オンフィールド音楽研究所

2007,07,04

029●ザ・カラー(The Colour)

所長●ハイスクール・ロックというか、パーティー・ロックというか、ポップ・パンクというか……そんなお気楽でポップな新人ロックバンドが次々とデビューしている昨今ではあるが。

秘書1号(以下、1号)●まずは時代認識から入りましたな。

所長●そして、それらの少年&少女向けのロックは決して嫌いではないのだが。

1号●正直に好きと言いなさい。

所長●はい、大好きです。

1号●えらく、あっさりと。しかも「大」付き。

所長●洋楽に目覚めた中学生のころと、感性がまったく変わっていないということに気づかされて、自分でも呆れてしまう。CSの洋楽番組で紹介される新人ロックバンドのアルバムは、たいてい欲しくなってしまうもんな。

1号●そう言えば、ギミーズ病と呼ばれる症状が米国で蔓延していると話題になった時期がありましたな。新しい玩具を見ればたちまち「Give me,Give me」と欲求を露わにする幼児たちを指したのが始まりのようだけど。

所長●最近アルバムを聞いた少年&少女向けロックといえば、ザ・ヴュー、サンシャイン・アンダーグラウンド、フラテリス、クラクソンズ、エンター・シカリ、ザ・フィーリング、カイザー・チーフス、アヴリル・ラヴィーンなどなど。考えてみれば、みんなUKロックだな。一番のお気に入りはザ・ヴュー。今年のベスト新人かもしれない。当コーナーで取り上げる時期を逸してしまったが。

1号●どさくさ紛れに、カナダ製のアイドルポップスも入ってる。

所長●アヴリルのことでしょ、彼女はアイドルポップスじゃないよ、立派な人妻ポップス。

1号●人妻ポップスって。

所長●しかーし! このような少年&少女向けロックバンドがもてはやされるなか、古参のロックファンを唸らせる本格派の新人バンドが、ひっそり2月にデビューしている。それが、今回とりあげるザ・カラーだ。

1号●色、ですか。何とまあ、シンプルなバンド名だこと。

所長●まったくだ。おかげで、アマゾンで「カラー」で検索すると205件もヒット。97件目にようやくザ・カラーのデビューアルバム「ビトウィーン・アース・アンド・スカイ」が出てきた。しかも、カスタマーレビューが1件もない。(7月5日現在)

1号●売れてないんだねえ。

所長●売れないバンドとは思えないんだけどねえ。ちょっと聴いてみてよ、リードトラックの「Devil's Got A Holda Me」。


http://www.youtube.com/watch?v=MkDToTJ9g8s

1号●ふうむ。若い面々なのに、けっこう渋い音だよねえ。

所長●UKからは登場してこないような、ブルージーなロックだよね。音がタイトで、荒削りで、しかしバンドとしてガチッとまとまっている。ビデオクリップでのパフォーマンスから、「余計な小細工なんざあ、しねえぞ」という、野武士のような強い意志が見え隠れする。

1号●最近の新人バンドとは明らかに毛色が違う、質実剛健タイプですな。

所長●でしょ。まあ、ロックを聴き慣れた人なら、ストーンズのような雰囲気を感じるかもしれない。レコード会社の宣伝文句にも使われているけれど。

1号●確かに、往年のストーンズの匂いはあるね。ギターの音色とメロディが。

所長●たいていの洋楽番組をチェックしている僕ではあるが、記憶が確かならば、このビデオクリップが紹介されたのは、何度も触れている伊藤政則さんのテレビ番組「ROCK CITY」だけじゃなかったかな。
http://www.tvk-yokohama.com/rockcity/

1号●それじゃあ、売れないはずだ。

所長●たった1度の放映ですごく気になって、アルバムをゲット。未完成な部分はあったけど、デビュー盤としては上々の仕上がりだったと思うよ。にもかかわらず、圧倒的にプロモーションが弱かったよね。

1号●確かに。

所長●これは勝手な邪推だけど、東芝EMIのなかで、プロモーションに専念できないような理由があったのではないか、などと推測したくなる。ちょうど、東芝が東芝EMIを手放す、と報じられた後だったし。

1号●あー。Wikipediaによれば、東芝グループからの脱却が昨年12月。EMIミュージック・ジャパンと社名変更されたのが先月、6月末。その狭間の時期にリリースされたことになりますな。

所長●「ROCK CITY」で紹介された後、東芝EMIのサイトにアクセスしても、洋楽アーティスト一覧のABCリストにThe ColourもColourも見当たらなかった。検索窓で検索したら出てきたけど、リストから抜けていたのは記憶しているよ。単なる一時的なミステイクだった可能性はあるが。

1号●うーむ。

所長●アマゾンでは、しばらくの間、新譜なのにジャケ写も掲載されていなかったからね。邪推ではあるけれど、プロモーションに身が入っていなかったと推測されても仕方ないと思うよ。

1号●なるほどなあ。

所長●まあ、そんなこんなは後の祭りとして、今回、ザ・カラーを題材に取り上げようと思って、改めて新会社EMIミュージック・ジャパンのサイトにアクセスしたら……。

1号●したら?

所長●何とまあ、6月に解散したんだって。
http://www.emimusic.jp/intl/cam/screaminnnn07/artists/a_07.htm

1号●ええっ。

所長●03年に結成して、ようやく07年2月に各国でメジャーデビュー、したと思ったら4か月後に解散を発表。まあ、ギャラの取り分でもめたとは思えないから、純粋に、音楽性の違いが主なんだろうけど。

1号●ってことは、ザ・カラーは、誰も知らないまま、売れなかったまま、消えていく運命ですか。

所長●その通り。

1号●このアルバムも、ビデオクリップも、貴重だね。

所長●その通り。

1号●将来、メンバーの誰かが売れたりしたら、伝説のバンドとして語られるかも。

所長●その通り。えっへん。

1号●偉そうだね。

所長●偉そうだよ。うっふん。

1号●でも本当に偉いのは、プロモーションに頼ることなく、ザ・カラーをめざとく見つけた伊藤政則さんだよね。

所長●その通り……伊藤政則さんには足を向けて寝られないね。くっすん。

-posted by 所長@22:02PM


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