オンフィールド音楽研究所

2009,2,8

046●オンフィールド音楽大賞2008[オモテ版]

所長●今年もアウォードの季節がやってきた。

秘書1号(以下、1号)●明日9日は米国のグラミー賞。18日には英国のBritAwards(Brits)が授賞式を迎えるようだ。

所長●その二大音楽賞に先鞭をつけるべく、今年もオンフィールド音楽大賞を発表する時期となった。

1号●たまたま、この時期になっただけでしょうに。

所長●そうとも言える。昨年の発表よりも3週間近く早い。大いなる前進だね。

1号さんざん、このコーナーを放ったらかしにしてきたんだから、そのくらい善処しても褒められたもんじゃない。

所長では、前フリもそこそこに、まずは発表するぞ。

1号はいはい。

所長まずは、2008年度のアルバムベスト10の発表!

オンフィールド音楽大賞2008アルバムベスト10[オモテ版]
 
アーティスト名「アルバム名」
1 コールドプレイ「美しき生命」
2 シガーロス「残響」
3 Elbow「Seldom Seen Kid」
4 スティーヴ・ウィンウッド「ナイン・ライヴズ」
5 メタリカ「デス・マグネティック」
6 ミューズ「ハープ」
7 Deerhunter「Microcastle/Weird Era Continued」
8 フィーダー「サイレント・クライ」
9 ワンリパブリック「ドリーミング・アウト・ラウド」
10 アシャ「アシャ」

1号コールドプレイを1位に挙げるとは、あまりにも、普通すぎやしないか。昨年、世界中で最も売れたアルバムじゃないか。日本でも洋楽アルバムではトップセールスだった。

所長チッチッチ。そこが浅はかなところなんだよ。いいか、音楽評論家などは、一番売れたアルバムを1位にするなんて、恥ずかしくてできない可哀想な性分なんだよ。本当は一番好きだったとしてもね。

1号ううむ。

所長その点、僕は自由だから。ベタな評価でも気にしない。

1号まあ、確かに評判はいいようだ。

所長コールドプレイは以前から好きなバンドだったけど、この「美しき生命」は文句なしの最高傑作。以前のアルバムは5回も聞けば飽きてきたけど、今回のアルバムは何度聞いても味わいがある。プロデューサーとして参加したブライアン・イーノの存在感は薄いけど、いろんな珍しい楽器を使ったり、音の加工に工夫したり、組曲ふうにアルバムを構成したり、といったところに、イーノの影響がちょっぴり。その絶妙のさじ加減で、とても深みのあるアルバムに仕上がった。

1号語るねえ。

所長長年、洋楽を聴いていると、「あ、このアルバムで頂点を迎えたな」と感じるような作品と出逢えることがある。その時点できっちり評価してあげることが大切だと思うよ。近い将来、コールドプレイが解散したとしても、このアルバムがあれば後生に名が残るはず。

1号本当に残るかね。ロック評論家の渋谷陽一さんなんて、コールドプレイのことを完全無視しているけど。

所長そこが一抹の不安と言えば不安だ。まあ、こんなのロックじゃない、ポップスだ、という論理なんだろう。それはそれでいいけどね。ちょっと思い出すのは、カーペンターズの73年の名作「ナウ&ゼン」のことだ。このアルバムも当時バカ売れして、評価も高かったのだけど、30年以上の歳月を経て今はどうだ。

1号カーペンターズの名は残ったけれど、「ナウ&ゼン」が何度も再発されるような動きにはなっていない。テレビやラジオなどで特集されるロックの歴史の中では完全に無視されている。ポップス史には残っているけど、そもそもポップス史は幅が広すぎて、あまり取り上げられることもない。

所長そう。コールドプレイはカーペンターズに比べればロック度は高いと思うけど、20年後、どう評価されているのやら。有名な音楽評論家のなかに、コールドプレイの語り部になりそうな人物がいないからね。

1号明日のグラミー賞、何か獲得するかね。

所長順当に行けば年間最優秀レコード、年間最優秀アルバム、年間最優秀楽曲の3冠とも受賞しそうだけど、ノミネートに英国勢が大半を占めているのがどう出るか。ナショナリズムに端を発した投票行動が、カントリー歌手のアリソン・クラウスに集まって、ロバート・プラント&アリソン・クラウスの作品が受賞する可能性も案外あると思うよ。僕のベスト10には入れなかったけど、とてもいいアルバムだったことに異論はない。あとは、Ne-Yoもいーよ。

1号クリス・ペプラーさんみたいなダジャレはやめなさい。

所長新人賞はダフィーは無理だね。米国ではアデルの方が可能性がある。穴はジャズミン・サリバン。まさかの大穴はアイドルのジョナス・ブラザーズ。最優秀楽曲は、コールドプレイではなくジェイソン・ムラーズかもね。

1号まあ、それはそれとして。2位にはシガーロス「残響」。これも、あんたの根っからの趣味ですな。

所長これもコールドプレイと同様、「このアルバムで頂点を迎えたな」と感じさせる出来栄えだった。初めて聴いたときは違和感があったけど、英語の歌詞を使うなど、大衆とのコミュニケーションを意識したアルバムづくりへ、進化したと好意的に捉えたい。

1号シガーロスは日本公演ともども、渋谷さんは絶賛だった。

所長日本公演は確かに良かった。渋谷さんの姿は、会場の中で見かけたぞ。でも、渋谷さんのなかで、コールドプレイとシガーロスの評価がこれだけ違うのは、僕は理解できないね。ところでシガーロスの母国アイスランドでは、女性首相が同性愛者であることをカミングアウトして、同性愛者に福音をもたらしている。シガーロスのメンバーも喜んでいるはず。

