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支援費制度で知的障害者は親元から自立し
地域で安心して暮らせるのか、今のままでは不安です

話し手・大門恵子さん 聞き手・加藤薫

●これまでの自薦ヘルパーの力をなぜ評価しないのか

――娘の香織さんは、現在18歳。「知的障害があっても、地域のみんなと学びたい」と、地元の小・中学校に通ってこられました。現在は在宅生活ですね。従来の措置制度、そして支援費制度について、お母さんはどう見ておられますか。

大門:支援費制度については、不安と不満がいっぱいです。

 娘はニコニコしていて一見何でもできそうですが、食事もトイレもお風呂も全介助に近い状態です。眼振があり足元がよく見えないので、階段も踏み外しがち。突然吐いたり、生理痛で真っ青になって倒れたりもします。「一人でいられる」時間が、娘にはないのです。

 彼女は自分ではほとんど話せませんが、他人の会話内容はかなり理解できます。だから友だちもできますが、傷つくことも多い。よほど親しくないと、自分の欲求はしまい込みガマンしてしまいます。

  私たち両親の望みは、そんな娘が地域で自然体で暮らしてゆけること。そのために地域の普通校へ通うことにこだわってきました。養護学校を否定するのではありませんが、養護学校に通っていたら、地域の子たちは娘のことを知らないまま。その点、小・中学校と地域の普通校に通った娘は、町を歩いていれば誰かしらに声をかけてもらえます。放課後、うちは近所の子どもたちのたまり場でしたよ。

 そんな環境だったからでしょう、娘の同級生の中には、トイレ介助も含めて担ってくれる子がいるんです。中学卒業後も、自薦ヘルパーとして区にちゃんと登録し、月に数回介助に入ってくれています。

 今回の支援費制度でまず批判したい点は、こういう子たちの力をなぜ評価しないのかということです。支援費制度では介護に入る人にヘルパー資格を問うそうですが、この子たちは資格はなくても娘のことは一番よく知っています。小・中と娘と一緒に過ごしてきた中で、介助を覚えてきたのですから。娘は親しい人にしか自分の要求を伝えられないので、資格だけのヘルパーなんて無意味なのです。

  支援費制度でさらに批判すべきは、居宅介護の4類型のおかしさです。例えばうちの娘が吐いたら、彼女の顔や身体を拭いてお風呂に入れ、服を洗濯し、床を掃除しなければなりません。こういう一連の仕事を、身体介護・家事・移動のどの類型に振り分けろというのでしょう。知的障害者の生活や介護の現場を全くわかっていない、おかしな類型だと思います。

  しかも4類型のうち、いろんな仕事が頼めて、しかも資格がない介助人でも当面入れる唯一の類型である「日常生活支援」は、知的障害者は使えないそうです。これは娘には大変なことです。今のところ娘は、週33時間の自薦ヘルパー派遣と、月20時間の緊急介護人派遣制度(世田谷区の制度)を利用しています。私が働いて留守の5〜6時間の介護が、娘にはどうしても必要なので、私たち親に毎月7万数千円の費用負担があり苦しいながらも、これまで介助を入れてきました。しかし今後は、どうなってしまうのでしょうか。

 しかも、これまで区に直接登録して介助に入っていた子たちが、たとえ今後も介助に入り続けられたとしても、問題は残ります。今後、区が福祉事業から撤退した場合、民間事業者に登録し直して介助に入らなければならないのですが、するとコミッションを引かれて時給も相当下がりそうなのです。

  ですから私たちにとっては、支援費制度は問題だらけです。どんどん地域の人とつながって、娘が生きられる関係性を紡いでいこうと思っている矢先に、より低時給になり資格まで問われては、地域の人に声もかけづらくなります。親元から自立させたくても不安で、「結局は施設に入るしかないのか」という不安が頭をよぎります。

  ことに知的障害者にとっては、従来の自薦ヘルパーのほうがずっと使いやすい制度です。介助者の生活もきちっと保障でき、障害者本人の生活も保障される、そんな制度をなぜ守れないのでしょうか。

  言いたいことは沢山あるのに、コミュニケーションがとれない障害者の「声なき声」を、きちんと汲んだ制度にしてほしいものです。

(大門恵子さんのお話は以上です)

大門恵子(だいもん・けいこ)さん
プロフィール●知的障害をもつ長女の香織さんが、地域で普通に暮らしてゆけることを望むお母さん。自宅のある東京都世田谷区で、障害児の普通学級進学を求めて活動している「こぶたの学校第4日曜日の会」のメンバーでもある。香織さんの中学時代の級友がつくった楽しいホームページはhttp://homepage2.nifty.com/rinkochan/index.html

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※02年12月執筆時点の原稿をそのまま掲載しています。
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