オンフィールド音楽研究所 |
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2011,09,01 066●7〜8月のヘビーローテーション 今回は、洋楽ロック9作品と、猛烈プッシュJ-Rock1作品の計10作品。
話題のシンガーの日本デビュー盤で、正確に言うと2ndアルバムである。海外で2008年に発売された1stアルバムが業界筋を中心に大評判となり、鳴り物入りでの日本登場である。当初PVを観た限りは、どうにも掴み所のない印象があったのだけど、アルバム全体を通して聴いてみると、独自の世界観にすっかり魅了されてしまって、何度も繰り返し聞きたくなる病みつきの作品になった。 ファルセット風味のボーカルと美しく叙情的なメロディ、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンを思い起こさせる豊穣なサウンドが魅力で、歌詞の内容はまだ把握できないものの、絶望と孤独と悲しみの向こうに見える、ほの暖かい希望を映し出したような作品だ。1stアルバムは寂寥感が前面に出たフォーク路線だったらしいが、少なくとも今作はホーンセクションが効果的なスパイスとなっていて、バックの音にとても深みがあってゴージャスだ。2011年度アルバムベスト10候補。 ところで、期間限定だと思うが、今年8月2日にワシントンDCで行われたコンサート音源84分間が、下記のwebページで試聴できる。少なくとも9月1日時点では無料ダウンロードが可能。 UKギターロック復権の狼煙を上げた、やんちゃな4ピースバンドのデビュー盤。何のてらいもなく、いきなりスイートスポットを突いてくる親しみやすい楽曲揃いで、すべての楽曲がシングルになりそうな、一緒にシンガロングできそうなポップさである。オアシスが解散(というか、たぶん一時的な活動中止)となったスキマの時期に、その穴を埋めるように彗星の如くシーンに現れたのは、彼らがもともと持ち合わせていた幸運というべきか。 下記のPVは、彼らがViva Brotherに改名する直前のBrother時代に作られたもので、冒頭にBrotherとクレジットされているのは貴重かも。2011年度アルバムベスト10候補。 彼らが登場したサマソニ大阪2日目のレポートもどうぞ。 スウェーデンのエレクトロポップ系女性シンガー、リッキー・リーが、口笛ソングで一発屋となったピーター・ビヨーン&ジョンのビヨーンのプロデュースで作り上げた2ndアルバム。未開の地に住む少数民族の藁葺き家屋に、ある日エレクトロを奏でる得体の知れない宇宙人がやってきて、一緒にコラボしてみました、みたいな、原始的な部分と急進的な部分が渾然一体となったクセのある不思議系サウンド。とてもエッジの効いた存在でありながら、実は甘いメロディラインもあったりして、底知れぬところを垣間見せてくれる。1stアルバムも聴いてみたが、圧倒的にこっちの方が出来が良い。思わずハマってしまう作品。 ●ザ・ヴァクシーンズ『ワット・ディジュー・エクスペクト・フロム・ザ・ヴァクシーンズ?』 ビバ・ブラザーなどと共に、UKロックの新勢力として頭角を現した新人バンドのデビュー盤。シューゲーズな響きをちょっぴり効かせつつ、サーフロックのような爽やかポップで、はっきり言ってしまえば古くささ満開である。子供の時に親しんだ味を結局は求めてしまうという、お袋の味的な魅力があって、「あ、やっぱり、この音、好き」みたいな、万人の琴線を刺激するツボを心得た作品。 彼らが登場したフジロック1日目のレポートもどうぞ。 伊藤政則さんがプッシュしていた、スウェーデンのメタルバンド、Amarantheのデビュー盤。6人バンドでボーカル3人(男女ノーマル声と、男スクリーモ声)という風変わりな編成で、メロディを効かせたメタルサウンドが魅力だ。