オンフィールド音楽研究所

2007,10,19

035●エボニー・アレイン(Ebony Alleyne)

所長●今回は早耳チェックだ。まだCSの音楽番組でもプロモーションビデオを見たことがない黒人女性シンガー、エボニー・アレインを強力プッシュ。

秘書1号(以下、1号)●次から次へと新しいものを見つけてくるな。

所長●種明かしをすると、今回のネタ元はJ-WAVEの「TOKIO HOT 100」。9/30付けのチャートで92位に登場したのを聞いて、即、購入を決断。

1号●相変わらずの衝動買いだ。

所長●10月の第1週の段階で「エボニー・アレイン」で検索すると、エフエム局のwebページがたくさんヒットしたから、エフエム局がいち早く注目したということがわかる。

1号●いわゆる「エフエム乗りのいい曲」というヤツですか。

所長●そういうことになるな。デビューアルバム「ネヴァー・ルック・バック」の国内盤が発売されたのは9/26で、ケイエスアールというインディーレーベルからだ。

1号●聞いたことがないレーベルだよねえ。

所長●検索しても、なかなか見つからなかったくらいだからね。「KSR」と「レコード会社」のかけあわせ検索で、ようやく2番目にヒット。目下、レーベルにとっては強力プッシュ中のアーティストのようだ。KSRの公式サイトをリンクしておこう。
http://www.ksr-corp.com/

1号●クラブ系音楽を得意とするレーベル、のようだ。

所長●クラブって行ったことがないから、「クラブ系音楽」と言われても未だにピンと来ない。ディスコの大人版みたいなものかね。

1号●少なくとも、クラブ活動のクラブではない。あんたが下らないボケをかます前に、先に言っておくよ。

所長●クラブ系音楽が好きな連中のクラブ活動は「クラブクラブ」か。

1号●そうボケましたか。

所長●カニが好きな連中が集まっても「クラブクラブ」だな。紛らわしいな。

1号●はいはい、紛らわしいよね、はいはい。

所長●KSRは強力プッシュしているつもりなんだろうが、webサイトのアーティスト説明は、
「UKの良質ソウル・レーベル『Expansion』から、IAN LEVINEがプロデュースを手掛けた大型R&BシンガーEBONY ALLEYNE。」
の一文だけ。もうちょっと説明してもいいと思うけどね。こちらもリンク。
http://www.ksr-corp.com/artist/show/75

1号●少ない人材でプロモーションしているんじゃないの。

所長●まあ、そうだろうね。あれこれ説明するよりも音楽そのものが雄弁だしね。まずはリードトラックの「Second Look」をどーぞ。

http://jp.youtube.com/watch?v=yNuGjQHMo7o&mode=related&search=

1号●なるほど。確かにエフエム乗りのよさそうな曲だ。軽くて気持ちの良いサウンド。高速道路をスイスイ快適に走りながら聞くBGMに最適、って感じだ。

所長●「TOKIO HOT 100」で初登場したとき、クリスさんは「スウィング・アウト・シスターに似た感じ」と言っていたけど、僕はポップなシャーデーって感じがする。

1号●なるほど。ちょっと野太いハスキー声でね。

所長●そうそう。しかもバックのサウンドは、70年代半ばのフィラデルフィア・ソウル風。今ならスムーズR&Bと称するのだろうが、昔風に言うと、洗練されたアーバンソウルという感じ。

1号●アーバン、ね。今やすっかり手垢のついた言葉だね。

所長●メロウという形容詞も久しぶりに思い出したりして。

1号●アーバン、メロウ……聞かないね、今は。

所長●70年代半ばから後半にかけて、雑誌「ADLIB」がよく使っていた言葉だ。個人的には、フィラデルフィア・サウンドは大好き。ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ、マンハッタンズ、ビリー・ポール、ザ・スピナーズといったあたり。

1号●懐かしく思う人も多かろう。

所長●世間一般では、大衆的なソウルミュージックとしては、モータウン・サウンドの方が玄人受けがよくて、フィラデルフィア・サウンドというと、ちょっぴりミーハーな印象に受け止められているんだろうな。スリー・ディグリーズとか、ザ・スタイリスティックスなどもフィラデルフィア・サウンドの代表格だから。

1号●あー、歌謡曲を歌ったスリー・ディグリーズと、ベンチャーズのように毎年来日してはディナーショーをやっていたザ・スタイリスティックスね。

所長●朝日新聞のテレビ欄から最初にめくった面で、よくディナーショーの広告が載っていたもんだ。

1号●それはともかくとして。

所長●うむ。まあ、すっかり過去のものとなったフィラデルフィア・サウンドの気持ちよさを、久々に思い出させてくれたのが、エボニー・アレインの一番の魅力だな。

1号●もう少しプロフィールを紹介してくださいな。

所長●紹介したいのはヤマヤマだけどね。何しろ、英語版のWikipediaにも載っていないし、公式サイトもない。MySpace.comにもプロフィールの記載がないから、本当に分からないんだよね。

1号●とんだ食わせ者、だったりして。

所長●どうなんだろう。本国のUKでも、ソウルの本場・アメリカでも大して売れてなさそうだし、先の「TOKIO HOT 100」では3週目に早くもチャートを落ち始めているのは確か。でも、アマゾンのレビューを見る限り、UKでもアメリカでも高評価なんだよね。

1号●購入者は少ないが、満足度は高い、と。

所長●少なくとも、70年代の小粋なクラシックソウルが好きな人は、病みつきになると思うよ。それに、デビューアルバムなのに日本盤はたっぷり19曲、収録時間にして72分もある。これで正価2400円は、かなりお買い得だと思うけど。

1号●盛りだくさんだね。

所長●全19曲のうち、17曲のクレジットに彼女の名前がある。作詞なのか作曲なのか分からないが、それなりに才能を持ったアーティストであるのは間違いないと思うのだが。

1号●なるほど。

所長●ライナーノーツによれば、10代の最後、2002年にアルバムデビューが決まっていながら、直前に発売中止になっていたらしい。エボニーの売り込みに熱心だった人物が人事異動させられたのが理由らしいけど、それにもめげず、今回アルバム発売にこぎつけた、と。

1号●なかなかの苦労人ですな。

所長●それだけに売れてほしいのだが、どうも、ドカンとブレイクしそうな兆しがない。クラシックソウルが好きな人には受けても、今どきのブラックミュージックが好きな人には古くさく聞こえるのかなあ。

1号●かもね。

所長●いっそ、スタイリスティックスに再びディナーショーをやってもらって、前座で呼んでプロモーション活動してもらうとか。

1号●実際、今年もやるみたいだよ。参考までに、一例をリンク
http://www.yrph.com/banquet/event/tsssn2007.html

所長●げげっ。本当だ。まだやってるのか。

1号●何度も来日しているところを見ると、それなりに手堅い需要があるんだろうね。

所長●おおっ。調べてみると、メンバーチェンジを繰り返したスタイリスティックスの他に、オリジナルメンバーが結成したニュー・スタイリスティックスがあるようだ。
http://www.thestylistics.org/
http://www.russellthompkinsjr.com/Group.html

1号●本家戦争が勃発。

所長●一澤帆布と一澤信三郎帆布みたいだな。マッタク。

-posted by 所長@23:22PM


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