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356(08/10/05)
FTBの伝説第二章が始まるのか。

 さて。35年ぶりの再結成で再び活動を始めたフラワー・トラヴェリン・バンド(FTB)の、日比谷野音コンサートを観に行ってきた。彼らについては、こちらこちらで自分なりに紹介しているし、公式サイトやらmyspace のページも開設されているので、紹介は省いておく。やや偏狭的に一言で表現すれば、「日本最強のロックバンド」である。

FTB会場

 この日の会場となった日比谷野外音楽堂には、70年代からタイムスリップしてきたかのようなヒッピースタイルのオヤジ、定年間近まで現世を生き抜いてきたお疲れ気味のオヤジ、いかにも音楽業界やらその周辺で生きています風の玄人オヤジ、そして音楽で飯を食っていきたいんですけど風の若者たちが、わんさか集まってきた。ぎっしり満員、立ち見もかなりという盛況ぶりだった。知っている顔だけ挙げれば、「TOKIO HOT 100」の生放送を終えたばかりのクリス・ペプラーご夫妻(たぶん)、サエキケンゾウ氏の姿も。

 ジョニー、ルイス&チャーによる長めの前座、休憩に続いて、まずステージに登場したのは、予想通りと言うべきか、FTB結成のキッカケを作った内田裕也さんだった。70年代当時を振り返りつつ、FTBを簡潔に紹介する。いわく「カナダで評判を呼び、凱旋公演で日本に戻ってきたとき、東京都立体育館は1万人のキャパに観客はわずか1500人だった。日本にもロックの時代が来ると信じていたのに、彼らが帰ってきたときはフォーク全盛だった」……。そして固有名詞は覚えていないけれど、英国のルポルタージュらしき本を示し、「これを読んで嬉しかったぜ。FTBは日本一のバンドだと書いてあるんだ。ありがとー」。

 そしてFTBの面々がステージに登場。挨拶もそこそこに、いきなり「MAKE UP」からスタートだ。彼らが解散した後、日立キドカラーのCMに使われた、たぶん一般的には一番よく知られている曲だ。このあとは、懐かしい名曲「SHADOWS OF LOST DAYS」などを挟みつつも、35年ぶりの新作アルバム「We Are Here」からと思われる楽曲が続いた。僕はまだこのアルバムを聴いていなかったので、耳なじみのない曲ばかりだったが、それでもキッチリ聴かせるところはさすが。演奏力の確かさと巧みな構成で、グイグイ引っ張っていく感じだ。終盤間際になって「SATORI PART 2」など往年の名曲も披露されたが、全体の印象としては、往年の名曲半分、新作半分といったところだろうか。

 MCは少なめだったが、そのなかで今後の計画が明かされた。この日の日比谷野音でひとまず国内でのコンサートに区切りをつけ、間もなく海外進出に再び挑むのだという。NYで公演が決まっているそうで、カナダにも渡るとのこと。そしてジョー山中は、珍しくも感極まって涙ぐみながらこの日集まった観客に心づくしの礼を言うのだった。

 ジョーの言葉を聞いて、彼らの再結成が生半可な計画ではないことを知った。かつて、カナダで食うや食わずの生活をしながら現地で評判を得、鼻高々で帰ってきた日本ではマスコミ報道もほとんどなく、十分に受け入れられないままに早々と解散してしまい、伝説だけが残った……あの35年前に途絶えた物語の続きを、今から体現しようとしているのだろう。「やり残したことが僕らにはある、つかみかけたはずの夢の続きを、もう一度見てみたいんだ」と。だからこそ、あえて新作アルバムからの曲を多用したのだろう。

 夢の続きは、たぶん平坦ではない。70年代初期には、日本の洋楽的世界(今で言うJ-POP)の中で圧倒的すぎる演奏力と存在感、作品としての出来映えを示していたのは紛れもない事実だが、今では夏フェスの映像などを見ていてもわかるが、日本のバンドもまずまず遜色ない演奏をしている。にもかかわらず、欧米で受け入れられた日本のバンドは数えるほどしかない。そんな分厚い壁を、彼らならぶち破ってくれるのだろうか。

 今の時代であれば、海外で評判を呼べば日本でも大きな話題になり、凱旋公演もそれなりの観客が集まるだろう。想像を逞しくしてしまえば、来年とか再来年とか、再結成レッドツェッペリンの東京ドーム公演が実現したときに、前座で凱旋を果たす、などという幸せな物語が実現するといいのだが。そう、35年前に前座を務めるはずのローリングストーンズ公演が流れてしまい、それを契機にバンドを続ける動機を見失い、FTBが解散してしまった……あの夢の続きが、ファンとしては見てみたいものだ。

