061〜065

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061(03/01/06)
年頭所感

 さて。新年である。昨年末は、僕が記憶している限りでは初めて、年賀状の作成をパスしてしまった。家族に不幸があっても、年始のあいさつだからと続けてきた年賀状だが、今回はどうにも時間が作れなくて、なくなく見送ってしまった。

 仕事はスピーディに完成度高くやりたいが、仕事だけの日々ではすりへってしまう。今年は、「おいしい生活」もとい、「おそい生活」=スローライフを何とか実現していきたい。四季の移ろいを愉しみ、年間30本以上の映画を愉しみ、旅を愉しみ、人々との語らいを愉しみ、読書にも精を出したい。

 アジアの西端と東端でキナ臭い動きが見られるが、平和であってほしい。人が人を殺すことは、死刑執行や自殺を含め、僕は一切認めない。

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062(03/01/06)
年末の紅白、息絶え絶え

 さて。年末の紅白を、最初から最後まで見届けた。良くも悪くも紅白歌合戦は、時代を反映している番組だから、2002年の風俗を目に焼き付ける意味で、見届けようと頑張って見届けたのだ。

 視聴率の悪さは今さら言うまでもないが、その原因は、NHKのセンスの悪さにあると痛感した。脚本(構成)・演出の悪さと、司会者の悪さだ。元々バラエティ色の濃い番組作りはへたくそなのに、一生懸命、バラエティ番組っぽい作りをするから、あちこちでボロが出る。

 とくに酷かったのは、曲と曲の間の幕間トーク。何度も何度も練習し尽くしたために、すっかりノリが悪くなったギャグをそのまま続けるものだから、もう、寒いのなんの。それを穴埋めしようと、局アナが一生懸命に張り切って余計に寒くなる。時折、事前のカット割り通 りに映し出されるゲスト審査員たちの冷めた目が、さらに追い打ちをかける。

 最後まで見続けて、紅白を頑なに拒み続ける歌手の気持ちがようくわかるようになってきた。もはや紅白は、歌い手としてのハクづけには何の効果 もないのではないか。少なくとも、アーティスト系の歌い手にとっては。

 ただ、歌そのものでは、魅せられた部分も少なくなかった。オペラ歌手対決、日本民謡対決、(アルフレド・カセーロ&)THE BOOMや中森明菜、中島みゆき、鳥羽一郎(&宇崎竜童バンド)は、見て損のない歌いっぷりだった。史上ワースト2位 を記録した今回の視聴率。結局、得をしたのは、今後あちこちからお座敷がかかるであろうオペラ歌手2人と、超ロングランヒット中の「地上の星」が年明けの1/2付けオリコンチャートで一気に3位 に入った中島みゆき、くらいか。

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063(03/01/09)
魑魅魍魎が蠢く格闘技界

 さて。総合格闘技のイベントとして人気を集める「PRIDE」運営会社の森下社長が今朝、首つり自殺をしたという。昨年5月には、大仁田厚が旗揚げしたプロレス団体「FMW」の荒井社長が、やはり首つり自殺をしている。前者の自殺原因はまだ不明だが、後者は借金苦。衆目のなかで怖いお兄さんたちに取り囲まれ、恫喝されたこともあったという。

 プロ格闘技界は、競技者やその取り巻き、興行界を含め、良くも悪くも魑魅魍魎(ちみもうりょう)たちが蠢く(うごめく)世界だ。周囲と協調しながら考え、行動する“良識派”の人間はごくごく一握りで、圧倒的多数は「俺が、俺が」と主張の強い自分勝手な人間ばかり。およそ常識が通 用しないと言う点では、ほんの一時期前までの芸能界と似たところもある。

 もちろん、キツイ個性を持った面 々が蠢いているからこそ、リング上では面白くもなる。そんなサファリパークのような世界に、格闘技への憧れを抱くド素人が首をつっこむと、手痛い目に遭うということか。昨年末には立ち技系格闘技「K-1」運営会社の石井社長が脱税容疑で告発された。自身が魑魅魍魎の一人だから怪我で済んだ、と言えなくもない。

 PRIDEとK-1は、ここ数年で一気に人気を得た。これについては、以前コラムを書いたこともあったが、おそらく、今回の一件で人気は失速する。いわばマット界のバブル経済だ。結局マット界は、流転を繰り返して、高度経済成長と因縁深いアントニオ猪木の一人勝ち、ってことか。

