オンフィールド音楽研究所 |
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2009,3,6 047●オンフィールド音楽大賞2008[ウラ版] 所長●今回は、いよいよウラ版のオンフィールド音楽大賞を発表。 秘書1号(以下、1号)●ウラ版の趣旨を、まずは説明するべし。 所長●前回の最後でもふれたが、日の目を見ない日陰者のアーティスト、誰も見向きもしないアルバムに焦点を当てる、というのが主な趣向。 1号●映画で言うところの、アカデミー賞に対するゴールデン・ラズベリー賞、ではなく。 所長●違う違う、それは最悪映画賞でしょうが。僕のウラ版・オンフィールド音楽大賞は、映画で言えば京都の京一会館で開かれていた「映画ファンのための映画祭」に近いかもね。 1号●相変わらず、ごく一部にしか分からないたとえだな。 所長●「映画ファンのための映画祭」は、映画評論家が選出するキネ旬のベスト10に対抗するような趣旨だったと記憶している。助演女優賞にピンク映画の日野繭子が選ばれたりしてね。僕の記憶が間違っていなかったら、同じ年の主演女優賞は「ねらわれた学園」の薬師丸ひろ子だったんじゃないかと思うけど。 1号●すごいね、アイドル路線だった新人女優がいきなり主演賞で、同じ舞台にピンク映画の女優さんも。 所長●地方の二番館の映画館が主催するお祭りなのに、松田優作さんとか、超有名な俳優陣や監督陣も参加していて、すごい熱気だった。僕はこのオールナイトイベントに2回駆けつけたけど、通路にもギッシリ体育座りの観客がいてね。それが夜通し続くんだから、今じゃ信じられないよ。 1号●反体制の残り香が漂う時代に、アンチ・キネ旬のイベント。時代を感じさせるね。 所長●ということで、ウラ版の名作アルバムを挙げるぞ。10枚はキツかったので、ベスト7まで発表だ。
1号●またユーライア・ヒープですかい。懲りないねえ。 所長●「ウエイク・ザ・スリーパー」ほど、ウラ版1位にふさわしい作品はないと思うよ。第一、HR/HM(ハードロック/ヘヴィーメタル)専門誌の「Burrn!」にすら新作レビューが載らなかったようだし、プロモーションには必須のツールとなっているプロモーションビデオすら作ってもらえなかった。いかに冷遇されていたかがよく分かる。それにもかかわらず、作品への評価は非常に高いと言っていい。 1号●本当かね。 所長●海外のクラシックロック専門サイトでは、2008年版最優秀アルバムのノミネート10作の1つに名を連ねていた。またHR/HM専門のレコード会社であるロードランナーの新人発掘係が、個人的に2008年度の5位に挙げている。証拠をリンクするぞ。 1号●ふうむ、このモンテ・コナーという人は、AC/DCやスリップノットの新作よりも上位と評価しているわけだ。 所長●次にアマゾンのユーザーレビューを紹介しよう。米国アマゾンではユーザーレビュー18人中14人が5つ星評価、残りはすべて4つ星評価だ。本国の英国アマゾンでもユーザーレビュー23人中16人が5つ星評価、6人が4つ星評価。客観的な評判が高いということが分かるだろう。 1号●ふーん。 所長●では、ユーライア・ヒープの1位を祝福する映像を。
1号●おいおい、ただの競馬レースじゃねえか。 所長●ユーライア・ヒープが1位に。見事な先行逃げ切りだ。 1号●もうヒープの話題はいいから、次に行きませんか。 所長●まあ、あとはオマケみたいなもんでね。ヒープを1位にしたかったから、ウラ版を設けたようなもので。 1号●何じゃそれ。 所長●勘弁してちょ。10年ぶりの新作なんだから、少しはスポットライトを浴びせてあげないと。 1号●選んだ責任上、2位以下についてもコメントしてほしいもんですな。 所長●2位のジョーン・アズ・ポリスウーマン「トゥ・サヴァイヴ」は当コーナーで以前紹介したので詳しいことは割愛するが、予想通りあまり日本では売れていないようだ。とはいえ、個人的には未だにヘビーローテーション状態で聴いている。とくに就寝前のほっこりタイムには最適。 1号●なるほど。 所長●3位のサントゴールド「サントゴールド」はオモテ版の評価に加えても良かったんだが、M.I.A.の二番煎じみたいな言われ方をしているのでウラ版で評価してあげたい。エレクトロなR&Bとして傑出した出来映えだったと思うんだが。 1号●M.I.A.は出産間近のお腹を抱えてグラミー賞に登場していたヒップホップ系のミュージシャンですな。 所長●そう。サントゴールドは全然ヒップホップじゃないのに、何故か同類にされるんだよな。代表曲の映像を紹介しておこう。ちょっぴり趣味の悪い映像ではあるが。
