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002(05/05/01)あなた、本当に18歳?

ジョニー・ラング

タイトル「ワンダー・ディス・ワールド」
Wander This World

ジョニー・ラング(Jonny Lang)

http://www.universal-music.co.jp/u-pop/artist/jonny_lang/

 半年に一度くらい、無性にTOWER RECORDに行きたくなることがある。全然知らないミュージシャンの掘り出し物を見つけに行くのが目的だ。できるだけ客の少ない平日の昼間に店を訪れ、視聴コーナーで片っ端に聴きまくる。その日はRock/Popsのフロアでは今イチ、ピンと来るCDが見つからず、気分転換にBluesのコーナーに立ち寄ってみたのだが、そこで見つけたのがこの作品だった。3、4年ほど前のことだったと記憶していたが、リリースは98年10月だから、その頃に購入したのかもしれない。人間の記憶なんて、あやふやだ。

 まず1曲目の弾き出しと歌い出しを耳にして、そのサウンドにすぐ魅せられてしまった。くわえ煙草でダルそうにギターをかき鳴らすキース・リチャーズの姿が、ふっと目に浮かんだ(ジョニー・ラング自身は禁煙派のようだが)。声はブルースにピッタリのしゃがれ声、メロディラインも適度な泣かせどころがあって、なかなかイカしてる。ブルースとロックの混ざり具合が、ちょうど心地いい感じなのだ。ストーンズやクラプトンあたりが好きで、昨今のブルースムーブメントにも少しばかり血が騒ぐ人なら、買って間違いなしと太鼓判を押したい。

 後でわかったことだが、彼は1981年生まれで、このアルバムを発表したのが18歳だというから驚かされた。さらに驚いたのは、本作が2枚目で、デビューは16歳の誕生日を迎える直前だったという。若い頃からブルースの重鎮たちと共演し、早くから才能を認められてのデビューだったようだ。

 若くしてデビューというと、最近ではR&Bの分野でジョス・ストーンという女性シンガー(16歳でデビュー)も注目を集めていて、先のグラミー賞授賞式ではジャニス・ジョップリンの曲を披露してくれたけど、一緒に歌っていたメリッサ・エスリッジと比べるとまだ青さがにじみ出ていたのは否めなかった。ジョニー・ラングはと言えば、無理に背伸びしたような感じもなく、堂々とした歌いっぷりが板についていて、安心して楽しめる。

 彼のデビュー当時の状況は知らないが、デビューアルバム「ライ・トゥ・ミー」がリリースされた97年頃は、若い身空でデビューした早熟なブルースミュージシャンとして、日本でもそれなりに注目を浴びたようだ。ただそれは、一種キワモノ的な関心でもあったと思う。そんなプロフィール情報も知らず、先入観なしに音楽そのものの魅力から彼に興味を抱くことができた僕は、とてもラッキーだった。

 話題性も手伝ってブルースアルバムとしては上々の100万枚セールスを記録したという1stアルバム「ライ・トゥ・ミー」、2004年に発売された3rdアルバム「ロング・タイム・カミング 」も聴いてみたが、やはり本作が頭一つ抜きん出ている印象がする。長い目で成長を見守りたいミュージシャンだ。