【No.123】 2003年3月10日号

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2002年発行分

アメリカ製品不買はできるか?

 フランスのシラク大統領やドイツのシュレーダー首相、そして多くの国々のトップや国連が何をどうなだめようが、ブッシュ大統領はあくまでも戦争がしたいようです。一時は「敵(イラン)の敵は味方」的な盟友であったはずのフセイン大統領による政治体制を崩すためには、何の罪もない人々や、各国から集まった「人間の鎖」を殺傷することも正義だと言うのでしょう。

 世界の警察を標榜し、「自分たちだけが正義を守る」とスーパーマン気取りのブッシュ大統領には、寒々しいものをおぼえてしまいます。イラク攻撃は相当以前から準備していたそうですから、今さら上げた拳をおさめることはできないのでしょう。

 8日の土曜日、東京などでは反戦デモが行われました。同じように反戦の気持ちをもった人は全国にいっぱいいると思いますが、そうはいっても日々の仕事が忙しい人や、反戦デモのムードにもなっていない地域に住む人は、反戦への意思表明することは難しいところ。そこで、一人でも今すぐにできる方法として、イラク攻撃を先導しようとしているアメリカの製品を買わない運動はどうかしらん、などと思いました。

 しかし、今の日本でアメリカ製品不買運動なんて、できるのでしょうか。

 まずはスーパーマーケットにて。入り口近くの生鮮食料品売り場では、美味しそうな色合いのアメリカ産オレンジはやめにして、ちょっぴり高めでも国産オレンジを。肉売り場ではカリフォルニア産などの牛肉・豚肉が散見されますが、これもパス。その他、加工品などは裏面の表示を参照してみましょう。冷凍食品の多くは中国産ですが、野菜のなかにはアメリカ産もいくつか発見できます。

 コンビニでは、商品の選択以前にお店の選択があります。アメリカ生まれのセブン・イレブンやローソンではなく、ファミリーマートやam・pm、仕方なくヤマザキデイリーか、思い切ってポプラ(地域限定)を選ぶということでしょうか。セブンイレブンは、アメリカの本部に対抗して日本独自のノウハウを開発していった様が「プロジェクトX」で描かれ、品揃えでも好感は持てますが、ぐっと我慢する、と。

 外でランチをするときは、アメリカ生まれのマクドナルド、ケンタッキーフライドチキン、ミスタードーナツは避けて、モスバーガーやロッテリアへ。あるいはすかいらーくでもいいでしょう。ロイヤルホストは微妙ですねえ。大阪万博では、アメリカゾーンの飲食店として外国店扱いで登場したからです。でも、本当にアメリカ生まれなのかしらん。

 ちょいと検索してみると、アメリカではリゾートホテルのRoyal Hostが見つかりましたが、ロゴが違いますし、日本のロイヤルホストよりも後から生まれている。きっと別物なんでしょう。そう言えば、ミスタードーナツも生まれはアメリカですが、発展したのは日本で、本国では消滅したも同然。日本のチェーン店と見ることもできます。あらら、日本生まれのすかいらーくのHPには主要輸入国としてアメリカが筆頭に挙がっていますねえ。んー難しい。

 さて、食事をしたら、お茶もしたい。ここではまず、明らかにアメリカ系のスターバックスタリーズは避けるということでしょうか。いずれもコーヒーが美味しい店ですが、横目でにらみつつタバコ臭いドトールなど国内系のお店へ。最近、東京あたりでは海外資本のコーヒーショップが数々できていますが、よくよく見るとアメリカ系もあればヨーロッパ系もあるんですね。詳しくはこちらでチェックしてみますか。迷ったら和食や中華などに専念して、お茶するなら東京ではルノアール、関西なら派手なおばちゃま御用達の「珈琲の青山」、珈琲館って方法もありますね。

 そうそう、清涼飲料水も国籍がいろいろです。わかりやすいのはコカ・コーラやペプシ・コーラを避けるということでしょう。もっとも、これらはライセンスを得て日本で製造していますから、イメージ上のアメリカ製品でしかないともいえます。コーラの原液はアメリカからの輸入らしいので、これを国内の水や炭酸で薄めているためハーフって感じですが。

