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036(02/08/24)
『北の国から』フィナーレへ。

 さて。1981年10月から放映開始されたテレビドラマ『北の国から』が、いよいよ9月6、7日放映の『北の国から2002遺言』で最終フィナーレを迎える。家族という制度が崩壊の兆しを見せ始めた1980年という年から撮影が始まった、この作品が語りかけるメッセージはずしんと心に響く。

 連続ドラマ時代、その後のスペシャル版時代と、すべての回をリアルタイムで見てきたが、このドラマには毎回泣かされてしまう。僕などは、このドラマが始まると「パブロフの犬」状態で、テーマソングが流れ、富良野の風景がブラウン管に映っただけで、もう涙腺が緩んでしまうのだ。このテの感動巨編は苦手だとか、泣かせのテクニックがあざといと言う人は多いし、その意味もわからないではない。だが、そんな理性のブレーキを簡単に解除してしまうだけの力量を持った作品であることに、異論はなかろう。

 最終フィナーレを前に、これまでの総集編が2回にわたって放映されることになっていて、昨日その前編が流れたわけだが、すべて見慣れたシーンなのに、涙腺は開きっぱなし。日常には、おおっぴらに泣けるシチュエーションがないだけに、何だかサウナで汗を流しきったような爽快感すらある。

 『北の国から』は、最後に残った良心的なドラマだという気がする。テレビ版は終演しても、今後はラジオドラマなどで継続する可能性もあるという。倉本聡さんが生きている限り、何らかのかたちでこの作品は続けてほしいものだ。

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037(02/08/24)
『オースチン・パワーズ ゴールドメンバー』を観た

 さて。たまには映画のお話。あさま山荘事件に至る連合赤軍メンバーたちの心の軌跡を描いた『光の雨』(監督/高橋伴明)を観たのは1月。強烈なインパクトを見せつけてくれた傑作で、僕の「映画鑑賞メモ」では年間ベスト10入りレベルの4つ★をつけた(満点は5つ★)。それ以来、またまた映画館から遠ざかってしまっていたが、今月は立て続けに4本を観た。ちょいと寸評を。

 まず、『プレッジ』(監督/ショーン・ペン)。公開中の感動系作品『アイ・アム・サム』で知的障害のパパを演じているショーン・ペンの監督作品。ジャック・ニコルソン扮する老刑事が、引退パーティ当日に起こった殺人事件捜査への未練絶ちがたく、引退後も、犯人が生息していると思われる地域でガソリンスタンドを営みながら捜査に執着を燃やすというストーリー。きちんと楽しめる佳作ではあったが、ジャック・ニコルソンのための映画という感じは否めない。3つ★。

 次に、秘かに期待を抱いてみた『チェルシーホテル』(監督/イーサン・ホーク)。名作『ガタカ』に出演していたイーサン・ホークの監督デビュー作品。ニューヨークに佇む古びたホテルに巣くうはみだし人間たちのエピソードを、アーティスティックな映像で点描した映画。映像のつくりそのものは面白かったが、退屈といえば退屈な映画。最後のクレジットでヨーコ・オノの名を見つけたが、どんな協力をしたのだろう。老体のジャズ歌手、ジミー・スコットの歌声はみっけもの。2つ★+おまけ☆。

 久々にシネマ下北沢に行きたくなって、『チキン・ハート』(監督/清水浩)を観た。同監督による『生きない』に次ぐ脱力系のドラマ。現代社会に居場所のない異世代の男3人の人生のもがきを描いた作品。忌野清志郎が怪演、池内博之は好演、松尾スズキの外しっぱなしのギャグは目障りだった。この作品については、間もなく更新する「今月のコラム」でもネタにしたい。2つ★+おまけ☆。

 そしてシリーズ3作目となる『オースチン・パワーズ ゴールドメンバー』(監督/ジェイ・ローチ)。ハッキリ言って失敗作。甘く評価しても2つ★。シリーズを重ねるごとに豪華になり、それと共に面白さに急ブレーキがかかる格好の事例だ。大いにガッカリさせてもらった。レンタルビデオ屋さんで第一作『オースチンパワーズ』を借りて見ることをオススメしたい。

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038(02/08/28)
豆腐に異物が

 さて。近所のスーパーで購入した豆腐に、黒く平べったい10mmほどの異物が入っていた。せっかく、お豆腐のおみそ汁を作ろうとしたのに……。

 ボクの中で、天使さんと悪魔さんが会話をし始めた。天使さんは「人間はみな過ちを犯すのだから、そのくらい、放っておけばいいじゃない」と言う。悪魔さんは「即、クレームだ。交換して貰うと同時に、何かお詫びの品くらい貰えばいい」と囁く。天使さんと悪魔さんの折り合いがつかず、取材で出ずっぱりだったこともあって、2日間ほど放置していた。

 そして、天使さんと悪魔さんの話し合いがついた。結局、間をとって、穏やかにクレームを伝えることにした。誤りがあれば、きちんと冷静に指摘するのが消費者の務めだ、という気持ちがある。ライター根性で、何でも経験しておきたいという気持ちも正直言ってあった。さて、こういう場合に食品メーカーはどんな対応をするのか見届けたい、と。