 ロックバンドの再結成は最近の流行だが、どうやらFTBの場合は、「昔の名前で一稼ぎ」といった輩とは、一線を画していると見て間違いなさそうだ。そんな彼らにかける言葉は……。

 「おかえりなさい」ではなく、「行ってらっしゃい」なのだろう。

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357(08/10/08)
その続き。

 さて。上記に関連して、日経トレンディネットにこんな記事が出ているので、ご参考までに。

40年の時を経ていま甦る、日本のロック創生期の興奮!〜フラワートラヴェリンバンド再結成(前編)
同(後編)

 この記事の後編を読んでいて、内田裕也さんが紹介していた本の名前もわかった。実にありがたい。さっそく入手してみることにしよう。

JAPROCKSAMPLER ジャップ・ロック・サンプラー −戦後、日本人がどのようにして独自の音楽を模索してきたか−』(ジュリアン・コープ・著、奥田祐士・訳)

 日経トレンディネットで紹介されている映画、公開をとても楽しみにしている。70年代初期の、あの熱気とむんむんする臭気が、スクリーンからにじみ出てくることを期待しつつ。

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358(08/10/19)
THE OUTSIDER第参戦 。

 さて。飽きもせずに3回目のTHE OUTSIDERを観戦してきた。回を追うごとにチケットが取りにくくなり、今回は早々と入手したつもりが初めての2列目になった。発売開始数日後には完売だったらしく、前回に続く満員札止めとなった。

 全25試合の結果は、こちらにていねいに掲載されているので、全体の印象を少々。3回目とあって大会運営がスムーズになってきたのは喜ばしいが、1回目のようなヒリヒリとした熱さや毒気がなくなってきて、単なるアマチュア総合格闘技大会に近くになってきた感は否めない。幸か不幸か、暴れる応援団はまったくいなかった。客受けを狙ったような入場パフォーマンスも目立ちはじめ、僕としては少々違和感があった。

 最大の不満は、この日のメインイベントから3試合遡った第24試合に組まれていた加藤紘也選手と堀鉄平選手の試合が中止になってしまったこと。数日前から分かっていたこととはいえ、僕的にはこれがメインイベントと思っていただけに、非常に残念だった。加藤選手はTHE OUTSIDER第弐戦で殴り合いのベストバウトを受賞した選手。堀選手は、悪たれガキの更生をめざす現役弁護士。意地と意地の張り合いを期待していたのだが。

 メインイベントはそれなりに面白かったが、塀の中に入った経験を持つ川村選手のあまりの威厳と迫力に対戦相手の心が途中で折れてしまい、一方的な試合になってしまった。勝利の後、川村選手はマイクを掴んで「ふざんけんなよ、リングス!」と唐突なセリフ。何があったのかさっぱり分からないが、何か事務局の不手際でもあったのだろうか。とはいえ、そんなマイクパフォーマンスがされた瞬間のリングスCEOの前田さんは、誰を表彰するかレフェリーたちと協議中だったらしく、聞いていたのか、聞いていなかったのか(苦笑)。まあ、最後に川村選手はていねいに謝意を述べていたから、尾を引く遺恨ではなかろうが。

 今回、いちばん良かったのは、個人的に第壱戦から高く評価していた吉永選手の試合(第25試合)。この日もパウンドの嵐を受けながら下から腕十字をガッチリ決めての逆転勝利。毎回このパターンで、冷静沈着な強さが光った。MVP受賞は当然だろう。対戦相手は懲役6年で服役していた選手だが、彼も強かった。次回に期待できそう。

 さて。そろそろTHE OUTSIDERも次のステージに移る時期に来ているようだ。例えば、多くの選手に闘う機会を与える実験的な興行と、強さを競う興行に、そろそろ分割してもいいのではないか。試合のレベルが、ずいぶん違うような気がしてきたからだ。

 次回は12月20日、再びディファ有明。そろそろ後楽園ホールで、と想像していたが、平和な(?)家族連れが集う施設が側にあるため、難色を示されているよう。ともあれ、次回もできるだけ観戦に行きたい。この日、中止になった加藤紘也VS堀鉄平選手の試合をぜひ観てみたい。

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359(08/11/05)
シガー・ロスの世界を堪能。

 さて。汗と血の臭いだった前週日曜日から一転、10月26日は甘いメルヘンの匂いがするシガー・ロス(Sigur Ros)の来日公演を観に行ってきた。シガー・ロスはアイスランドのポストロックバンド。70年代風に言うならばプログレッシブ・ロックのグループである。タメの効いたジワジワ盛り上げ型の幻想的な楽曲が多く、天にも昇るような夢心地に浸ることができる希有なバンドだ。

