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支援費制度導入直前、素朴な3つの疑問

 この原稿執筆している時点(2月下旬)でも未だ4月からの実際のサービス量がきちんと見えてこない、少々心細い現状ではあります。障害をもつ読者の皆さんで、支援費制度に移行するサービスの申請手続きを済ませた方のお手元には、受給者証が届いたでしょうか。そこに決定された内容に、納得はいきましたか。連載の最終テーマとして、制度導入直前の素朴な疑問3つについてまとめてみました。

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●03

epilogue

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【疑問レポート・1】
●自己決定できる仕組みとはいうが……それが難しい人や子どもは?

「障害をもつ人自らがサービスを選択し……」というのが、支援費制度のいわば看板文句だ。サービスを提供する事業者と利用者(障害者)が対等な立場で契約を交わす、それにより事業者側間に競争が生まれサービスの質が向上する、と期待されている。そうなればたしかによいが、そこに到るはじめの一歩が、市町村窓口へのサービス申請と市町村職員による聴き取り作業。現状ではその辺りでさえ、少々心もとない実態があるようだ。

「ビックリしたの。『申請には、親だけ窓口に来てください』と言われて」と語るのは、岩手県盛岡市の長葭千恵子さん。同居する32歳の娘・安紀子さんには、一見した感じよりは重い知的障害がある。

「子ども(障害者・児)が同席すると落ち着いて話を聞けないし、本人に聞いてもどうせわからない――多分、そういうことでしょ。でもね、これまでだってそうだけど、まして今回の支援費制度では本人の意思の尊重や本人支援がきちんと謳われた。なのに、本人が同席せずにどうやって支援費の申請や認定ができるの?」

 本人が同席すれば、話せないなら話せないなりの大変さもわかる。千恵子さんが安紀子さんとともに市役所へ行くと、一般窓口で数人の親の聴き取りが行なわれていた。

「これは違うでしょ、じっくり聞くべき話だし、プライバシーもあるし」と話し、別室へ。聴き取りでは、「箸を持てますか」と尋ねられ、「持てます」と答えると「じゃあ、食事は自分で食べられますね」と言われ、再び千恵子さんが「それは違うでしょう」と憤慨し……。

「お箸が持てても、食事を自分で食べられるわけではないし、いつもの場所にならバスで一人で行けても、一般的な移動が自在にできるわけじゃありません――そういう事情をこと細かに話して、ガイドヘルパーやホームヘルパーが確実に必要だと説明しました。2時間ぐらいかかったかしら」

 地域でさまざまなボランティア活動に携わり、県の障害者110番相談室の専門相談員を務め、手をつなぐ育成会の委員でもある千恵子さんは、「私はどんどん相手に言える性格だから、まだいい。でも、それができない人はどうなるの?」と、自分以外の親や子どもたちのことを心配している。

 同じことを逆の立場から心配するのが、兵庫県尼崎市の久保雅子さん。「1年先の暮らしを予約するなんて、すごく難しいことです」と言う彼女は、市の福祉事務所の嘱託職員。支援費の聴き取り調査も担当する。養護学校高校2年の優太さんを頭に4児の母でもある。

「障害児(者)の主たる介護者である家族、ことにお母ちゃんというのは日常生活に埋没していて、日々の暮らしの大変さや、いろいろ工夫している介護の中身を第三者に言葉で伝えるなんて、思いもよらない。それほど日々の介護の中に入り込んでいるんです。それでも子どもの障害や介護ニーズを伝えるために、初対面の人間(聴き取り員)相手に、『うちの子、どうしてもパンツの中でしかウンチができない』といった話まで必死に伝えてくれようとするんです。聴き取り調査というのは、それを受ける本人や家族にとって、結構しんどさがあります」

  そんな親たちから最大限話を聞き出し、本人の障害と周囲の介護力を明らかにして申請の形に整えるのが、久保さんたちの仕事だ。

「そうして出した申請量が市から全部は認められなかった場合、不服申し立てができることも伝えています」と久保さんは言う。

 障害者の外出を支援するガイドヘルパーは、従来は18歳以上しか利用できなかったが、今後は子どもでも使えるようになった。

「『だったら、(障害のある)上の子をガイヘルさんに連れ出してもらって、その間、普段構ってやれない下の(健常者の)子を重点的に育児したい』という声も、お母さんからは出ています。それは自然な親の気持ちだけど、『支援費制度は、あくまで本人が主体』とお互いに確認することも心がけているんです」と久保さんは言う。

  社会参加のため、障害をもつ子はガイドヘルパーと外出。その副産物として、日ごろ手薄になる他の子の世話を、お母さんが見られる。たとえ結果は同じでも、本人主体という前提を、介護する人と調査員の間で再確認したいというのだ。

「他の子を面倒みたいから、障害のある子はガイヘルで外出を、と考えてしまうと、どんどん本人主体から遠ざかってしまいそう。本人が言葉をしゃべれない場合にこそ、そのへんを大切にしたいんです」

 自己決定の難しい利用者のサービス選択・契約には、成年後見制度や福祉サービス利用援助事業を利用する方法もある。ただ、「制度はあっても、現場の意識がまだまだ」という溜息も現場からは聞こえる。東京都東久留米市で介護コーディネーターを務める中村修子さんは、最近もそれを痛感した。

「知的障害者の女性が赤ちゃんを生んだので、ヘルパー申請などで障害福祉課を訪れたんです。ところが、彼女に同行した地域福祉権利擁護事業の担当者に向かって、障害福祉課長は『帰れ』と言い、障害者本人には『子どもを産むまえに病気を治せ』、付き添いの両親には『両親がまず世話をみるべき』と言い放つ始末でした」

  本人主体の意識改革やシステムづくりは、こと重い身体障害者や知的障害者、精神障害者の場合、日本社会では始まったばかり。これから育ててゆく時代なのだ。

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※03年2月執筆時点の原稿をそのまま掲載しています。
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