1号ふふっ。3位Elbow「Seldom Seen Kid」は英文字ですな。輸入盤、ってことか。

所長●国内盤がリリースされないから仕方ないだろ。ここの1/26号でもふれたけど、国内盤をリリースしない理由がまったく分からない。僕が彼らのことを知ったのは、音楽情報サイト「Barks」の記事を読んでから。玄人が優秀作を選ぶ賞として知る人ぞ知る「マーキュリ・プライズ」で、レディオヘッドの「イン・レインボウズ」などを押しのけて最優秀アルバムを獲得した、というニュース。リンクしておくぞ。

「マーキュリ・プライズ、エルボーが受賞」
http://www.barks.jp/news/?id=1000043272

1号ユニークな賞だね。

所長「ほんまに、ええんか?」と疑いつつ、輸入盤をゲットして、ハマってしまった。過去にさかのぼって全アルバムを入手したけど、実にいいバンドだ。渋いロックを好む人には、たまらん作品だと思うよ。

1号4位以下で何か言いたいことは。

所長●そうね。4位「ナイン・ライヴズ」は初めてスティーヴ・ウィンウッドが好きになったアルバム、5位「デス・マグネティック」も初めてメタリカが好きになったアルバムとして印象深い。ともに大ベテランなのだが。

1号長い音楽歴がありながらも、新しいファン層を開拓できるのは、力がある証拠だね。

所長6位のミューズ「ハープ」は、昨年の前半まではアルバム1位に推すつもりだった作品。ファンサービスのベスト盤のような位置づけの作品だなと思って、少しランクを下げたのだが、ライブアルバムとしての完成度が高い。かねてから、ステージが非常に高く評価されてきた理由が実感できた作品だった。DVDつきのお得感もファンには嬉しかったね。ミューズ入門編の作品としては一番のお薦め。彼らも、この「ハープ」で一つの時代に区切りをつけたように思うよ。

1号7位Deerhunter「Microcastle/Weird Era Continued」、再び輸入盤が。

所長これは渋谷陽一さんのFM番組で紹介されたのを頼りに購入したのだが、ポップなシュゲイザーとして、僕のツボにはまる作品だった。2枚組で輸入盤だから、めちゃお買い得。空耳も含まれているぞ。

1号どんな空耳よ。

所長「Weird Era Continued」ディスクの2曲目で「夜中の大根、お試しよ」と言ってる。下ネタとして空耳向き。

1号本当かね。

所長●言ってると思いながら聴くと、言ってる。

1号微妙だなあ。

所長空耳アワーは、意外と敷居が高いんだよ。これまで5通以上は応募しているけど、まだ採用されたことがない。

1号ふうん、そんなもんですかね。

所長8位フィーダー「サイレント・クライ」、9位ワンリパブリック「ドリーミング・アウト・ラウド」は、ともに僕の大好きなメランコリック・美メロ路線。思った以上に日本では売れていないみたいで、残念だな。同じ路線のトラヴィスや、キーンがメランコリック・美メロ路線から脱落していくなかで、貴重な存在だとは思うのだが。

1号10位のこれは何ですかね。

所長アシャというアーティストの、セルフタイトルアルバム「アシャ」。

1号それは分かるけど。

所長フランス生まれでナイジェリア人の女性シンガーソングライターだから、一言で言えばワールドミュージックの部類だろうね。CSの音楽専門番組などでは「クライム・オブ・ザ・マウンテン」というリードトラックが時々流れていたけど、それ以外の楽曲が粒ぞろいだった。コリーヌ・ベイリー・レイとサリフ・ケイタあたりが好きな人なら、買って損はない。ゆるゆるのサウンドが、クセになるよ。

1号ということで、ベスト10の発表は終了ですな。

所長ちょっと待って。ベスト10に入れるかどうか、最後まで迷っていたアルバムを5作あげたい。一応ABC順で。

グラスヴェガス「グラスヴェガス」
レオナ・ルイス「スピリット」
ザ・キラーズ「デイ&エイジ」
ザ・スクリプト「ザ・スクリプト」 
ザ・ティン・ティンズ「ウィ・スターテッド・ナッシング」

1号それにしても、今回は欧州勢、とくに英国のバンドが大勢を占めたね。グラミー賞のノミネートで英国勢だらけだったのと酷似している。

所長それは当然だと思うよ。誰かがどこかで書いていたけど、欧州勢は良くも悪くもアクの強いバンドが多いからね。僕の持論でもあるけど、マーケット・インの発想が行き過ぎると、どこかで必ず行き詰まる。ユーザーの趣味を考慮してたら、みんな似てきてしまうからね。内から湧き出てくるようなプロダクト・アウトの作品が結局は地力がある。少なくとも音楽作品については、そう思うんだよなあ。

1号ということで、オンフィールド音楽大賞2008の発表は終了ですな。

所長ちょっと待って。

1号まだあるのかよ。

所長今回のベスト10は、あくまでも[オモテ版]だ。表のタイトルに書いてるだろ、ちっちゃく[オモテ版]って。

1号確かに書いてある。しかも、わざと見えにくい薄い色で。

所長次は、日の目を見ない日陰者のアーティスト、誰も見向きもしないアルバムに焦点を当てた[ウラ版]を紹介したい。

1号好きだねえ、そういうの。

所長この続きはお知らせの後!

1号テレビかよ。

-posted by 所長@01:55PM


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