 さて。この食品メーカーの対応は素早く、電話を入れたその日の夕刻に、営業担当の方がやってきた。ドアを開けると、早速菓子折を差し出す。「新品に交換してもらえればそれでいいので」と押し問答をしたが、ウチの気持ちだと言って無理矢理置いていく。

 件の豆腐を見せると、異物が何なのか不思議そうにしていたが、異物の正体を調べるために大切に持ち帰るわけでもなく、適当に指でこねまわし、ボロボロになったものをそのまま地面に捨てて、お茶を濁した。たぶん、大体の察しはついたのだろうと思う。担当者は、新品の豆腐を2個手渡すと、緊張した面もちで再び丁重に謝り、そそくさと帰っていった。

 何だか、とても複雑な気持ちになった。天使さんと悪魔さんの真ん中の態度をとろうとしたのに、結果的には悪魔さんの期待通りである。メーカーの対応に不備はないが、これでいいのだろうか。こうした経験に味をしめて、難くせをつけようとするクレーマーが生まれても不思議はない。ちょうどいい頃合いのクレーム対応を考えないと、メーカー自身が自分のクビを締めることになる。

 そういえば、7月にWOWOWで放映されていたシティボーイズの舞台「パパ・センプリチータ」 で、中村有志がエキセントリックなクレーマーの「油男」を演じていて秀逸だった。しばらくは、笑いの対象とすることでクレーマーが生まれにくいムードを作るしかないのかもしれない。

 これからも僕は、今まで通り、いつものスーパーで同社の豆腐を買うだろう。安い割には、中身がしっかりしていて美味しいからだ。どうか、品質管理にいっそうの努力をしていただきたいと思う。

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039(02/09/05)
オレペコ、やるねえ。

 さて。ただいまブレイク中のJ-POPバンド、オレンジ・ペコー(略してオレペコ)の「ミルキーウェイ」ツアー最終日、SHIBUYA-AXでのライブ(9月2日)を観に行った。何やらギョーカイ人風の輩が目立つ。

 オレンジ・ペコー自体はボーカルの「ともじ(女性)」とギターの「一馬」の2人組だが、ステージに上がったのは全員で10人。ホーンセクション3人、パーカッション、ドラム、ウッドベース、キーボード、コーラス1人の8人がバックについた。この8人はなかなかの実力者と見え、一人ひとりのパフォーマンスが実に高い。「ともじ」のボーカルも、CDで聞くよりもずっと懐が深く、往年の朱里エイコ(古い!)を思わせる巧さ。

 まだメジャーデビュー間もなく、フルアルバムを1枚発表したばかりだが、持ち歌だけで2時間、目一杯の演奏を披露してくれた。予想を上回る大満足だ。オールスタンディングのライブハウスでの公演とあって、入場者数はせいぜい1000人程度だろうが、彼らにとって記念碑的なステージになったのではないだろうか。

 オレンジ・ペコーは、しばしば、エゴ・ラッピンと比較される。同じように大阪出身の男女2人組であり、ともにジャズテイストを醸し出す。ただ、エゴが退廃的なムードを漂わせる「陰」なら、オレペコはボサノバ系の「陽」で、今後大衆的な人気を獲得できるのはオレペコかもしれない。

 上り調子の若手ミュージシャンが、会場の反応一つひとつに感激しながら、ノリノリで演奏を披露してくれる様は、観ていて実に気持ちいい。くれぐれも、テレビで消費されるアーティストにはなりませんように。

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040(02/09/06)
エブリバディ・フェイマス!

 さて。忙しいくせに、日比谷で映画『エブリバディ・フェイマス!』(監督/ドミニク・デリュデレ)を観てきた。娘に歌手の才能があると信じる、うだつの上がらないオヤジが、娘に煙たがられながらも一世一代の乱暴な賭けを打ってデビューを勝ち取るという、ホームドラマだ。ベルギー映画。2001年度アカデミー賞外国語映画部門ノミネート作品。

 オヤジの賭けは、人気ナンバーワンの歌手を誘拐し、自作の歌で娘を無理矢理デビューさせようというもの。ストーリーそのものはかなり破天荒で、「そんなこと、あるわけないやろ!」と突っ込みを入れたくなる部分が、あっちこっちそっちにあるのだが、この映画は年頃の一人娘をもつ中年オヤジのおとぎ話。細かいことは言うまい。(僕に娘はいませんが)

 評価は、おそらく真っ二つに分かれる。ワクワク・ドキドキやスリル、サスペンス、パノラマ感、エロス、繊細な心のひだを求める映画ファンには、酷評されるタイプの映画だ。僕はガラにもなく、このテの「悪者が一人も出てこない」気楽なハートウォーミングものも大好き。そこそこ満足で、3つ★+おまけ☆をあげたい。

 見終わった後に、プロデビューを果たした娘の大ヒット曲「ラッキー・マヌエ〜ロ」が耳に残る。いや、耳にこびりつく、と言ったほうが正解かも。

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