オンフィールド音楽研究所

2010,03,05

054●オンフィールド音楽大賞2009

2009年発表のアルバムの中から、個人的なベストアルバム10を選んでみた。昨年も素晴らしい作品と出会うことができて、感謝、感謝。さっそく一覧表で。

オンフィールド音楽大賞2009アルバムベスト10
 
アーティスト名アルバム名
1 ミューズ『レジスタンス』
2 アニマル・コレクティヴ『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』
3 ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ『ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ』
4 ガールズ『アルバム』
5 フローレンス・アンド・ザ・マシーン『ラングス』
6 アソビ・セクス『ハッシュ』
7 ザ・エックス・エックス『エックス・エックス』
8 レンカ『レンカ』
9 ロイヤル・ブリス『ライフ・イン・ビトウィーン』
10 ザ・ケミスツ『ジョイン・ザ・Q』

ミューズ『レジスタンス』はいち早く入手した当時はリードトラックばかりが浮いて聴こえて評価は芳しくなかったのだが、聴き込むうちにどんどん良くなった。来日公演が楽しめたということで贔屓目は多分にあるのだが、ミューズは少なくとも現在、キャリアのなかでピークにあるように思う。ここで評価しておかねば、という気持ちもあった。

アニマル・コレクティヴ『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』は、思い切って1位にしちゃおうか、などとも思えた個性的な作品だ。日常的にはiPodのヘッドフォンや、仕事部屋のミニコンポで音楽を聴いているのだが、周囲の迷惑を考えるとあまり大音量で聴くことができない。でも、さる場所で大音量でこのアルバムを聴いてみたら、見事に異世界へ連れて行かれた。70年代にピンクフロイドの「狂気」に驚かされ、10年前にビョークで驚かされた時と同様の衝撃を感じた作品で、文句なしのベスト10入りだ。

ゼム・クルックド・ヴァルチャーズのセルフタイトルアルバムは、最近聴き始めたばかりだったが、噂に違わぬスーパーバンドだと実感。周到なプロモーションもせず、PVを作るわけでもなく、「売れるか売れないかは、知ったこっちゃない。ただ俺たちは、こんな音を出したかったんだ」という衝動のようなものがビンビン伝わってくる希有な作品だった。

フー・ファイターズに一区切りつけて、ニルヴァーナ時代のようにドラムに専念したデイブ・グロールの太鼓がすさまじい。こんなに、ドラムのエネルギーが前面に押し出された作品は少なかろう。そこに、ツェッペリン再結成ツアーが叶わなくて欲求不満だったろうジョン・ポール・ジョーンズが加わり、とんでもない化学反応が起こった。「ロッキッシュなアルバム」という点では、2009年の最大の収穫となった作品ともいえるだろう。

ガールズ『アルバム』については、以前さんざん書いたので多くは言及しないが、今年聴いた中で、まったく期待せずに聴き始めた分、良い意味で最も裏切られた作品だった。こういう新人が突如として出てくることに驚かされる。ただ、セカンド以降は同じ路線だと少々難しいだろうな、という予感もある。

フローレンス・アンド・ザ・マシーン『ラングス』は、類似のものが見あたらないサウンドとメロディの個性に拍手。来日公演が観られなかった(直前キャンセル)のは残念だった。どれだけ新しい引き出しを見せてくれるのか、それ次第で、どんどん大物になっていく可能性があるように思う。

アソビ・セクス『ハッシュ』は、おそらく、どの音楽誌もベスト10には選ばない作品だろうけど、可愛い女性ボーカルと、ノイジーなギターのアンバランスな感じが、個人的には大好きだ。日本人女性と米国人男性の2人組みで、日本語歌詞も少々あって、不思議な世界観を醸し出している。かなりJ-POPっぽいのに、日本でさほど話題にならないのが、少々不思議だ。夏フェスで来ないかな。

ベスト10選定の、最後の最後に飛び込んできたのが、ザ・エックス・エックスの『エックス・エックス』。改めてヘビロテアルバム紹介で取り上げようと思うが、暗闇の中の一筋の光が、どれだけ心に安堵を広げるのか、みたいなことを、つくづく感じさせられた、思わず武者震いを覚えた作品。凄い若者バンドが出てきたものだ。

レンカ『レンカ』もアソビ・セクス『ハッシュ』と同様、音楽評論家なら恥ずかしくて誰も選べない作品。でも、とってもキュートなポップスがぎゅっと押し詰まった佳作だ。10年後には「隠れ名盤 世界遺産」に入りそうな、ある意味B級作品かもしれないが、リリー・アレンのメロディセンスが好きな人なら、買って損はない。

ロイヤル・ブリス『ライフ・イン・ビトウィーン』は伊藤政則さんの守備範囲に入る、メロディアスなハードロック。昨年度のベスト10選出で聴き込み不足からシャインダウンの『ザ・サウンド・オブ・マッドネス』を漏らしてしまった穴埋めの意味もある。こういう泣きの入ったアメリカン・ハードロックが、今は日本でウケが悪い。どうしてなんだろう。

ザ・ケミスツ『ジョイン・ザ・Q』はプロディジー路線の新人ユニットなのだけど、本家の新作を凌駕する出来映えだった。このアルバムを聴くたびに突き上げるような高揚感に襲われる、不思議なエネルギーをもった作品だ。

このほか、ベスト10の候補に最後までとどまっていたのは、ダヴズ『錆びついた王国』、マストドン『クラック・ザ・スカイ』、アイシス『ウェイヴァリング・レイディアント』、ウィルコ『ウィルコ(ジ・アルバム)』、フリート・フォクシーズ『フリート・フォクシーズ+サン・ジャイアントEP』、Alela Diane『To Be Still』(輸入盤のみ)、パラモア『ブラン・ニュー・アイズ』、リリー・アレン『イッツ・ノット・ミー、イッツ・ユー』、フレーミング・リップス『エンブリオニック』、ホワイト・ライズ『トゥ・ルーズ・マイ・ライフ』といったところ。いずれも楽しかった。

そして、最後にベストPVはデペッシュ・モードの新作アルバム『サウンズ・オブ・ユニバース』から、リードトラックの「Wrong」をYou Tubeでどうぞ。こりゃあ、凄いや。もはや短編映画だ。

-posted by 所長@13:28


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