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【No.137】 2004年7月10日号
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日本のプロ野球を殺すのは誰だ プロ野球界が、球団合併問題で大揺れに揺れています。近鉄が球団名の命名権を売ると言い出したのは、今シーズンのキャンプイン前日の1月31日。この時は他の球団オーナーや世間からも顰蹙を買い、取り下げましたが、このことすら忘れてしまった6月13日には、近鉄が「オリックスとの合併が基本合意した」と発表、7月7日にはパ・リーグでもう一つの合併交渉が進んでいることが明らかになり、「10球団による1リーグ制への移行」が俄然、現実味を帯びてきたのです。 合併を発表、あるいは模索している球団オーナーは、球団経営がもはや維持できないと言います。近鉄を例に取れば、2003年度の収入が46億円に対して支出が84億円、38億円の赤字だそう(「クローズアップ現代」7/5放送より)。7月9日に行われた選手会との意見交換でも、経営者側はこのことを訴え、合併に理解を求めたといわれます。 球団経営が苦しいから、赤字が累積しているから、これ以上存続していくことができない……この文脈は、とてもわかりやすい。球団存続を求めるファンや選手の望みの一切をはねつける力を持った文脈です。でも、ファンや選手としては何か釈然としないものを感じざるをえません。「苦しいのは分かりますよ。でも、でも、だからといって……」と言葉を詰まらせ、後は情に訴えるか、「球団がなくなるなんてイヤだ、イヤだ」とだだをこねるしか術が無い。 視点を変えて、産業界に目を転じてみましょう。バブル崩壊以降の厳しい経済情勢のなかで、多くの業界では企業の選別や淘汰が進みました。弱小企業では生き残れず、大手に吸収される例や、中小どうしが合併して巨大企業に対抗できる勢力を確保した例もある。経営が立ちゆかないから、合併などを模索する……このことは、ようくわかります。この場合、業界再編が進んで一部の大手企業による寡占状態が進んだとしても、消費者の利便性が損なわれたり、業界そのものが縮小してしまうとは限りません。むしろ、力を持った大手どうしが工夫をしあうことで、業界そのものが健全に成長していく可能性もある。 ではプロ野球界でこのロジックが通じるか。球団再編が進むと、一時的に黒字に転換する球団は増えるかもしれませんが、チーム数の減少はファンの裾野を狭め、プロ野球そのものは停滞の方向に進むことでしょう。1リーグ制に移行してしまえば日本シリーズがなくなり、盛り上がりにも欠けます。一部の大手球団による寡占状態になることは、プロ野球界の将来を思えば何のメリットもありません。「勝ち組」だけが生き残り、「負け組」が市場から撤退するという産業界の理論を、そのまんまプロ野球界にも持ち込んでいるところが、最大の問題です。日本のプロ野球が社会人野球と大差ない、と指摘されるゆえんでもあります。 野球というスポーツを今後とも広く定着させていこうという大きな視野に立てば、少なくとも現状の12球団体制を維持できるように、大リーグ並みの利益分配や、チームの戦力均衡を促す考え方を採り入れるべきでしょう。競い合うのは試合だけにして、球団経営では緩やかな共存共栄を模索する、そんな考え方がほしいところです。でも今のオーナー、とくに発言力の強い読売巨人軍の渡辺恒雄オーナーには、このような視点は微塵もないようです。そこが、とても腹立たしい。 スポーツライターの玉木正之さんが雑誌『月刊BOSS』(2004年新年特大号)に書いたところによると、読賣新聞の政治部記者だった渡辺恒雄さんは、オーナー着任当時、「走者は3塁に走ってはいかんのか」と側近に尋ねるほど野球オンチだったそうです。確か、西武の堤オーナーも野球に明るくない人だと記憶しています。そのような野球への愛情が深いとも思えない人によって、そして産業界の理論だけを持ち込む経営者によって、日本のプロ野球は展望を失おうとしている。 選手会は、ここが踏ん張りどころだと思います。僕はあまり過激な行動を好まない性格ですが、今回ばかりは例えばストのような強硬手段に打って出てもいいと思う。目先の球団合併阻止のみならず、将来にわたって愛されるスポーツであり続けるために、闘ってほしいと思う。場合によっては、選手会自ら、年俸の高騰問題に言及せざるを得ないこともあるかもしれません。 もう一つ、プロ野球界を変える大きな原動力があるとすれば、それはファンの声でしょう。今のプロ野球界を牛耳っているオーナー、とくに渡辺オーナーに対して、ファンから非難の声があがらないのは、とても不思議なこと。別に扇動するつもりはありませんが、東京ドームでの巨人戦で「渡辺オーナー退陣」を求める横断幕があがっても不思議はないはず。暴走を続ける渡辺オーナーの心を揺り動かせるのは、東京ドームに集まるファンや、読賣新聞読者しかいないでしょう。 僕がいま期待を寄せている解決の方法としては、ファンの強い声に後押しされる格好で日本野球機構が“構造改革”に取り組み、二宮清純さんなど、野球への愛情に満ちた理論家も入れた外部諮問委員会を設けて改革の道筋をつける、というものです。できれば大リーグ並みの制度の数々を採り入れ、Jリーグのような地域密着型の球団経営に転換し、チーム数はむしろ増加させるのが理想でしょうか。東北・北海道リーグ対関東リーグで争う東日本ペナントレース、関西リーグ対四国・九州リーグで争う西日本ペナントレースの勝者どうしが日本シリーズを戦う、くらいになると、プロ野球はさらに面白みが増すと思うのですが。 このまま雪崩式に1リーグ制に移行してしまえば、日本のプロ野球はきっと魅力を失ってしまう。10年後にはゴールデンタイムをJリーグが占拠することでしょう。 |
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