009(05/11/24)テクノ+フュージョン+ロック?

デイヴィッド・バーン

タイトル「FULL OF ELEVATING PLEASURES」
Full of Elevating Pleasures

ブンブンサテライツ(Boom Boom Satellites)

http://www.bbs-net.com/

 「音楽(オトラク)生活」で初めて紹介する日本人アーティスト。川島道行(ギター、ボーカル、プログラミング担当)と中野雅之(ベース、プログラミング担当)の2人組、ブンブンサテライツの作品である。テクノとかハウスとかクラブサウンドの分野では、日本の代表的なバンドとして海外で評価が確立しているようだ。うーん、知らなかった。

 上記の公式サイトによれば、97年にヨーロッパで認められ、98年に初めてのアルバム「OUTLOUD」をリリース。以降、スローペースではあるが、2nd「UMBRA」(01年)、3rd「PHOTON」(02年)、そして2005年3月に4thアルバム「FULL OF ELEVATING PLEASURES」を発表した。遅まきながら、ボクが彼らの存在を知ったのは、2005年に入ってからである。仕事中にいつも流しているFM局「J-WAVE」で初めて最新アルバムの音を聴いて、一発でノックアウト。日本人アーティストだと知って、さらに驚いた。

 ジャンルとしては、一応テクノ系にカテゴライズされるのだろうが、そのエネルギッシュさはバリバリのパンク風ロックであり、スリリングな技巧派フュージョンにも聴こえる。まあ、別にジャンルを無理矢理に分けなくてもいいとは思うのだが、人間の心理として、「ああ、これはロックだね」とか「ジャズテイストなポップスね」などと一度は頭の中で整理しないと、どうも落ち着かない部分がある。でも、彼らの存在を、未だに整理できていないのだ。ブンブンサテライツ以外の何者でもない、と言うしかない。

 70年代の洋楽を愛する立場としては、「テクノ」という言葉に、ある種の先入観がある。思い出すのはYMOであり、クラフトワークであり、タンジェリンドリームであり、ソフトマシーンであり、といった具合で、いずれも嫌いではないが、シンセのピコピコ音が目立つ少し薄っぺらなサウンド、BGMとして流すには格好のアンビエントミュージック(環境音楽)風、陰気で無表情な宇宙的サウンド、などの印象も漂う。だが、ブンブンの作品は攻撃的であり、繊細で深みもあり、たぶん「テクノ」のイメージをぶちこわすことだろう。ロックファンからフリージャズファンまで魅了する包容力もある。

 まったく不公平だと思うのだが、邦楽のCDには、アーティストのプロフィールや活動内容などを紹介したライナーノーツがつかない。だから、今も彼らのことはよくわからない。もちろん、上記の公式サイトで、一応のプロフィールは知ることができる。かのアンダーワールドと一緒にツアーをしたこと、ボクの最近のお気に入りで、この「音楽(オトラク)生活」でも紹介しようと思いながら見送ってしまったMOBY(通称・テクノ坊主)とツアーに出たこともあること、フジロックにもたびたび出演していること、そして、これは伝え聞きレベルだが、あの矢野顕子さんも大変なお気に入りだということ……。

 まあ、これだけ紹介すれば「どうやら、凄いバンドらしい」ということくらいは伝わると思うから、後は、アルバムを聴いてもらうしかないのだが、それにしても、これだけの強力なインパクトを持ったバンドが日本人2人組だというのは、とても心強い。いま、欧米圏で知られている日本人ミュージシャンといえば、坂本龍一くらいだろうが、おそらく、これに続く存在になっていくのだろう。

 1作目から最新の4作目まで聴いたが、お薦めは1作目の「OUTLOUD」と4作目の「FULL OF ELEVATING PLEASURES」。とくに今回紹介したい4作目は、MOBYの影響も受けたのか、ゴスペル風のボーカルを採り入れるなど表現力が豊かになっていて、成長が感じられる。

 ハマる人は、相当ハマるサウンド。聴き始めたらしばらくは癖になってしまう麻薬のような音楽だ。渋滞のない高速道路で深夜に大音量でかけながら走ると、気持ちよすぎて危ない。久々に、音楽でトランス感覚を味わわせてもらった。