File No.02
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秋風の恋
(イングランド・ダン&ジョン・フォード)

NIGHTS ARE FOREVER
(ENGLAND DAN & JOHN FORD COLEY)
1976年作品

「秋風の恋」ジャケ写

 

青春ポップスの隠れ名盤
ドラマ主題歌やCMタイアップなら再ヒット間違いなし。

 最近では2人組ユニットで「ゆず」「19」「コブクロ」などシンプルなバンド名をつけるのが主流になった。漫才コンビでも同じ傾向が見られるが、おそらくプロモーション上、長ったらしいアーティスト名が避けられる面もあるのだろう。そんなことに無頓着だった昔は、2人の名前を連ねただけのアーティスト名が多かった。

 例えば、再結成が話題になったサイモン&ガーファンクルをはじめ、ピンキーとフェラス、ヴィグラスとオズボーン、ヘドバとダビデ、ビヨルン&ベニー(ABBAの前身)、ロギンス&メッシーナ、キャプテン&テニール、マリリン・マックー&ビリー・デイビス・ジュニアなどは70年代ポップスを知る人間にはおなじみだ。ついでに言えば、ヒデとロザンナ、じゅんとネネ、ベッツィ&クリス、リンリン・ランラン……と、歌謡曲の世界にも影響は浸透。現代でもChage&Askaにその残り香が漂う(苦笑)。

 だが、ここで忘れちゃいけないのが、イングランド・ダン&ジョン・フォード(以下、E&J)である。テキサス州出身のフォーク&ポップス系デュオで、1971年にデビュー。「シーモンの涙」が日本だけで72年10月頃にヒットし、アメリカよりも先に売れた。その後、彼らの名前を耳にすることはしばらくなかったが、レコード会社を移籍した直後にリリースした「秋風の恋」が全米2位を記録する大ヒットとなり、アメリカでもようやく知名度が急上昇したのだった。この曲は、日本でも76年11月頃に大ヒットし、深夜ラジオなどでよく流れていた。当時、洋楽ポップスに首ったけだった中高生たちには、胸キュンものの作品だと思う。

 今回紹介するアルバムは、大ヒットしたタイトルナンバー「秋風の恋」を収めた作品で、E&Jの出世作である。硬軟織り交ぜたポップスナンバー11曲は、いずれも良質で粒ぞろい。「秋風の恋」以外にもシングルカットされた記憶があるのだが、今改めて聴いてみると、スマッシュヒットしそうな曲がいくつもあり、どれがカットされたのか特定できないほどだ。

 「シーモンの涙」「秋風の恋」の印象が強いため、E&Jは、シングル曲偏重のポップスバンドのように誤解されがちだ。このため、彼らを懐かしむ人はベスト盤に目が向くのだろうが、レコード会社を2社渡り歩いたこともあって、これまで発売されたベスト盤にはいずれも初期のヒット曲「シーモンの涙」は収録されていない。どうせなら、捨て曲ナシの充実度を誇る当アルバムをぜひ入手していただきたいと思う。

 説明が遅れたが、イングランド・ダンは本名をダン・シールズという。そう、同時期に注目を集めたデュオで「想い出のサマーブリーズ」がヒットしたシールズ&クロフツの、ジム・シールズとは兄弟である。今回お薦めするアルバムのなかには、シールズ&クロフツを思わせるような、ちょっぴり内省的な曲(「ザ・プリズナー」)もあり、ジム・シールズフィドルの演奏でも参加している。ちなみに、2005年現在では、シールズ兄弟で仲良く同じステージに立っているようだ。落ち着くところに落ち着いたと言うべきなのか……。

 E&Jは、この後3枚のアルバム(下記参照)を発表し、1979年には単独での来日公演を果たしたが(72年にはスリー・ドッグ・ナイトの前座で来日)、80年頃には解散してしまったらしい。イングランド・ダンは本名のダン・シールズに戻って80年のアルバム「ストーンズ」でソロデビューを果たし、カントリー&ウエスタンの歌手としてアメリカでの人気は維持したようだが、日本では疎遠なミュージシャンになってしまった。

 彼らの全盛期から30年がたち、シングルヒットは人々の記憶に刻まれているが、今はベスト盤に走る人が多いだろうから、オリジナルアルバムは影が薄い。日本国内盤CDは、新譜での入手が不可能になった。そこで、「隠れ名盤 世界遺産」に登録することとした。

今でも鑑賞に耐える ★★★★★
歴史的な価値がある ★★★
レアな貴重盤(入手が困難) ★★★

●この作品を手に入れるには……ビルボード2位のシングルヒットが収められた作品とあって、輸入盤(US盤)なら入手は可能。国内盤CDは2000年に発売されたものが在庫切れとなっており、中古市場が頼りになる。



オリジナルアルバムリスト

彼らのディスコグラフィー情報がネット上でほとんど見つからないので、僕が知っている範囲でリストアップしてみました。

(A&Mレーベル時代)
●England Dan And John Ford Coley(邦題:愛は遥かに) ※71年デビュー盤
●Fables (邦題:シーモンの涙) ※72年(日本ではこれがデビュー盤。来日記念で上記アルバムが発売に)
(Big Treeレーベル時代)
●Night Are Forever(邦題:秋風の恋) ※76年
●Dowdy Ferry Road(邦題:二人のフェリー・ロード) ※77年
●Some Things Don't Come Easy(邦題:愛の旅立ち) ※78年
●Dr. Heckle And Mr. Jive(邦題:Dr.ヘッケル&Mr.ジャイヴ)

追記(9月19日)

上記アルバムリストのA&Mレーベル時代について、当web読者から貴重な情報をいただきました。ありがとうございました。

 
【世界遺産登録 05年06月13日】
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