 さて。スタッフとして関わっている障害者プロレス「ドッグレッグス」にも、個性のキツイ連中が集まっているが、こちらには猛獣使い、ならぬ レスラー使いの上手な代表がどんと控える。来週土曜日は57回目の自主興行「Reason」が下北沢で開催される。たぶん、今回も満員の興行となるだろう。お楽しみに。

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064(03/01/23)
仕事場に珍しくお客さま

 さて。フリーライターの仕事場を訪ねてくる人といえば、生命保険や新聞のセールスか、宗教の勧誘くらいのもの。仕事関係で訪ねてくることは、まずない。そんななか、昨日は珍しく客人があった。僕が加盟している出版フリーランスの組合「出版ネッツ」の機関誌の取材で、「ごめんやして! 仕事場訪問」というコーナーに掲載してくださることになったからだ。

 むさくるしいところにお越しいただいたのは、かつて一緒に仕事をしたこともある編集者S氏と、かつて勉強会で同席したこともある編集者のY嬢。これまでの仕事歴や今後の展望、仕事場の使い方などについて、あれこれ、くっちゃべった。

 普段はインタビューをする立場だが、今回はインタビューされる側。以前、雑誌『Voice』のインタビューをお受けしたときもそうだが、改めて人に問われると、自分が何を考えているのか、頭の整理がつく。とはいえ、取材する側の立場もよくわかるので、「これで原稿になるのかなあ」とか「芯になるような台詞を残した方がいいかなあ」とか、あれこれ考えてしまうのも事実。

 年末の大掃除もできない忙しさだったので、客人を迎えるのをきっかけに、今回大掃除をした。おかげで、引っ越してきた当時のようなキレイな仕事場になった。お客様を迎えるというのは、いいもんだ。美味しい煎茶を買っておいたのに、お出しするのを忘れてしまったのは失敗。

 いい句読点になった。

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065(03/01/26)
お薦め! 映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』

 さて。ニュースなどでも取り上げられている話題のドキュメンタリー映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』(監督/マイケル・ムーア)を観てきた。東京では恵比寿での単観上映だが、土曜日初回は早々と満員で入れず、2回目の上映を予約してようやく観ることができた。

 99年4月、アメリカ・コロラド州のフツーの高校で起きた銃乱射事件を入り口に、ジャーナリストのマイケル・ムーア氏がアメリカ銃社会の闇を紐解いていく……という社会派の記録映画なのだが、随所に悪戯っぽい笑いを交えたシーンがちりばめられていて、観客をまったく飽きさせない。

 なかでも秀逸なのは、映画の中に挿入されているアニメで、「サウスパーク」作者のマット・ストーンによる「アメリカ小史」は必見。個人的には好きではないけれど、何かと悪役にされているロッカーのマリリン・マンソンのクレバーぶりも発見だった。

 憎々しいゴキブリの映像をリアルに描き、怖がらせて殺虫剤を売ろうとする企業の姿勢を、僕は以前コラムで非難したが、これと同じ構図がアメリカ銃社会に潜んでいることを明らかにした点は、この映画の最大の功績だろう。★4つ+おまけ☆+拍手。

 さて。これと前後して、『AIKI』(監督/天願大介)と『刑務所の中』(監督/崔洋一)を観た。『AIKI』はいわゆる障害者ものの映画だが、ステレオタイプな障害者ものにありがちなお涙ちょうだいがなく、リアルな青春ドラマとして描かれているところに好感。助演の石橋凌、火野正平の抑えた演技が光る。ともさかりえは、背中だけでも脱いでほしかった。後半の1/3がファンタジーになってしまったところは少々残念。★3つ+おまけ☆。

 『刑務所の中』は、珍妙なしきたりで成り立つ刑務所の中のおかしさを淡々と描いた佳作で、やはり男優の抑えた演技が光る。マニュアル映画仕立てで興味をそそりながら登場人物のおかしさで見せていく手法は『お葬式』とも通じるかも。見終わると、無性に旨いメシが食べたくなる。ただ、これがキネ旬2位でいいのかなあ、という思いも。★3つ+おまけ☆。

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