オンフィールド音楽研究所

2008,3,1

040●オンフィールド音楽大賞2007(2)

所長前回に続きオンフィールド音楽大賞、今回は総合ベスト10と個別賞の発表だ。

秘書1号(以下、1号)●地域別のベスト5があったから、わざわざ総合ベスト10など作らなくても良さそうなものだが。

所長●それは、それなりの意味があってのことだ。では、さくっと発表に行くよ。

オンフィールド音楽大賞2007 アルバムベスト10
  アルバム名 アーティスト名
1 エコーズ、サイレンス、ペイシェンス・アンド・グレイス フー・ファイターズ
2 イヤー・ゼロ〜零原点・・・ ナイン・インチ・ネイルズ
3 ファイン ジョニ・ミッチェル
4 ザ・ハート・オブ・エヴリシング ウィズイン・テンプテーション
5 ハッツ・オフ・トゥ・ザ・バスカーズ ザ・ビュー
6 イン・レインボウズ レディオヘッド
7 ネヴァー・ターン・バック メイヴィス・ステイプルズ
8 バック・トゥ・ブラック エイミー・ワインハウス
9 マジック ブルース・スプリングスティーン
10 レヴェランス〜音楽よ、ありがとう! アンリ・サルヴァドール

1号●その意味とやらが、よく分からんが。

所長●上位ベスト3に注目してほしい。2007年度はいずれも全米のアルバムが独占している。UK勢の健闘が目立つ去年の2006年度ベスト5と比べると、違いがクッキリ。 2007年度は全米産の洋楽が底力を発揮した1年だった、ということだね。自分でも、ランキングを作ってから気がついたことだが。

1号●なるほど。しかしセールス的にはフラテリス、アークティック・モンキーズ、MIKAあたりの、UK勢の健闘が光った年ではあったようだが。

所長●確かに。以前から、UKロックの良さを繰り返し訴えてきた僕としては、ようやくUKにも関心が向いてきたことを素直に喜んでいるし、例えばUKの新人勢だけがショーケースライブで続々来日するなんて隔世の感はあったが、やっぱりミュージシャンの厚みは全米勢が1枚も2枚も上手だということを改めて知らされた感じがするよ。

1号●そう言われてみれば、日本で売れたUKロックは若手ばかりだ。一方、今回のベスト3は全米のベテラン揃いで。

所長●うむ。UKでも、中堅やベテラン勢が奮起してくれると嬉しいな。レディオヘッドの孤軍奮闘だけでは寂しい。

1号●なるほど。

所長●ついでと言ってはナンだが、今年はシングルベスト5も選出。

オンフィールド音楽大賞2007 シングルベスト5
  楽曲名 アーティスト名
1 リハブ エイミー・ワインハウス
2 プリテンダー フー・ファイターズ
3 アース・イントゥルーダーズ ビョーク
4 ラスト・ファイト ヴェルヴェット・リヴォルヴァー
5 ワット・アイヴ・ダン リンキン・パーク

1号●それなりにFMなどでオンエアされた曲がずらり。

所長●そもそも、洋楽ではシングル盤というカテゴリー自体が死に体だから、優秀楽曲賞にした方がいいかもしれんね。「リハブ」が楽曲として秀でていた、とも言えないが、与えたインパクトの大きさという意味において、1位はこれしかあるまい。では次に、個別の賞を授与。 続々と発表していくぞ。

最強新人賞
エイミー・ワインハウス

1号●最優秀新人賞じゃなくて、最強新人賞か。

所長●「最強」という表現が合っているだろ。無事にリハビリができますように。そして麻薬とも断絶して来日公演が実現しますように。

最優秀新人賞
ザ・ビュー
その他優秀新人賞……ザ・ゴー! チーム、ザ・カラー、メイレイ、エンター・シカリ

1号●ザ・ビューはアルバムが5位に入っているから文句なしか。ザ・カラーメイレイは以前、紹介済みですな。その他は。

所長●ザ・ゴー! チームは日本人女性が2人メンバーに入っている、UKの元気のいいバンド。2007年発表のアルバム「プルーフ・オブ・ユース」はおもちゃ箱をひっくり返したような楽しい作品だった。次のアルバムでさらに引き出しの多さや深さを見せつけられるか、真価が試される。同じくUKのエンター・シカリはハードコア系なんだけど、キラキラサウンドが入った個性的な音を作っている。大衆を引きつけるカリスマ性があるので、今後が楽しみだ。

一発屋で賞
ピーター・ビヨーン・アンド・ジョン「ヤングフォーク」

1号●ああ、あの口笛ソング。J-WAVEの「TOKIO HOT 100」では、1位を記録したようだ。

所長●それをカバーしたJ-POPの「恋はビヨーン」は、一発ヒットにもならなかった。小柳トムとAimiのデュエット。

1号●小柳トムじゃなくて、ブラザートムでしょうに。

所長●しかし、どうしてピーター・ビヨルン・アンド・ジョンじゃなくて、ピーター・ビヨーン・アンド・ジョンにしたんだろう。同じくスウェーデン出身のABBAの前身、ビヨルン&ベニーのビヨルンと同じスペルなんだが。