原宿アストロホールという小さなハコで行われた初来日公演を観てきたが、約1時間のライブで、女性リードボーカルのエリゼは3度のお色直しをしつつ、日本盤ボートラを含めた全曲を披露してくれた。アルバムは、メロディック・メタル特有の高揚感が十分に味わえる作品で、強いて言えば、あと必要なのはオーラを携えた恍惚力だろうか。 ●ケイジ・ジ・エレファント『サンキュー、ハッピー・バースデイ』 UKシーンに話題が向きつつある中で登場してきた、US期待のオルタナロックバンドのデビュー盤。アークティック・モンキーズのメロディラインや、レッチリのグルーブ、プロディジーの破壊力、さらにMGMTの不思議さもチラリ覗かせた、ちょっと形容の難しいバンドなんだけど、基本、ブルージーでノイジーな骨太ロックンロールです。ライブが良さそうだなあと思い、サマーソニックでも観ようと思えば観れたのに、見送ってしまったのを激しく後悔。どうやら、ライブが凄いらしい。 いやはや、お見それしました。PVを一回見ただけだったので、てっきり、バッタもんのB級お姉ちゃんアーティストだと思っていたら、これは本物ですね(たぶん)。いろいろ調べてみたら、最近流行の宅録女子の一人だそうで、音はとってもチープなんだけど、時には絵に描いたようなエレクトロ、時にはエスニック路線、時には摩訶不思議なザ・フレーミング・リップス風と、万華鏡みたいにキラキラと七変化しながら、すっかりグラッサーの迷宮世界に引き摺りこまれた。下記のリンクは、エスニック路線。 シールは、90年代のビデオクリップを垂れ流しで放映していたCATVで初めて知ったシンガーだった。アルバムを収集してみると、なるほど、デビュー初期のアルバムに、FMで耳にしていたエレクトロな楽曲が入っていて、ああ、この曲がシールだったんだ、などと合点がいった次第。 2010年代を迎えて、「旬を過ぎたシンガー」という印象もあって新作は半ばお義理で聴いていたのだけど、今回は予想外に良かった。ライナーノーツを後から読んでみたら、そうか、これはデヴィッド・フォスターがプロデュースを手がけた作品らしい。どうやら前作『ソウル』も彼のプロデュースだったらしく、これは退屈なカバーアルバムの印象が否めなかったが、今回はシールのオリジナル曲とデヴィッド・フォスターのプロデュースということで、見事に歯車がピッタリ合った感じがする。 これまでもライナーノーツを手がけてきた内本順一氏は「彼の最高傑作ではないか」と書いていたけれど、それは事実かもしれない。 渋谷陽一さんのお薦めで初めて知った、エレクトロなオルタナロックバンドの5thアルバム。アニマル・コレクティブをさらに前衛的にしたような実験的なバンドのようだが、この作品は比較的ポップで聞きやすい。女声ボーカルがオフラ・ハザ(イスラエルのクラブ系シンガー)を思わせる声色で、時折覗かせる中近東っぽい甘いメロディラインにもツボを刺激された。 昨今の日本のオルタナロックシーンにおける、金字塔と言ってもいいほどの出来映え、完成度だ。満を持して、セルフタイトルを冠した意気込みが、十分に伝わってきた。2003年のメジャーデビュー以降、彼らの主要アルバムはおおむねチェックしてはいたが、グサリグサリと刺さってきたのは、今回が初めてだった。 メンバー各々の、良い意味での高め合いが、細部にわたる音の厚みを生み出していて、妥協のない作り込みができているように思う。その結果、アルバムの全体像が見えてきたときに、「セルフタイトルにしよう=俺たちの代表作として自信をもって送りだそう」、ということになったんだろうなあと、想像する。 wikipediaによれば、この新作で、連続アルバムtop10入りを逃したらしいが、そんなことは気にするなと言いたい。10年後、20年後に残るのは、この名盤だと思う。http://www.youtube.com/watch?v=343nMFP84u4 -posted by 所長@18:56 |
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