 知らない人は、僕が以前に書いたこちらのレビュー、そして以下のプロモーションビデオ(PV)をお楽しみあれ。僕は05年のフジロック公演映像で初めて彼らのことを知り、このPVで完璧にはまってしまった。

 

 ついでに言えば、分別のある大人の皆さんは、こちらのページの“PLAY VIDEO”をクリックして「 gobbledigook」をご覧あそばせ(ダウンロードに時間がかかります)。最新アルバム「残響」からのリードトラックで、テレビ放映不可なアダムとイヴたちの戯れが描かれている。

 さて、この日は東京国際フォーラム・ホールAでの東京公演。約5000人が入る会場はチケット完売でぎっしり埋まり、20代から30代前半あたりの若者の姿、とりわけカップルの姿が目に付いた。僕のような50代以上のオッサンは数%もいなかっただろう。

 目の前の原稿締切に追われているうちに公演から1週間以上が経ってしまい、かなり記憶が薄れてきたが、一言で言えば、彼らの原点を改めて思い知らされたライブだった。最新アルバム「残響」は歴代作品の中で最もポップな作品に仕上がり、結果的に最高のセールスを記録しているわけだが、ライブのなかで否応ない存在感を見せつけたのは、いずれも「サイケ」や「ノイジー」といったキーワードがふさわしい楽曲だったからだ。

 観客の年齢層からしても、「残響」あたりで飛びついた新参者のファンが多かったと見え、楽曲によっては退屈な印象を持ったかもしれない。実際、前列のカップルのうち、女性の方はすっかり途中から醒めてしまい、椅子に座ったまま戸惑っていたように見受けられた。

 観客にとって一番なじみの良い「 gobbledigook」で観客手拍子&小躍りの盛り上がりを見せ、ひとまずフィナーレを迎えた後、熱烈なアンコールに応えて2曲を演ってくれたのだが、最後の曲がもっとも抽象的かつノイジーな楽曲で、これぞ彼らの真価発揮。体内物質がドドドッと噴き上げるような興奮をおぼえてしまった。夢心地の楽曲もいいが、ライブではこうした楽曲が映える。それを彼らも知っていたのかもしれない。

 会場では音楽評論家の重鎮、渋谷陽一さんの姿も見かけた。自身の社長ブログには「素晴らしいコンサートだった」とある。同感ではあるが、できれば、もっと小会場で観たかったというのが本音である。

●渋谷陽一の社長はつらいよ 10月26日の記述へ

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360(08/11/05)
久しぶりの関西行き。

 さて。週末は金曜日の夜から日曜日にかけて、関西へ行ってきた。主な目的は、年末から始まる新しい仕事の打合せ、社団法人現代風俗研究会のワークショップであるプロレス文化研究会(プロ文研)の集会参加と同研究会に関わる某書籍(近々紹介する予定)の出版パーティへの参加、そして実家の様子を見ること、など。

 プロ文研の集会会場である京都は、僕にとって胸キュンスポットだ。大学時代の後半、ここで青春の光と影を経験している。とくに四条〜三条河原町周辺は、8mmカメラを振り回して映画ロケをしていた場所があちこちにある。商店はすっかり顔ぶれが変わっているが、地上げや再開発をあまり経験していない分、街の骨格自体はさほど変わってはいない。

 胸キュンスポットの1つは鴨川河畔。1980年前後当時は、夕方以降5メートルおきにカップルが座っていて、公園デビューならぬ、鴨川河畔デビューが憧れだった。今回は昼間だったせいか、カップルの数はわずか。

三条河原町

 件の出版パーティでは、意外な人ととも巡り会って楽しかった。まさか70年代前半の関西ロックシーンの生き証人と会えるとは……。ファンである井上章一(最新著作は『性欲の文化史』!)さんも相変わらずの井上節を披露。この、まったりとした空気は関西でしか味わえない。

 日曜日は実家でお手製カレーを作ったり、パソコンで仕事をしたりしていたが、親といろいろ話ができたのは良かった。相当口酸っぱく注意を促していたが、振り込め詐欺に引っかかる直前だったようで、それを防いでくれた兄貴にも感謝。

 巷では3連休とあって、金欠人御用達の「ぷらっとこだま」(10,000円)のチケットが早々と売り切れで、帰りは初めて、神戸空港からスカイマーク(12,000円)を利用した。ポートライナーで空港をめざすが、沖合の人工島・ポートアイランドも胸キュンスポットの1つ。関西には思い出が多すぎて、時々胸が苦しくなる。

 来年は関西での仕事などで向こうに行く機会が増えそうだ。それはそれで、嬉しいこと。

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