オンフィールド音楽研究所

2006,06,22

009デペッシュ・モード(Depeche Mode)

所長●僕の洋楽の守備範囲は、もっぱら70年代と2000年以降なんだけど。

秘書1号(以下、1号)●いびつだよねえ。

所長●仕方ないのだ。80年代と90年代は、もっぱら仕事に専念。音楽には目もくれず。

1号●良くも悪くも猪突猛進タイプ。

所長●80年代は、洋楽がつまらなくなった時代でもある。

1号●あんたにとっては、ね。一般的な評価はそうとも言えない。80年代にも洋楽ファンはいたわけだし。というか、洋楽的なものが一般化したのが80年代とも言えるぞ。

所長●まあね。日本の音楽界も、YMOやらクリスタルキングやらサザン、ユーミン、ゴダイゴ、オフコースなどが台頭してきて、急激にポップス主流になった。一部の人間だけが熱狂していた洋楽ロックは大衆化して、商業化した。サブカルチャーから、メインカルチャーヘと急激に変貌。

1号●わかってるじゃないの。

所長●だから距離を置いたというのもあるな。ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」とか、デュラン・デュランみたいな華やかなパーティロックが幅をきかせて、こんなのロックじゃないやい、みたいな。

1号●この、ひねくれ者が。世間的には、だからロックが好きになるのに。

所長●そうかなあ、やっぱりロックはもっとストイックで、 ギラギラしていて、危険なニオイがしないとつまらないよ。それに、ネコもシャクシも、ディスコっぽいダンスミュージックになっていったし。あのクイーンも、ムーディ・ブルースも、アース・ウインド&ファイヤーも、「ベン」を歌っていたマイケル・ジャクソンも、デヴィッド・ボウイも。何だか、時代にスリスリしている感じで、イヤだったなあ。

1号●時代のニーズに合わせて音楽性を進化させた、とも言えるぞ。

所長●ものは言い様だね。でもほら、わかんないかな、みんなが雑誌「POPEYE」を読み始めてファッショナブルになってきて、「チッ」とか、「けっ」みたいな感覚。

1号●さっぱりワカリマセン。

所長●わかってもらえないかなあ。

1号●わかりません。

所長●そうか。じゃあ、心を入れ替えよう。

1号●えっ?

所長●これからは、80年代と90年代の穴を埋めていくことにした。

1号●ずいぶん心変わりが早いヤツだな。

所長●君の言うとおりだ。80年代もそれなりに興味深い洋楽はあった。

1号●本当にそう思ってるの?

所長●そう思おうと、前向きに検討することにした。

1号●国会答弁みたいだね。

所長●ということで、前置きが長くなったけど、80年代を再発見するシリーズ!

1号●勝手にシリーズを始めたな。

所長●第1弾として、デペッシュ・モード(Depeche Mode)を選択。

1号●まさしく80年代のバンドだね。80年に結成したようだ。

所長●らしいね。このバンドの存在を知ったのは、去年CSの音楽系番組で流れていたビデオクリップ。最新アルバム「プレイング・ジ・エンジェル」に収められた「プレシャス」が、すっかり気に入った。

1号●このブログを見ている30代の人は、たぶん苦笑していると思うよ。「おいおい、今さらデペッシュ・モードかよ」って。

所長●いいじゃない、何ら恥じることはない。世の中には、 森山直太朗から森山良子を知った人もいるだろうし。

1号●微妙にズレてる喩えだね。

所長●このバンドの存在は、本当にまったく知らなかったな。名前を小耳にはさんだこともなかった。

1号●まあ、シングルの大ヒット曲が多いバンドとは言えないから。

所長●まるで、ニューカマーと出会えたような気分だ。 80年代再発見バンザイ! ビバ80年代! 

1号●何か、ヤケクソ気味。

所長●せっかく80年代洋楽に目覚めようと前向きに検討しているのに、水を差さないでよ。一応、彼らの事実上のベスト盤ともいえそうな「ザ・シングルス'86−'98」というアルバムも聴いたよ。これがなかなか楽しかった。

1号●どんな風に楽しかったの。

所長●いかにも80年代っぽい薄っぺらなテクノサウンドで、チープな感じ。

1号●誉めているとは思えない。

所長●でも、そこ、が、いい、と、思う。

1号●何だか、途切れ途切れだな。

所長●いいよ。たぶん。……いや、たぶんじゃない、なかなか、いいよ。いかにも時代にあった、ファッショナブルな大衆音楽で。

1号●あまり無理するなよ。

所長●いや、本当に気に入ったんだってば。

1号●いかにも作った真顔で言うな。かえってしらじらしい。

所長●ふふっ。まあ正直に言うなら、01年のアルバム「エキサイター」の方がいいと思うし、05年の最新アルバム「プ レイング・ジ・エンジェル」はさらにいいと思う。テクニックに走らず、まったりと、叙情的に、テクノを下敷きにしたAORっぽい完成度になっている。

1号●彼らも齢を重ねて、円熟味を増した、ということですかな。

所長●そうそう。立派な大人になって、まあ、という感じだな。20年ぶりに会う姪っ子・甥っ子のよう。だから、若い頃にやっていた、薄っぺらで若気の至りのようなサウンドも愛しく思えるというか。

1号●やっぱり嫌いなんじゃないか、80年代の音は。

所長●嫌いだね。……おっと、だから、好きになろうと前向きに検討しているって言っただろ。嫌いだったモノを好きになるのは、 相当な努力がいるんだから。80年代再発見バンザイ! ビバ 80年代!

1号●やっぱり、ヤケくそだな。

-posted by 所長@10:35AM


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