 一方、ミネラルウォーターはわかりやすいです。これは、コーラのように「ブランドだけ海外、中身は日本」ってことはなく、海外のミネラルウォーターは無条件に海外の水が現地でボトリングされ、日本までどんぶらこと運ばれているからです。海外ブランドは、水も容器も間違いなく海外産です。アメリカのミネラルウォーターといえば、クリスタルガイザーが有名ですね。

 アルコールはどうでしょう。これも見分けは簡単に思えます。ビールならいかにもアメリカっぽいバドワイザーをパスして、国産やアジア産、ヨーロッパ産のビールを選べば良さそうです。あれれ、バドワイザーはライセンス契約にもとづいて麒麟麦酒が国内で作っているんですか。ライセンスをもっているのはアンハイザー・ブッシュ(Anheuser-Busch)社。おっ、ブッシュの名前がついていますね。でも大統領のブッシュはBush。つづりが違いますから、言いがかりだと言えなくもありません。

 そういえば、国内のビールやウイスキーの原料となる穀物類はどこから来るのでしょう。オーストラリア産が多いようですが、アメリカ産も含まれていると見てよさそう。国内ビールといっても、原料から見れば輸入ビールみたいなものなんですねえ。思い切ってヨーロッパ系の輸入ビールにしましょうか。ちょっと高いけれど、案外美味しいものがありますよ。こちらでチェックしてみますか。

 お酒を飲んだら、ついつい手が伸びてしまうタバコはどうでしょう。アメリカンなムードがぷんぷん漂うマールボロ、ラッキーストライクは避けるということでしょうか。イヤ待てよ。そういえば、マールボロ愛好家だった僕がロスで買ったマールボロは、中身がまったく違っていて、えらく味がキツかった。どうやらブランドだけアメリカ産で、日本ではJT産なんですねえ。うーむ、うーむ。えっ、キャメルもそうなんですか。うーむ、うーむ。

 何だか煮詰まってきたので、視点を変えてレジャー施設をみていきましょう。ここでは東京ディズニーランドやUSJをやめて、首都圏ならサンリオピューロランドや富士急ハイランド、いっそのこと花やしきとしまえんで我慢したいところです。パチンコやカラオケは日本の文化だから問題はないですね、たぶん。

 スポーツ観戦は悩ましい。今日本中が関心を寄せているのは、アメリカの大リーグだからです。日本人選手が注目を浴びていて、とくに松井選手の動向はとっても気になるところだし、個人的に応援もしたいけれど、ぐっと我慢。大リーグ情報を流す時間帯はチャンネルを変えちゃいましょう。

 ただでさえ、報道過熱気味の昨今、視聴率が下がれば取材の量も減るでしょうから、本人も落ち着いてプレーできるでしょう。大リーグを諦めた近鉄の中村選手や大リーグ帰りの日本人選手を応援するのも方法です。野球そのものがアメリカ産のスポーツですから、サッカー観戦に専念するのもいいかもしれません。

 格闘技・プロレス関連では、アメリカンプロレス色の強い団体は観るのをやめましょう。純プロレス団体はおおむねアメリカン色に染まりつつありますから、旧UWF系や柔道、相撲を堪能することにしましょう。思い切ってモンゴル相撲という手もある。っていうか、観戦する術はないなあ。

 映画では、もちろんハリウッド映画はパスですね。映画は、国籍がわかりやすいです。ほら、このように製作国がハッキリわかります。洋楽も、アーティスト名をここで検索すると、出身地がわかります。例えばエアロスミスはやめてストーンズにしよう、みたいな。でも、俳優や音楽アーティストによっては反戦の意志を表明している人もいますから、「国籍で分けることに意味あるの?」と問われれば、すみませんとしか言えないのですが。

 「アメリカ製品」を挙げるなら、とりあえずこのくらいかな、と思いましたが、大きな落とし穴に気づきました。そう、皆さんがこのwebページを見ているときのパソコンのOS、ブラウザ、メーラーなどなどです。

