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【No.143】 2004年12月02日号
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ネット世界の情報需給バランス
今回はまず、とあるランキングを見ていただきましょう。何のランキングかわかりますか。
さっぱり意味不明なランキングに見えますよね。実はこれ、当サイトに、どのような検索語で入ってきたか、統計をとったものなのです。僕が契約しているレンタルサーバーでは、毎日、どのような検索語でアクセスしてきたか、データを公開してくれています。これを淡々と記録し続けているのですが、一日単位で最も多かった1位の検索語をピックアップし、1位の回数が多い上位10語を並べてみたら、こうなりました。 調査期間は、昨年12月15日から今年の11月30日までの352日間。つまり、この352日間のうち半分近い175日間は、「前田日明」の検索で当サイトに入ってきた人が最も多い、ということになります。 これは実に不思議なことです。何故なら、当サイトは「前田日明」さん(元格闘家)のファンサイトでも何でもなく、彼について記述しているのは、全部で約300ページのテキストページ(htmlページ)がある当サイトのなかで、たったの1ページだけだからです。「昭和」に関するコンテンツは各種ありますが、「カーペンターズ」については70年代洋楽リンク集の中に名前が入っているだけですし、「山口百恵」さんについても、たった1ページのコンテンツしかありません。 「前田日明」さんといえば、一時はTV-CFなどに起用され、トーク番組にもたびたび出演していた、それなりの有名人。一連の“事件”で、マスメディアや格闘技界から距離を置かれ、ここ数年で極端に露出が少なくなっていますが、カリスマ性を持った彼の根強いファンは多いと思われ、検索してたどり着いてくるのでしょう。でも、たった1ページのコンテンツしかない当サイトにこれほど頻繁にアクセスするほど、ほかに情報がないのかと驚くばかりです。 さて、本題は「前田日明」さんについてではなく、インターネット世界での奇妙な「情報需給バランス」についてです。ここ最近の一般的な、情報に対する需要というのは、例えば検索サイトinfoseekのランキングページで推し量ることができます。現時点(12月2日)なら、「男性有名人」カテゴリでヨン様(ぺ・ヨンジュン)に人々の関心が集まったようです。再来日時の過熱フィーバーが話題になりましたから、これに関心が集中したのも当然でしょう。 もっとも、これはマクロ的に見た場合の人々の関心領域です。日本のインターネット人口が6300万人だとしたら、最大6300万通りの興味がある。6300万通りは大げさだとしても、少なくとも1000万通りくらいの興味のバラエティはあるはずです。 検索サイトやニュースサイトなどの巨大サイトは、いま人々がどのような関心を持っているのか、キチンとマーケティングしながらコンテンツを作っていると思いますが、これらのサイトではどうしても、優先順位の高い、興味が持たれている割合の多い情報に絞らざるを得ない。とくに今は、特定のテーマに関する関心が一気に広がり、集中する時代ですから、著名なサイトはますます、これらに特化しなければなりません。これはマスメディア、とくにテレビでも顕著に見られる傾向です。 しかし、日本人の大半が北朝鮮からやってきた子供たちの生中継映像に見入り、日本人の大半がアテネ五輪の柔道生中継に固唾をのみ、日本人の大半が岩に埋もれた家族3人の救出劇生中継に手に汗握っている瞬間にも、これらの情報にはそっぽを向いて「今晩のおかずレシピ」情報を探している人はいるし、「前田日明」や「山口百恵」について手っ取り早く情報を仕入れたいと思っている人はいる……。 当たり前のことですが、こうした情報に対する欲望を満たす仕組みとして、インターネットが見事に役割を果たしていることに、今さらながら感心してしまうわけです。もっとも、「前田日明」さんについては、知りたいと思う人がそれなりにいるにもかかわらず、格闘技マスコミなどが意図的に彼の情報を封印している証、と見ることもできますが。 雑誌「編集会議」12月号でインタビューを受けた際、僕が答えた言葉に次のようなものがありました。一部手を加えると、こんな感じ。「短期間に同質の情報ばかりを垂れ流す今のマスメディアや巨大サイトには、あちこち情報のスキマがある。情報過多の時代と言われているけれど、情報のレンジやバリエーションそのものは全然増えていない。マスメディアや巨大サイトでは埋めきれないスキマの数々を補っているのが、僕のような個人サイトなのだ」と。 冒頭のベスト10は、僕が埋めている「情報のスキマ・ベスト10」ともいえそうです。 かつて、情報を流すのはマスメディアの特権でした。情報が流れるルート(例えば電波やケーブル、新聞販売店網、書籍流通など)を、概ねおさえていたからです。でも、今は誰でも好きに情報発信できるし、誰でも興味の赴くままに情報を受け取れる。弊害もさまざまあるでしょうが、個人というアリンコが巨像と対等に張り合うこともできるようになった点で、面白い時代になったなあと、最近つくづく思うのです。 |
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