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●onfieldレポート●(01) 2001年11月1日号
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山崎ハコと新劇 少しばかり衝撃を受けた出来事についてお話したいと思います。それは、フォーク歌手・山崎ハコさんが出演した新劇、前進座の「旅の終りに」についてです。 山崎ハコさんは、フォークブームにやや翳りが見え始めた1975年、アルバム「飛・び・ま・す」でデビューを果たした、女性フォーク歌手です。「暗くて陰気」と揶揄されながらも、一部で熱狂的なハコ信者を生み出しました。所属会社の社長に騙され、レコード会社も転々とし、不遇の時代は続きましたが、一昨年には閉館間近の「ジァン・ジァン」に幾度か登場して、健在ぶりをアピールしてくれました。何を隠そう、僕はデビュー当時からのファンで、ライブも10回近く観ています。 一方、前進座については資料をもとにしか解説できませんが、創立1931年の新劇の老舗。僕が編集しているメルマガの元資料でもある1970年の朝日新聞にも、チャンバラものの芝居の広告が掲載されていました。よくドキュメンタリーに出てくるような、家族で全国各地をドサ回りをしている大衆演劇ほど泥臭くはないものの、わかりやすい人情ものの時代劇、現代劇を上演している劇団のようです。代表は、かつて「遠山の金さん」を演じた中村梅之助さんです。 「旅の終りに」は五木寛之の原作・脚本によるお芝居で、舞台は1970年のレコード会社。演歌・歌謡曲部門の衰退、そのなかで「演歌の竜」と呼ばれたディレクター(歌舞伎役者の中村梅雀、梅之助の実息)が最後の大勝負に出る……といった筋書きです。山崎ハコは、「演歌の竜」の最後の隠し球である新人歌手という役どころで、実は在日韓国人。ようやくデビューが決まったものの、本名の韓国姓ではなく、日本姓でデビューすることがネックとなり、土壇場でデビューを諦めていくわけです。さらに、「演歌の竜」とは縁を切った実娘との確執、手塩にかけて育てたもののデビュー直前で失踪した飲み屋のおかみとの大人の恋などなど、わかりやすい人間模様がタテ糸・ヨコ糸に絡まりながら、物語は進んでいきます。 僕自身、演劇といえば、もっぱら下北沢で観る小劇場系の劇団がほとんど。今では有名になりましたが、WAHAHA本舗、大川興業、いま脚本家・宮藤官九郎が注目を浴びている大人計画、劇団☆新感線、遊◎機械/全自動シアター、などなどの類です。新劇なんて古くさいし、演技も大袈裟でクサいし、お涙頂戴のくだらないもの……と見下す感覚が、正直言ってある。そんな新劇を、山崎ハコが出演しているという動機だけで見に行ったわけです。 公演会場でもある前進座劇場があるのは、東京の吉祥寺。どちらかといえば、下北沢系の、ちょっぴりアンティークな感覚が残る若者の街で、下町にはカテゴライズされない場所でしょう。そこに、どこからやってきたのか、50代から80代くらいのシニア世代、シルバー世代のお客さんがギッシリいます。スパンコールをちりばめ、香水の臭いをプンプン振りまく派手派手なおばちゃんは見あたらず、どちらかといえば質素な身なりの人がほとんど。中には、特別養護老人ホームから抜け出してきたのではないかと思える寝間着姿のおばあちゃん、手作りで間に合わせた棒っ切れの杖をついたおじいちゃんもいる。そして、芝居を観ながら笑い、泣き、拍手を送って、満足そうに家路についていったのです。 新劇は、実に強い。心からそう思いました。泥臭いし、セリフ回しもクサいし、ギャグも決して高度ではないのに、楽しめる。入場料は7000円でしたが、きちんと楽しませてくれる。期待はずれが、まずない。これほど手堅いエンターテイメントが、ほかにどれくらいあるのでしょう。 帰り道、いろんなことを考えながら駅へ向かいました。まず、自分の仕事柄に照らし合わせて猛省を促されました。ここに、そこそこのボリュームゾーンを形成する大衆は確かにいる。でも、この大衆の心をつかむような文章をどれだけ念頭において書いていたのだろうかと。昨今のビジネスについても考えました。一生懸命マーケティングをして、大衆のニーズにあった商品開発をしているはずなのに、実は、マスコミの話題になるような若年層に受けること、話題になることしか考えていなくて、ここに集ってきている大衆のことを、すっかり蚊帳の外に置いていたりするんではないかと。 このお芝居の題材でもあり、僕がたびたびふれている音楽業界はその最たるものかもしれません。CDを何百万枚も売り、東京ドームを連日満員にするようなビジネスばかり考えて、数週間の興業で連日500人を満員にでき、これを何十年も続けられるようなビジネスを忘れているんではないか。メガヒットがありながら、CD売上総数としては下がっている音楽産業は、もう一度足下を見つめ直すべきなんじゃないですかね。 日本の因習を呼び覚まされるような内容が多い新劇ではありますが、それに血が騒いでしまう遺伝子が、日本人の中には組み込まれている。新劇も捨てたものじゃない、いや、大衆演劇も含め、今後も機会があれば積極的に観ようかしらん、と思ったのでした。 関連リンク●「山崎ハコ公認サイト(ファンによるサイト)」 |
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