●今月のコラム●(16) 2001年9月1日号

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精神分裂病の名称変更で

 8月24日付けの新聞記事によると、「精神分裂病」という名称を変更することが、検討されているとのこと。以前から、精神保健福祉関係者の間では時折指摘されていた話題です。患者をかかえる家族で作る全家連という団体が呼びかけ、医療側の日本精神神経学会がこれに応えるかっこうで、来夏までに病名の新呼称を決めるべく、いよいよ本腰をあげ始めたようです。

 この記事で好印象をもったのは、全家連が一般市民を巻き込みながら新名称を考え出そうとしている点です。何でも、新聞広告で新名称を一般募集するそうな。「ちょいとお金がかかりすぎるんじゃないの?」と余計な心配もしてしまいますが、媒体選択の是非はともあれ、名称検討に一般人のアイデアを借りるという発想はいいんじゃないでしょうか。

 以前も当コラムで指摘しましたが、障害者の当事者団体や親の会の場合、何か行動を起こそうとすると、矛先はたいてい国や地方自治体などの行政機関だったんですね。福祉施策の充実とか、抗議行動とか、相手はいつもお役人。それも結構だけれど、これでは世論を形成している一般市民にとって、ただの対岸の火事になってしまう。いや、火事ならまだ微かに見えるな、対岸のたき火と言ったほうがいい。ともあれ、障害者関係のことは「障害者担当の役人と当事者が勝手にやってりゃいいさ」となっていたわけです。

 直接交渉で役人を動かす手法はそろそろヤメにして、それよりも、味方になってくれるかもしれない一般市民に働きかけた方がいい、その方が遠回りには見えても結局は差別や偏見を解消する一助になると考えていた僕にとっては、とてもうれしい話題でした。 一般市民から広く名称募集したら、おふざけ半分の珍アイデアもいっぱい来ることを覚悟しなければなりません。名称募集なのに、不愉快で挑発的な手紙が舞い込んでしまうこともあるでしょう。それでも名称募集の事務局は大らかな態度で受け止めて(流して)ほしいですね。

 話を変えるようですが、1974年にプロ野球球団の日本ハムが誕生した際、それまで東映などが使っていた「フライヤーズ」の愛称をやめて新しい愛称をつけることになり、広く募集したことがありました。新聞記事の端っこにそのエピソードがコラムになっていて、「オナニーズ」なんて応募もあったと書いてありました。似たような応募はあると思いますが、ガハハと笑い飛ばすくらいの度量も必要でしょう。

 ところで、今回の名称変更では、「言葉狩り」に神経をとがらせている人々からの反対も予想されます。僕も仕事柄、言葉狩りには神経質なほうですが、今回の名称変更は納得できる。「精神が分裂した病気」という誤った理解に明らかに結びつく、と思うからです。数年前に「精神薄弱」が「知的障害」になったときも納得できました。

 よくないのは、単に言葉のニオイを消し去るためだけの言い換えですね。たとえば「障害者」という言葉がよくないと言う人が少なからずいます。これを「障がい者」「障碍者」に改めるのは賛成しますが、「チャレンジド」とか「ハンディキャッパー」などと言い換えるのはどうも納得できない。言葉の周囲にまとわりついたニオイを脱臭するだけで、ニオイそのものの駆除にはならないからです。「障害をおもちになられた方々」に至っては、腫れ物にさわるような逆差別さえ感じてしまいます。

 そういえば、かつて雑誌で「障害者」を、筆者校了後に勝手に「障害のある人」に変えられたことがありました。それだけならまだしも、「代表者1名」を「代表のある人1名」に変えられ、意味不明な文章のまま発行されてしまった。今なら笑い話ですが、当時はさすがに怒り心頭に達して、その雑誌とは二度と仕事をしなくなりました。腫れ物にさわるように言葉を変えようとすると、こんな珍事も起きるわけです。

 また、昔の映画やテレビ作品で、今なら差別用語にあたる言葉を無音にしたり、わざわざ吹き替えたりするのも、あまりに過敏と言わざるをえません。来年夏以降、精神分裂病が仮に「スキゾフレニア」に変わったとしても、僕は必要に応じてこの言葉を使うかもしれません。

 それにしても気がかりなのは、何度もコラムに登場した北海道の「べてる」で、「精神バラバラの早坂で〜す」と笑いを取りながら自己紹介する彼のこと。来年夏からは新しい自己紹介に「変更」するのでしょうか……。

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