●取材ノートから●(08) 2001年1月1日号

2000-01発行分

2002年発行分

あなたの水虫は水虫じゃない?

 「迷ったときの医者選び」という書籍に2000年の年明け頃からライターの一人として参加し、ようやく11月に発売されました。僕が担当したのは皮膚科医ですが、書籍では各医師の治療の特色について簡潔に紹介するのが役割でしたので、文字量との兼ね合いで漏れてしまった話がいろいろ残っています。貴重なネタを僕の取材ノートに眠らせるのはあまりにもったいないので、今回からいくつかをご紹介していきましょう。

 まずは水虫です。水虫って、高度な医療技術が必要なものではなさそうだし、手先を器用に使って治療するような病気でもないように思えます。統計をとったわけではありませんが、どちらかといえばカゼのように適当な家庭用医薬を買ってきて済ませ、どうもイマイチ治らないなあと思いつつ、夏が過ぎて痒みもおさまって、治った気分になる……というのが一般的なケースではないかと思います。何を隠そう、かつて水虫に悩まされていた僕がそうでした。

 「たかが水虫」と軽く見られる皮膚疾患で、治療方法そのものは一般化されており、特別な名医だけが治療できるようなものではありません。それは事実ですが、問題は診断、要するに水虫なのかどうか、水虫ならどんな種類の水虫なのか、疾患の種類を確定する技術に大きな開きがあるとのこと。

 僕が取材したN医師は水虫治療で有名な医師でしたが、技術の違いは診断でした。N先生はこう言います。

 「患部から皮膚を少し採取して、顕微鏡で調べて初めて診断できるんです。ほんの2、3分でできる検査ですよ。でも、この手順をきちんと踏んでいる医師が、まず少ない。検査なしで水虫とわかる先生がいたら、それは神様に近い先生か、いい加減な先生か、そのどちらかです」

 なかには患者から「水虫です」と言われてそのまま鵜呑みにし、患部をちらっと診ただけで水虫の薬を処方する医師も少なくないのだとか(皮膚科専門医以外の医師に多いようです)。N先生の言うには、「水虫です」と言って治療を受けに来た患者の半分は実は水虫ではなく、異汗性湿疹という湿疹の一種。にもかかわらず水虫薬を塗り続けていると、湿疹で荒れた皮膚の内部を直接刺激して、かえって湿疹を悪化させることもあるそうです。N先生はこれを「医原病、つまり医療ミスが病気をつくるということ」とも言いました。

 また、水虫が原因で炎症を起こしている人も少なくないそうです。痒みを通り越して、痛みを伴います。このような場合は、いきなり水虫の薬を使わず、まず炎症を鎮めることが重要だそう。「たかが水虫、されど水虫。水虫治療の奥は深いんです」とN先生。なるほどなるほど、と頷かされた取材でした。

 なるほどなるほど、と感心したくせに、実はこの数週間後、「痛みを伴うような炎症を起こした水虫患者」に自分がなってしまいました。N先生のクリニックは遠いので、仕方なく自宅近くの皮膚科へ。顕微鏡検査を行い、水虫治療の前に炎症治療をやってくれる医師だったのは、幸いでした。

 次回は「あなたのアトピーはアトピーじゃない?」をお送りします。

※N医師は、とても誠実な印象の先生で、とても好感をもちました。名前は「迷ったときの医者選び 東京」でご覧ください。

2003年発行分

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