●今月のコラム●(26) 2002年7月1日号

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2002年発行分

フーリガン対策よりもおもてなし

 2002FIFAワールドカップの韓日大会が、熱狂のなかで閉幕しました。世界のトッププレイヤーたちの妙技に舌を巻いたり、日本や韓国の頑張りに近所迷惑も顧みず大歓声を上げたりして、しっかり楽しませてもらいました。何だかすっかりサッカーが好きになってしまって、プロ野球を観る気がしなくなった人も多いはず。

 少なくとも僕が知る限り、出版界や映画界では、W杯が終了するまでは新作の発表を控えようとする動きがかなり以前からありました。世間の関心がサッカー一色に染まり、商売にならないから、との判断です。「そんなものかなあ」と釈然とはしなかったのですが、なるほど正しい判断だったのだと妙に納得した次第。これから夏休みにかけて、話題の新刊・新作ラッシュになるのでしょう。話題作不足の隙間を縫って公開された「少林サッカー」の大ヒットは、配球会社の知恵の勝利といえます。

 さて、W杯で気がかりだったのは、例のフーリガン対策です。今となっては「そんなこともあったな」という気分ですが、開幕の数ヶ月前くらいから一部のマスコミでは、「フーリガンがやってくるぞ」と脅かすような報道が繰り返しされました。これに触発されたのか、防犯カメラを設置した商店街、試合の当日はシャッターを閉め切ってベニヤ板などで「武装」する店もありましたし、試合会場周囲の住宅街では雨戸を閉め切って一時的に「疎開」する家々もあったようです。

 フーリガンという名の見知らぬ異人が現れ、暴徒と化して街を荒らす。そんな「警告」を僕はとても白々しく観察していました。W杯ともなれば、戦後日本の歴史のなかで最も多くの観光客が来るはず。海外から、たくさんのサッカーファンが日本に来てくれるのだから、ホスト国としてはあくまでも「おもてなし」が第一義であり、フーリガン対策という「武装」はあくまでもオプションじゃないか……。そんなことを思い、当HPのトップページでも「フーリガン対策よりもおもてなしを」と短いメッセージを長めに出していました。

 結果論と言われればそれまでですが、とくに目立つようなフーリガン騒ぎはなく、「やっぱりな」が正直な気持ち。フーリガンの恐ろしさばかりを伝えた一部のマスコミは、もはや、「オオカミが来るぞー」と言い続けてそっぽを向かれた、オオカミ少年のように見えてきます。

 先日、とあるFM番組に、日本に住む英国マスコミの記者が出演していましたが、期間中は英国人だという理由だけでホテルの予約をことごとく断られたそうな。日本人のガイジン観は、どうやら万国博覧会が開催された1970年の頃から大して進歩していないようです。一方、一週間滞在しても2万円以下のような安宿では、普段から「多様な人々」を受け入れているせいか、国籍や人種にかかわらずウエルカムで、思わぬ好況となった様子。W杯に向けてソロバンをはじいていた大手ホテルと好対照をなしていて、なかなか痛快でした。

 痛快といえば、大分県の中津江村の人々の対応も印象深いものがあります。あれだけ待ちぼうけを食らっているのに、深夜の到着も快く迎え、「よく来てくださった」と喜んでいる姿を見ていると、日本も捨てたものじゃないなあと感じ入ります。これこそ、僕が期待していた「おもてなし精神」のカガミ。素朴な中津江村の人々に好感を抱いて、この片田舎を観光に訪れる人も増えることでしょう。

 W杯がらみでは、大阪ミナミの道頓堀川ダイビングについても一言。基本的には、アホなことやるなあ、異臭まみれになった近所の銭湯が可哀想だなあと思っていますが、「やめろ」と言ってもきくはずがない。ここは一つ、発想を変えて、堂々とダイビングできる権利を与えるというのはどうでしょう。ただし、道頓堀川のドブさらいを一日ボランティアで実行した人のみ。それ以外は条例か何かで断固禁じて、違反者からはしっかり罰金をいただく。こうすれば川もきれいになるし、お祭り騒ぎもできます。一挙両得だと思うのですが。

関連リンク●ようこそ中津江村のホームページ」(W杯の騒ぎがおさまった今だからこそ覗いてみては? そのうち「カメルーンまんじゅう新発売!」なんてニュースも掲載されたりして……)

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