オンフィールド音楽研究所

2007,06,10

027●リンキン・パーク(Linkin Park)

所長●今回はリンキン・パークの最新作「ミニッツ・トゥ・ミッドナイト」をプッシュ。

秘書1号(以下、1号)●まずまず売れているみたいだね。

所長●しかしながら、アマゾンの星印は本日現在、辛口の3.5点。渋い、渋い。

1号●すっかり方向転換して、既存のファンから厳しい評価がされているようですな。

所長●何しろ、ヒップホップ色をぐっと抑えた作品だからね。タワレコ新宿店では、店頭の手書きPOPに「ラップなし!」だったか「脱・ラップ!」とか大きく書かれていた。実際は、ラップが入った曲も一部あるんだけどね。

1号●あらまあ。

所長●これまでのファンなら、このPOPを見て「じゃあ、買うのやめよ」と思わせるに十分な効果をもたらしている。

1号●そういうのは「逆効果」って言うんだと思うけど。

所長●だけど、反対に惹かれて買う人もいると思うぜ。まあ、どちらかと言えば、逆効果の方に分がありそうだけど、将来のビッグな存在のためには、一度は通らないといけない関門なんだろうね。

1号●と言いますと。

所長●ハッキリ言って、ラップを前面に押し出したロックバンドじゃ、いつまでもファン層は限られてしまう。それに、もうラップ全盛の時代は終焉に向かっているような気がするのよね。

1号●根拠は。

所長●ない。僕の希望的観測。

1号●そこまで開き直られると。

所長●でも、ちびっと根拠はあるのよ。最近よく流れているブラックミュージックは、歌モノがすごく多くなってきた。NE-YO、JOE、メアリー・J・ブライジ、メイシー・グレイ、などなど。ようやく正常な状態に戻ってきたと喜んでいる次第。やっぱり、人々が音楽に望んでいるのは歌であり、メロディなんだよ。

1号●そう決めつけていいものだか。

所長●ラップを楽器の一種みたいな感じで効果的に挿入するくらいなら結構好きになれるんだけどね。実際、ラップを使ったロックでいちばん最初に好きになったのがリンキン・パークで、その次がエヴァネッセンスだった。この程度のラップだと、楽曲に厚みが出て、ラップも悪くないな、と思えてくる。J-POPでは初期のRIZEも、なかなか良かった。

1号●ラップはあくまでも、控えめにするべし、と。

所長●そうね。とくに、大したメッセージもないくせに、単なるパーティノリだけでヒップホップをやっているJ-POP連中は大嫌いだね。ファッションと身振り手振りと、語尾の「YO!」とか、上っ面だけアメリカのマネしてさあ。紅白歌合戦に出演していたヒップホップ勢の寒々しさは今でも鮮烈に覚えている。

1号●そういえば、最近は「ミュージック・ステーション」でもヒップホップ勢の存在感が薄くなってきたよね。

所長●数年後には中古レコード屋で1枚280円の棚に並ぶぞ、むふふ。

1号●あー。

所長●280円でも買わないな。100円でいいな。持ってけ、ドロボー。

1号●知らないよ、そんだけ悪口言っても。

所長●ラップを相当抑えめにしたのに加えて、今回のリンキン・パークのアルバムでは、歌詞の内容が政治問題や地球環境問題など、ぐぐっと社会派になった。悪ガキ&パンキッシュなイメージは消えて、大人な感じに変身。

1号●赤く染めたモヒカン刈りのイメージは、どこへやら。

所長●そのあたりも、既存のファンからはブーイングなんだろうね。ちょっと前までは長髪で髭ボウボウだったのに、何だよ、就職したら短髪7・3分けかよ、みたいな。

1号●今は7・3分けなんて、しないと思うけどね。

所長●優等生チックになったってことだよ。渋谷陽一さんによれば、U2化しすぎだ、との声も多いらしい。

1号●アフリカの貧困救済を訴えて、政界への影響力も増大。ノーベル賞の平和賞に近いとも言われていますな。

所長●U2のボノと同じ道を歩むとは思えないけど、少なくとも「アメリカン・イディオット」で社会派に変身したグリーン・デイと同じ道を歩み始めたのは確か。ただ、悪ガキ・ポップパンクバンドのグリーン・デイが94年のメジャーデビューから10年を要して「アメリカン・イディオット」の境地に至ったことを思えば、00年にメジャーデビューして今回がようやく3作目となるリンキン・パークの変化は、いささか激しすぎる、とも言えるけどね。

1号●ファンは、その変化に戸惑っているわけだ。

所長●そうね。でも、ミュージシャンは耐久消費財メーカーじゃないんだから、いつでもファンの望むものを作らなくちゃいけない、なんてことはないよね。この前プロモーション来日していた時のインタビューでも、従来の路線を踏襲したような楽曲は、あえてアルバム収録から切り捨てていったと言ってた。

1号●良くも悪くも、これまでのファンを裏切る確信犯的な新作を作った、ということか。

所長●そういうことになるな。でも、1つだけ失敗しているような印象があるのは、しっとり系のバラードナンバーが少なからず収録されていること。

1号●リンキン・パークのしっとりバラードか。かなり予想外の展開ですな。

所長●そうねえ。一皮むけるつもりが、二皮むけてしまいました、みたいなガックリ感は否めない。

1号●何だよ、だったら、あんたも辛口評価なんじゃないか。

所長●少なくとも、彼らの最高傑作だとは思わない。でも、バンドとしてのテンションが下がっているのに契約上渋々作らざるを得なかったような駄作アルバムではないのは確か。アルバム後半で、ちょっぴり空回りはしているけれど、CD代金分くらいは十分楽しめる。新生リンキン・パークの行く末を見守ろうではないの。

1号●ずいぶん大人な発言だこと。

-posted by 所長@11:50PM


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