付加価値」というより、「本価値」といった方が正しいのかもしれません。

 安物家電ばかりを作り続けていた国内家電メーカーにも、激安路線から距離を置こうとする姿勢が見え隠れしています。僕が最近、取材する機会の多い環境関連の話題を持ち出せば、省エネ技術を極限まで磨き上げることで、「安いけどエネルギー大量消費型」の廉価品や、アジア製品に勝とうという本音が見えてきます。燃料電池車やハイブリッド車を次々と投入している国内乗用車メーカーも、環境を切り口に、「本価値」な製品で世界をリードし続けようと考えているのでしょう。

 毎日のように経済誌や経済紙を読んでいるわけではないので、この程度の事例しかあげられませんが、何となく、世の中の空気が変わりつつある、というのが僕の本能的な直感。マスメディアも、他にはマネのできない製品を淡々と作り続けている人々や企業に、目を向け始めているような感じがします。そう、日本のモノづくりだって、どっこい、捨てたものじゃないよ、という脈略で。

 少し話題をそらせてしまうかもしれませんが、最近のモノ作りの思想に「プロダクトアウトからマーケットインへ」という考え方があります。作り手の自己満足ではなく、消費者の求めるものを徹底的に探り、マーケットの要望に添ったものを作ろうというものです。実に正論です。正論ではありますが、ひねくれ者の僕としては、マーケットインだけではつまらないと思っています。大きなマーケットをねらうような巨大メーカーはそれでいいけれど、一方では、プライドを前面に出してガンコ一徹に「プロダクトアウト」なモノづくりを押し通す弱小メーカーも、もっと出てきてほしい。

 消費者に媚びないけれど、結果的には消費者に喜ばれ、長く愛用されるような本物を作る。そんな作り手が、マーケットインの隙間を巧い具合に埋めていける時代になれば、モノづくり日本の自信回復も本格化したと言えるでしょうし、その兆しは何となく見えている、と思うのですが。

 そんなことを考えていた年末に、友人から嬉しい便りが来ました。何でも、「うどん屋」を近々始めることにしたのだそう。当ウェブサイト開設にあたって、基礎から教えてくれたウェブプランナー氏なのですが、四国出身ということもあって、麺にうるさい職人気質の男。出汁の取り方、ご飯の炊き方にも一言あり、東京都内で一緒に働いていた10年近く前には「外食のメシがまずい、まずい」と口癖のように言っておりましたから、食べ物やさんを生業にする素質は十分。

 何でも「美味いうどんで、それなりの値段をキッチリいただくお店」にするそうな。「うどん屋」といえば、昨年あたりから東京・渋谷を中心にセルフ方式のうどん屋さんが、新しいファーストフードとして大ブレイク。ちょうど機が熟した、ともいえるわけですが、ウケているのは安さが人気のお店ですから、「それなりの値段」をいただくのは、冒険といえば冒険。でも、正しい商売を選んだなあと思いますね。ぜひぜひ、頑張ってほしい。

【関連する過去のコラム】
「安売り王国に未来はない(たぶん)」2002年3月発行
「もう一度奮起して、作り手さんたち 」2002年2月発行
「ユニクロ大好き・大嫌い」2001年5月発行
「ぐぁんばれ、品川の駅弁・常盤軒」2000年10月発行

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