オンフィールド音楽研究所

2007,09,21

034●メイク・グッド・ユア・エスケイプ(Make Good Your Escape)

所長●本日は、青田買いの日。

秘書1号(以下、1号)●また勝手に記念日を決めて。

所長●みんながブログに書き込むようなアーティストを僕が取り上げても仕方ないからね。今回はブレイク間違いなし、という予想付きで誰も知らないアーティストをいち早く紹介するのだ。

1号●本当にブレイクするかどうかは、ともかく。

所長●そのアーティストとは、メイク・グッド・ユア・エスケイプ。セルフタイトルのデビューアルバムが国内で5月に発売されたが、アマゾンでは今日現在、1件のレビューも書かれていない。一体、何枚売れているのやら。

1号●何だか曲名みたいだけど、アーティスト名なんだね。

所長●「Excite翻訳」で日本語訳すると、「利益をエスケープにしてください。」になるらしい。

1号●アーティスト名を訳さなくても。

所長●意訳したら「逃げたモン勝ち」みたいな意味なのかな。

1号●さあね。

所長●あるいは、「ロープエスケイプ3回までOKのUWFルールは利益をもたらす」みたいな意味かな。

1号●ぜんっぜん、違うと思うけど。

所長●UWFといえば、前田日明さん。

1号●あー、また話が横道へそれていく。

所長●UWFで足場を作り、総合格闘技ブームの橋渡しをした団体、リングスを復興させるようだ。

1号●あっ、そうですか。

所長●リングスの前身であるUWFが新日本プロレスに合流した後、一度だけ自主興行を後楽園ホールでやったんだよね。15分でチケットが売れたという伝説の興行だ。あのチケットを発売開始5分くらいでゲットして、わざわざ大阪から新幹線に乗って後楽園ホールへ駆けつけたものだ。後にも先にも、あれほど興奮したプロレス興行はない。

1号●ここは、あんたの思い出話コーナーですかね。

所長●そういう胸がキュンキュンするようなメランコリックな思い出は大切にしろ、ってことだよ。

1号●だから?

所長●メランコリックと言えば、メイク・グッド・ユア・エスケイプ。

1号●無理矢理、話をつなげたな。

所長●彼らの存在が気になって仕方なくなったプロモーション・ビデオを紹介しよう。「Real」という曲だ。

http://jp.youtube.com/watch?v=d9an1cFa7Qk

1号●何か、今イチ、ピンと来ない音楽と映像なんですけど。

所長●確かに、低予算で済ませたプロモーション・ビデオという印象は拭えない。まあ、インディーズだから、仕方ない部分はある。僕も最初は物足りない感じがしていたが、聞き込んでいくうちに、サビ部分のメランコリックなメロディラインが病みつきになってきた。

1号●ふうん。

所長●ようく耳を凝らしてみると、初期のプログレッシブロックではおなじみの、メロトロン風のオーケストレーションがバックに流れていることに気づく。どこかしら、郷愁を誘われるサウンドだ。

1号●メロトロンと言えば、あんたの好きなムーディー・ブルースが最初に採用した楽器として有名だ。プログレッシブロックというよりは、メルヘンロックみたいな感じだったが。

所長●メルヘンロックね、なかなか上手い表現するじゃないか。

1号●メイク・グッド・ユア・エスケイプも、メルヘンロックなのか。

所長●と思っていたんだけど、アルバムを購入して驚いた。どちらかといえば、ポストロック風の轟音ギターがうねる曲の方が多い。危うい美しさと、美しい危うさが絡み合って、これがまたグッド。事前の期待をいい意味で裏切られた感じがする。

1号●かなり引き出しの多いバンドなんだね。

所長●国内盤のライナーノーツによれば、メンバー4人の音楽の趣味は見事に
バラバラだそうだ。しかし、異なるバックボーンを持ちながらも、既成の音楽にはしたくないという野心は共通しているよう。そのへんが、バンドとしての懐の深さ、アグレッシブな躍動感につながっているように思うな。

1号●なるほどね。

所長●母国の英国では、「最もMuseに近いギター・バンド」と言われているようだ。僕なりに言い換えれば、Museの妖しさ+Radio Headの陰鬱な気高さって感じがするんだけど。歌詞はともかく、曲もよく書けている。捨て曲はほとんどない印象だ。

1号●ほお。評価が高いですな。

所長●しかし、不安が1つ。

1号●何。

所長●今日現在、彼らについて書かれた日本語ブログが1件も見つからない。リリースされて4カ月もたつのにね。僕って、好みがヘンなんだろうか。

1号●ヘンか普通かで言えば、明らかに前者でしょうな。

所長●彼らのアルバムが発売されたのは英国と日本だけのようなんだけど、英国のamazon.UKには身内の人間が書き込んだような短い絶賛レビューが2つあるだけ。Wikipediaの英語版にも彼らの記述がない。だーれも注目していないバンドに、僕だけが肩入れしているのだろうか。

1号●そうかもね。

所長●まあいいや。イチかバチかで、彼らを猛プッシュしておこう。

1号●先見の明ありか、赤っ恥かは、いずれ歴史が証明してくれるだろう。

所長●自信がないなあ。70年代に肩入れしたバンドのなかで、後々にも評価されたバンドって少ないからなあ……ブツブツ。

-posted by 所長@22:34PM

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所長●追伸だ。彼らのオフィシャルサイトが閉鎖されていたからヘンだなあ、とは思っていたんだが、どうやら解散してしまったらしい。

1号●なんとまあ。

所長●よくよく調べてみると、7月に解散したようだ。インディーズでようやく1stアルバムを出したばかりなのに……。レーベルのUKオフィシャルサイトでは何の発表もなかったが、MySpace.comのページに「OUR LAST SHOW EVER! ALL MUST ATTEND!!!」と書いてあった。いつまで残っているか分からないけど、MySpace.comのページをリンク。
http://www.myspace.com/makegoodyourescape

1号●ってことは、ブレイク確実の予想は、またもや大ハズレ。

所長●いいバンドだったのになあ。やっぱりメンバーの音楽の好みの違いが亀裂になったのかなあ。まあ、いずれ伝説となることを願っておこう。国内盤のCDはレアアイテムになるかもね。

1号●以前に紹介したザ・カラーといい、あんたが気に入ったバンドは解散する、というジンクスができるかも。

所長●僕は疫病神なのか?

-posted by 所長@07/9/22 10:38AM


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