オンフィールド音楽研究所 |
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2010,10,03 058●8〜9月のヘビーローテーション フジロック帰りの脱力感に加えて、「2000年代ベスト100選」を作るための旧作の聴き込みなどで、新作チェックはややサボり気味。今回のヘビロテ紹介は以下の6作品。
テーマはSuburb=郊外である。チェーン店ばかりが軒を連ね、巨大な量販店が地域の色彩を消し去り、ただのベッドタウンと化した空虚な地域、それに対する辛辣なメッセージが込められた作品である。それはかつて、社会学者の宮台真司さんが空洞化した地域として言及した切り口と近しいわけでもあるけれど、こういうテーマをアルバム全編を通じて、コンセプチュアルな作り込みができるロックバンドが、果たして他にいるだろうか。どうやら日本のみならず、先進諸国ではおおむね同様の「空虚な郊外の増殖」が見られるらしく、極めて現代的で普遍的なテーマでもあるのだろう。 そんな屁理屈を知らずして、英語歌詞を一切理解しないで音楽だけに身を委ねても、実に心地よい作品である。多彩な音源を使ったごちゃ混ぜ感は少しトーンダウンした感じがあるけれど、相変わらずのメランコリックかつ情熱的なメロディと、男声・女声ボーカルの組み合わせなど、巧妙に組み立てられた作品だ。とくに4曲目の「ロココ」から5曲目の「エンプティ・ルーム」へ続くあたりは、まず最初の昇天ポイント。うーん、ライブが観たい! 痛烈に観たい! もし来年のフジロックに出演が決まったら、たぶん、来年も万難を排して行くことになるだろう。 何かとコアな印象があるメタルである。メロディを排したデスメタルは個人的に苦手だが、こういうポップで疾走感のあるメタルは大好物。ファンの間では、メタル感が薄まったとガッカリの声が多いようだけど、ロックファンに幅広くアピールするには、このくらいが頃合いがいいのでは。メタル入門編としても好適かも。 カナダの男女エレクトロバンド。下記にリンクしたリードトラックは、ずいぶん爽やかな風味だが、リードボーカルのお姉ちゃんの顔を見ても分かるように、基本的にはネジがぶっ飛んだサイケ風味。その、退廃的で破滅的なサウンドに一度は眉をしかめてしまうのだが、聞き込むうちに魅せられてしまう。1stアルバム『クリスタル・キャッスルズ』に続く2ndアルバム(2枚ともセルフタイトル!)にして、メジャー第一弾の作品なんだけど、1stと全然方向性がぶれていないのは芯が強い証拠。近々の来日公演(2011年1月)は興味津々だが、さて、どうするか。 俳優のジャレッド・レトが結成した、スペクタクルなロックバンドの3作目。ミューズを思わせる大仰な構成と、キャッチーで一緒にシンガロングできそうなメロディは、とてもライブ映えしそうな感じ。夜間のフジロック、グリーンステージで一度観てみたいものだ。前作『ビューティフル・ライ』よりも、やや楽曲が弱いという印象は否めないが、相変わらず、壮大な世界観を楽しませてくれる。割と日本人受けしそうなバンドなんだけど、まだ人気が爆発しそうな気配がないのは残念。映画俳優だからなのか、PVの大作志向は、相変わらずだ。 ●ストーン・テンプル・パイロッツ『ストーン・テンプル・パイロッツ』 今さらストーン・テンプル・パイロッツである。90年代初頭〜半ばのグランジ・ムーブメントのなかで存在感を示したバンドの一つ……だと知ったのは、ほんの数ヶ月前。9年ぶりに発表された新作アルバムのリードトラックPV(下記にリンク)を観て、一発でKOされた。 90年代だねえ。グランジっぽいねえ。古くさいけど格好良いロックンロールだなあ。 ありがちな、今どきエレクトロなガールズ・ポップ……と斜に構えて聴き始めたが、これがどうしてどうして、なかなかの良作で病みつきになるアルバムだった。派手さではレディ・ガガの足下に及ばず、ソングライティングではケイティ・ペリーなどライバルも群雄割拠するという微妙な立ち位置だが、いずれエレクトロなテイストをはぎ取ったアルバムを作れば、おのずとシンガーソングライターとしての実力の程が証明されるに違いない。 -posted by 所長@23:31 |
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