オンフィールド音楽研究所

2010,02,21

053●1月のヘビーローテーション

少し遅れてしまったが、2010年1月に楽しんだヘビロテアルバムを紹介したい。日々、新作アルバムを中心に楽しんでいるつもりだったが、今回はたまたま5年ほど前の作品が半分以上になった。こういう月もあるのだろう。

2010年1月のヘビーローテーション
アーティスト名『アルバム名』
キングス・オブ・コンビニエンス『ライオット・オン・アン・エンプティー・ストリート』
スフィアン・スティーヴンス『イリノイ』
ジョシュア・ジェイムス『ザ・サン・イズ・オールウェイズ・ブライター』
ジュリアン・カサブランカス『フレイゼズ・フォア・ザ・ヤング』
ジャガ・ジャジスト『ホワット・ウィ・マスト』
クレア&リーズンズ『ザ・ムーヴィー』
カメラ・オプスキューラ『素直になれない、あなたと私』

キングス・オブ・コンビニエンスというアーティスト名を知ったのは2005年、とあるカバーアルバムにメンバーの1人が参加していたのがキッカケだった。知る人ぞ知る70年代のソフトロックバンド、ブレッドの名曲がカバーされたアルバム「Friends and Lovers:Songs of Bread」である。古くからの友人であり、今では信頼できる仕事仲間でもあるY氏のお気に入りがブレッドというバンドで、「こんなのがアメリカで発売されているぞ」と貸してもらったのだった。

ブレッドは僕も大好きだったが、正直、このカバーアルバムは印象の薄い作品だった。おまけに参加しているミュージシャンは全員知らない人ばかり。一体、どんなミュージシャンなのか素性を調べているうちに、何故か心に残ったのがキングス・オブ・コンビニエンスだった。

キングス・オブ・コンビニエンスはノルウェーのフォークデュオで、件のカバーアルバムに参加していたのは、片割れのアーランド・オイエ。もうそんなことも忘れていた昨年秋、いつも観ているCS局のPV垂れ流し番組で、キングス・オブ・コンビニエンスの最新作からリードトラックのPVが流されていて、引き寄せられるように彼らの旧作から漁り始めたのだった。

そんななかで、新作『デラクレーション・オブ・ディペンデンス』も佳作だとは思ったが、とりわけ気に入ったのが2004年作の『ライオット・オン・アン・エンプティー・ストリート』だ 。息づかいまでが聞こえてくるナマ録風のアコースティックな臨場感のなかで、ボサノバタッチの優しいハーモニーが気持ちいいのなんの。例えばこんな曲そしてこんな曲。うーむ、美しい。心が洗われるようだ。北欧の、人影のない湖と澄んだ空気が思い浮かんでくる。おそらく10年後も20年後も、何度でも聞き直したくなる名盤になるだろう。とても幸福な出会いだった。

スフィアン・スティーヴンスの『イリノイ』 は、最近いろんな洋楽雑誌で「2000年代を代表するアルバム」特集があって、複数の媒体で高評価だったにもかかわらず、一度も聴いたことがなかったので、聴き始めた作品(2005年作)だ。なんでも、アメリカの全50州を題材にしたアルバムを作るという壮大なプロジェクトの第2弾らしい。異国の州ごとの歴史や文化的背景はなじみがなく、翻訳歌詞を読んでもピンと来ないのは確かなのだが、不思議と心に染み渡ってくる歌声だ。冒頭はこの曲。公式PVではなくファンの自作だろう。

ジョシュア・ジェイムスの『ザ・サン・イズ・オールウェイズ・ブライター』は、Amazonから薦められるままに聴いた作品だったように思う。たぶん、パオロ・ヌッティーニ繋がりで推薦メールが来たのだろう。パオロと同様に、しゃがれた質感のある声、パオロよりも純フォーク路線のシンガーソングライター、メロディラインも親しみやすい。日本では全くといっていいほどプロモーションされていないと思うので、知らない人も多かろう。僕も未だにプロフィールを知らないが、アルバムは何度も楽しめた。1曲目がライブ披露されている映像で、試聴していただきたい。

今回のヘビロテリストの中で、一番異質と思われるのはジュリアン・カサブランカスの『フレイゼズ・フォア・ザ・ヤング』だ。ジュリアン・カサブランカスは2000年代に彗星の如く現れたUKのロックンロールバンド、ザ・ストロークスのフロントマン。バンド活動では表現できなかった作品をソロとしてまとめたらしく、サウンドはストロークスとはうってかわって、エレクトロで極彩色のパワーポップ。ストイックな印象もあるストロークスとは似ても似つかない楽曲ばかりなので賛否は分かれているようだが、僕は「これも十分あり」と思っている。良い意味で、びっくりの作品だった。

ジャガ・ジャジストというバンドは、フジテレビ系のCS番組「(株)洋楽」で教えてもらったノルウェーのクラブジャズバンド。知る人ぞ知る70年代のジャズロックバンド、コロシアムをオシャレに仕立て上げたような、ごちゃ混ぜ具合が楽しい。新作はまだ入手できていないが、今回は2005年の作品『ホワット・ウィ・マスト』がヘビロテになった。こういうジャズ風味、気持ちいいなあ。1曲目のPVはこんな感じ。ライブ映像もYouTubeにいろいろ出ている。

クレア&リーズンズは、最新作『アロー』が雑誌「ミュージックマガジン」の1月号「ベストアルバム2009」特集でランクインしていたので、初めて知ったアーティスト。過去作を漁ってみたところ、この2007年作『ザ・ムーヴィー』を聴く機会を得た。ジャケットデザインが、スフィアン・スティーブンス『イリノイ』 と似た感じだなあと思っていたら、アルバムに彼が参加していたようだ。古き良きアメリカの郷愁が誘われるような、懐かしげなムードの作品で、アレンジも面白く、けっこうクセになってしまった。ちなみにクレアはジェフ・マルダーの娘だそうだ。ということは、マリア・マルダーの娘でもある、ということなのかしらん(確認できず)。それはともかく、1曲目のPVをどうぞ試聴あれ。

カメラ・オプスキューラも、何がキッカケで知ったのか覚えていないのだが、ともあれ、2004年作の『素直になれない、あなたと私』は夢心地になるキュートな作品だ。北欧系かと思ったら、グラスゴーのバンドらしい。70年代初期を思わせるような、アナログなサウンドは、とても心地良い。PVはこれが唯一だろうか。いちばんポップな楽曲は動かない画像(ジャケ写)で試聴してみてください。

ということで、1月にヘビーローテーションで聴いたアルバムの紹介は、ここまで。「これよく聴いたなあ」と思う作品をリストアップしたら、大半がユルユル系のアルバムになった。大きな仕事の山を超えた安堵感があったからなのか。

さて、次回はいよいよ「オンフィールド音楽大賞」を発表する予定。

-posted by 所長@16:41


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