1号●知らないね。でも、ビヨーンにしたから売れた、とも言える。

再発企画賞
ジュディ・シル「アサイラム・イヤーズ」

所長●貴重なジュディ・シルのオリジナルアルバム2枚に発掘音源を加えた再発売。よくぞ発売してくれた。

1号●正確に言うと、2006年12月末の発売だから、今回は対象外のはずなんですけど。

所長●それは知らなかったことにしよう。とにかく、何か誉めてあげたくて。

功労賞
アンリ・サルヴァドール

所長●今年2月に亡くなったから授与するんじゃないぞ。この賞も、去年の秋頃には決めていたのだ。享年90歳。88歳で吹き込んだアルバム「レヴェランス〜音楽よ、ありがとう!」が、あの出来映えなんだもの。幸せな生涯だったろうねえ。

プロモーションビデオ賞
バトルス「アトラス」
フー・ファイターズ「プリテンダー」

1号●これは実物を教えてあげたいところ。 まず、バトルスの「アトラス」。


http://jp.youtube.com/watch?v=IpGp-22t0lU

所長●実に面白い。痛快なPVだ。

1号●サウンドは比較的難解で抽象的な、大衆受けしにくい感じだと思うんだけど、PVを見入っているウチになじんでしまう部分がある。

所長●そうだね。アルバムは一部を除いて退屈だったが、この曲は何度でも聴ける。それはいいとして、このPVにそっくりのPVが、某J-POPの曲で使われていた。

1号●誰の曲?

所長●それは言わないでおこう。というか、アーティスト名は忘れてしまった。バトルスのアルバムは、人気に火がつくまで半年くらいかかっていたのだが、まだ人気が出る前にCSのJ-POP音楽番組で偶然見かけた。あまりに酷いパクリで、唖然としたよ。隣国の「そっくりディズニー」を嘲笑する資格はないと思うね。

1号●では次に、フー・ファイターズの「プリテンダー」。こちらは埋め込みが拒絶されているから、オフィシャルリンクのみ。
http://jp.youtube.com/watch?v=DKhnmUdmz74

所長●格好良い。格好良すぎるぞ! 楽曲の緩急とスピード感が映像と見事にマッチしていて、相乗効果を生み出している。これがPVの王道だろう。映画の世界では邦画も頑張っていると思うのだが、PVに関して日本は明らかな後進国じゃないかと、最近つくづく思う。

1号●洋楽とはマーケットの大きさが違うから、予算も桁違いだとは思うが。

所長●それはあるだろうけど、J-POPのPVは映像のアイデアが貧困だと思うよ。とくに恋愛を題材にしたPVは、ディレクターの趣味が古すぎる。もっとも、オーダーを出す側のオジサンたちの趣味、かもしれんが……。

1号●ずいぶん辛口だねえ。

所長●まあ、たまには、こういうことも言ってみたくて。

1号●ということで、いよいよ発表終了ですか。

所長●大賞の発表は以上だ。次回は2008年期待の新人を列挙してみたい。ちまたではアデル(Adele)というUKの19歳女性シンガーに注目が集まっているが、それ以外にも、いろいろいる。

1号●ふうん。

所長●名前だけ予告しておくと、昨年の秋から目をつけていて、ようやく近々日本盤が発売になるブラッド・レッド・シューズ、そして1月にデビュー盤が発売されたばかりのシルヴァーサン・ピックアップス、07年にアルバムを発売済みのアンティル・ジューンなど。

1号●先に“ネタバレ”しましたな。

所長●次回更新のメドが見えないから、先に言っておかないとね。

1号●ツバだけつけておこうって、魂胆だな。

-posted by 所長@00:28AM

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

ひな祭りの日に追伸だ。文中で間違いがあった。その他優秀新人賞に挙げたザ・ゴー! チームは2007年デビューではなく、2005年のデビューと判明。アルバム「プルーフ・オブ・ユース」は2ndアルバムだった。

1号●あらら。

所長●1stアルバムでは日本盤のアーティスト名の表記に「ザ」がなかったようだ。2005年デビューと判明した以上、その他優秀新人賞は剥奪させてもらう。

1号●まあ、本人たちは、痛くも痒くもないだろうが。……しかし、紛らわしいよね。最近のアーティスト名って。日本盤でも英語表記だったりするから。

所長●まったく、なだぎ武の心境だ。ややこしやー。

-posted by 所長@08/3/3 16:18PM


<<-039●オンフィールド音楽大賞2007(1)
->>041●アーケイド・ファイア


70年代洋楽アーティスト・リンク集 ※情報収集に便利!
音楽(オトラク)生活 ※当コーナーの前身
隠れ名盤 世界遺産