 これは困った。僕はMacintoshですが、多くの人はWindows。どちらにしても、アメリカ生まれのOSです。InternetExprolerもNetscapeも同様です。「パソコンを作っているのは、どうせ台湾」という声も聞こえてきそうですが、心臓部の部品は少なからずがアメリカ製でしょう。自作パソコンに挑戦しても限界がありそうです。

 パソコンライフでアメリカの呪縛から逃れる方法はあるのかなあ。頼みの綱として、当サイトの立ち上げをサポートしてくれた友人のwebプランナー氏に尋ねてみました。

 まずOSでは日本製のTRONがあるとのこと。ふむふむ、これは聞いたことはあるぞ。でもこれって、平均的なユーザーがすぐに使えるモノではないんじゃない? 「TRONはネット家電向けの組み込みOSとしてJ-TRONが使われていますよ」「B-TRONというパソコン向けのOSもありますが、どの程度使われているのかは不明ですねえ」とwebプランナー氏。TRON製品としてはすでに日本生まれのDOS/V用OS、「超漢字」というものが発売されているとのこと。ふうん、これは知らなかったなあ。

 OSでは他にもLinuxもありますね。これを発案したのはフィンランド人だそう。でも「今はシリコンバレーにいるんじゃないかなあ」という説もあって、悩ましいところ。確かにLinuxはもともと、オープンな技術として出発していますから、アメリカの息がかかっていないとも言い切れない。強いて言えば無国籍って感じでしょうか。日本の携帯情報端末で先駆的な存在のザウルス新製品では、OSにLinuxを搭載した新製品が出ていましたので、これで代用するという選択肢はある。

 ではブラウザはどうでしょうねえ?「Windows用であれば、いろいろありますね。ブラウザで今一番の注目株はOpera。ノルウェーの会社です」。なるほどなるほど。おっ、「Opera 6 for Mac OS 8.6-10.2」ってのもあるじゃないですか。でも今後はMacintosh版は開発をやめるのではないかとの噂もあるって? ううむそうか、Macユーザーには厳しいなあ。

 メーラーではいろいろ選択肢がありそうですね。webプランナー氏はBecky!というメーラーを使っているそう。windows用のみですが、国内の代表的なソフトウエアメーカー、ジャストシステムからはShirikenってのも発売されていますね。窓の杜ではwindows用、Vectorではwindows用やMacintosh用のシェアウェアがちょこちょこでています。一度、使ってみるかなあ。「メールやちょっとした情報収集だけできればいいよ」という向きには、いっそiモードで我慢する、という方法もないではないでしょう。

 さて。

 今回のコラムは、もともと「反戦への意思表明としてアメリカ製品不買運動を呼びかけてみようかな」という軽い気持ちから、一週間前に書き始めました。どうせ書くなら具体的に、どれがアメリカ製なのか記述してみようかと、いろいろ調べ始めたのですが、調べれば調べるほど深みに入ってしまいました。とくに部品や素材レベルまでさかのぼってしまうと、アメリカからの輸入に多くを頼っていることがわかります。グローバリゼーションのまっただ中にいる、と言った方が正しいのかもしれません。

 今回のイラク攻撃だけに限らず、最近の世界情勢でも各国で反米感情をベースに不買運動が起こってきました(サウジアラビアエジプト韓国)。日本でも一部では「ディズニーランド 、USJ、ハリウッド映画、牛肉、マクドナルド、コカコーラ」の6品に絞って不買運動を進めようとする動きがあるようです。

 でも、アメリカ製品がそのまま輸入されている国々と違って、日本では良くも悪くも生活の隅々にアメリカの影響が浸透していて、不買運動はあまりに不毛な感じがしてきました。誰が見ても「日本のモノ」である肉じゃがや刺身を食べ、みそ汁を飲み、食後に和菓子をいただいても、原料はアメリカから渡ってきたものかもしれないからです。こういう運動は、勢いあまってアメリカ国籍をもつ人すべてを排除するような、子供じみた行動を促す可能性もあって、危険な要素もある気がします。

 結局、一人一人が戦争を許さないという「折れない心」をもって、日々を過ごすことしか方法はないのではないかしらん、と思えてきたのでした。

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