●広告ヒ評●(02) 2001年6月1日号

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怖がらせるなんて、ずるいよう

 今年も害虫シーズンが到来しました。害虫シーズンが訪れて不愉快に思うのは、築数十年が経過する木造アパート(要するに我が家ですが)の台所周辺にときおりお出ましになる害虫、ではなく、殺虫剤のコマーシャルです。

 喘息など疾患の原因になるダニや、家の構造部分を食い散らすシロアリはともかく、ゴキブリやアリは、いわゆる「不快害虫」と呼ばれるものです。つまり、実害はないけれど人間にとって不愉快な存在だから「害虫」であるわけです。ゴキブリなどはバイ菌を運ぶ実害が伴うとも言われますが、羽の表面は案外つるつるしていて、大して媒介にはなりません。むしろ、洗っていない自分の手の方が、よほどバイ菌を運ぶ力が強いと言えるでしょう。

 もちろん、一切の殺生をやめようなどと、特定の思想を植え付けるつもりは毛頭ありません。僕もゴキブリは嫌いだから、最低限の害虫駆除商品は使っているし、出没しようものなら丸めた新聞を持って退治に乗り出すわけですけどね。

 この不快害虫をターゲットにした害虫駆除商品は、キンチョーのおもしろCM路線以外、消費者を怖がらせて売る手法をとっています。実際、過去に、害虫駆除商品を販売している企業の広告の仕事で、「もっとゴキブリの不快さを表現しろ」とハッパをかけられたことがありました。それも一度や二度ではありません。例えば飲食店向けの広告であれば「ゴキブリ一匹で客が逃げるぞ」という、半ば脅しのような言い方にせざるをえなくなるわけですね。

 こういう広告に関する議論は、イエスでもノーでもなく、要は程度問題だと思うわけです。このくらいまでなら許容できるけれど、これ以上はやりすぎだ、といった、極めてファジーな判断をしなくてはいけない。判断できるのは、他ならぬ広告主自身です。そして、これら広告主の判断力そのものがマヒしているんではないかと僕は言いたいわけですね。

 とくに、ここ数年はCG(コンピュータ・グラフィック)技術の進化も相まって、ゴキブリやダニ、アリがリアルに描かれ、必要以上に憎たらしさを増幅させています。この生々しい映像が食事時、就寝前を問わず、突然ブラウン管を通じてお茶の間に見せつけられるのですから、溜まりません。せめて、時間帯を制限する必要があるでしょう。

 殺虫剤以外では、元ボクサーの男優が出演しているコマーシャルも、いただけません。浴槽の中に入っているのは透明なお湯ではなく、実は汚染された茶色のお湯かもしれないよ……ご丁寧に、BGMはエクソシストのテーマ音楽風です。これなど、明らかに「やりすぎ」と思いませんか。

 かつて、栄養剤のコマーシャルで、桃井かおりがぼそっと呟いた言葉(近ごろバカが多い、とかいうセリフでしたっけ)が問題になり、数日で放映中止になった例がありました。これは過敏すぎると思いますが、怖がらせて売ろうとするコマーシャルについて、広告主は鈍感すぎます。世の中には、怖さに対して制御がきかなくなる精神症状をもつ消費者もいるってこと、知らないんでしょうか。

 そういえば、「怖がらせて、モノを売りつける」って、誰かさんたちが好んで使っている手法でもありましたね。

関連リンク● 「日本広告審査機構(JARO)」 (殺虫剤CMに関する記述はありませんが)

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