【No.122】 2003年2月8日号

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昭和は輝いていたのか

 ここのところ、世の中は「懐かしいもの」だらけになってきた感があります。新聞広告を見れば、昔の音源を商品化したコンピレーションCDのボックスセット、懐かしい映像を集めたビデオのボックスセット、昭和史ばかりを集大成した冊子などなど……。テレビを見ればNHKのTV50周年特集が続いていますし、おそらく秋には日本テレビも50周年特集番組をいろいろと編成するのでしょう。

 他ならぬ僕も、その片棒を担ぐ一人です。メルマガは1960年がテーマだし、70年、80年に特化したコンテンツもある。そして、仕事の得意領域の一つは企業の社史執筆です。「懐かしいもの」は確かに好きではありますが、あまりに後ろ向きの企画ばかりが目につき始めると、あまのじゃくな性行が頭をもたげてきて、少し眉をしかめたくもなります。

 とくに気になるのは、「昭和は輝いていた」と言わんばかりの論調です。あの頃は一生懸命仕事に打ち込めた。あの頃はご近所さんと仲良く語らい物騒な事件もなかった。あの頃はみんなが輝いていた。あの頃は、あの頃は……。でも、昭和がそんなに輝いていたのでしょうか。昔の新聞をつぶさに見ていると、とてもそんな風には思えません。

 例えば、昭和45年は交通事故が今の二倍です。わが物顔で自動車が行き交い、歩行者は肩身を狭くして道を歩いていました。クルマの排出ガスや工場の排気ガスに悩まされ、敏感な人は咳き込みながら外出したこともあったでしょう。企業の不正が疑われて問い質しても、知らん顔がまかり通った時代でもあります。表面的にせよ、企業の代表が国民に向かって頭を垂れる機会も少なかった。

 医療機関による医療事故、学校の先生や警察官など権力をもつ人の不祥事が現代は多くなったとも言われますが、それは不祥事を握りつぶすことが難しくなって、白日の下にさらけ出される機会が多くなっただけ、と受け止めることもできます。少年犯罪が多くなったという言い方も、確かにデータの上ではそうなっていますが、昔は年長者が叱り飛ばして警察には連絡しなかったことも多かったはずで、一概に少年少女たちが悪くなったとは思えません。ちなみに、銃(猟銃)免状を持つ人の数は、昭和50年代前半が今の約2倍。平成よりも昭和の方が日本は銃社会だった、と言うこともできます。

 あの頃は良かった、昔は楽しかった……そうした文略は、今現在や将来に希望が見出しにくい世の中だからでしょう。だったら、懐かしむだけではなく、新しい一歩のために自分に投資しましょうよ、次の投票でしっかり代議士を選びましょうよ、などと言いたくもなります。

 歴史は、次の時代を生きていくために紐解くものだ、と思っています。人間がどのように生きてきたかを見ることが、新しいヒントにもなる。同窓会は、たまにあるから楽しく、明日への活力にもなります。毎日が同窓会じゃ、進歩はありません。

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