1号●パンキッシュでアクの強いエレクトロ系R&Bという点で一括りにされるのかもね。 所長●4位はブラッド・レッド・シューズ「ボックス・オブ・シークレッツ」。これも当コーナーで紹介したので、あまり言うことはないな。次の新作でガツンと評価されるかどうかが重要な分かれ目だ。ま、男女デュオだから2人の仲がどうなっているか次第だけど。 1号●男女2人組って、短命になりがちだからね。 所長●5位は当コーナーで取り上げようと思いつつ、時期を失ってしまったので、こちらで紹介したオペレーター・プリーズの「YES YES VINDICTIVE」だ。日本のアマゾンではユーザーレビュー1人が悪い評価をしているけれど、こんなものに惑わされてはいかん。ポップのセンスがいいと思うし、リードボーカル女性の存在感も捨てがたい。次作でどれだけ上積みができるか。それができなければ「ピンポン一発屋」と呼ばれる可能性もあるけれど。 1号●6位はスカーレット・ヨハンソンですか。あの女優さんだよね。 所長●うむ。これも日本のアマゾンでは散々な評判だ。人気俳優が音楽アルバムを出すと、映画ファンからも音楽ファンからも総スカンを食うことが多いけど、その典型だろうね。トム・ウエイツのカバー集という、いかにも地味な狙いの作品なのだが、ちょっぴりノイジーで渋みのある、夢見心地のエレクトロポップ作品に仕上がっている。スカーレット・ヨハンソンが好きな人とは趣味が合わなくて評価が低くなっている、だけだと思うよ。 1号●マーケティングの失敗だと。 所長●最初から、マーケティングしていないんじゃないの。やりたい音楽をやった、というだけでね。悪評にもめげず、2作目にも挑んでほしいな。参考までに、公式PVかどうか不明だけど、リンク。
1号●そして7位はロス・キャンペシノース!の「ホールド・オン・ナウ,ヤングスター...」。これは、ここで紹介してましたな。 所長●彼らは予測不可能な変化球バンドだね。最初から大衆受けをすかそうとしているところが面白い。ただ、このデビュー盤は良かったのだが、「スタジオに集まったら、できちゃったから」という理由で早々とリリースした2ndアルバムはいただけなかった。 1号●あらま、デビューそこそこに2ndアルバムなんて、洋楽方面ではかなり速いペースだよね。 所長●「できちゃったから出す」というのも、まあいいんだけど、ファンの間に一定の飢餓感が出てくるのを待った方が得策だよね。あんまり速いペースで発表されると、作品の価値が下がっちゃうし。同じことはナイン・インチ・ネイルズにも言えるんだけど。 1号●あー。5年に1枚のペースでオリジナルアルバムを発表してきたのに、この4年間で4作品を発表したもんな。 所長●うち1作品は3枚組だぜ。ちょっと、ついていけない気がするよ。 1号●なるほど、その点では10年ぶりの新作を発表したユーライア・ヒープに肩入れする気持ちも分からなくはない。 所長●これで最後のアルバムになるかもね。次の新作がさらに10年後だと、リーダーのミック・ボックスなんて70代になってるよ。まあ、この歳になって現役ハードロッカー、というのも面白いけれど。 1号●巷では再結成バンドばかりがもてはやされていて、ヒープのように愚直なまでに活動を続けているバンドは、かえって光が当たりにくいよね。どうせなら、人間国宝的にハードロックバンドを続けていくことが、ユーライア・ヒープの名を後生に残す唯一の手段かも。 所長●ハードロック界の笠智衆か。まあ、それもいいかもね。 -posted by 所長@04:20PM |
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