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●取材ノートから●(30) 2002年12月1日号

2000-01発行分

2002年発行分

ネット取材の可能性と限界は?

 パソコンやインターネットの普及は、ライターの仕事に大きな変化をもたらしました。その一つは取材という作業です。

 フリーランスになった1995年当時、パソコンは単なる「大きなワープロ」みたいなものでしたが、ネット環境が整い始めた2000年頃からは、調べものの多くをインターネットに依存するようになりました。ネット上で調べがつく内容は限られますが、少なくとも下調べ程度には十分使えます。もっとも、過去にネット上の情報をそのまま引用して誤報をした新聞記者もいましたから、信頼性のあるサイトかどうか嗅ぎ分ける力が必要。掲示板のやりとりをネタに使った作家がバッシングされている現状もあり、過大な期待はできません。

 とはいえ、企業や団体、官庁を取材する際、主だった情報は公式サイトに掲載されていたりしますから、取材を申し込んでも「それについては、このwebページをご覧ください」と言われることもしばしば。「メールで回答させていただきます」という対応も、最近増えてきた気がします。

 困ってしまうのは、個人への取材でメールを使うような場合です。質問事項を送り、回答していただくという方法になりますが、質問内容が誤解を招いたり、ちょっとした言い回しで機嫌を損ねたりする場合があり、これが結構トラブルの元になりやすい。掲示板での会話が時折荒れてしまうのと、基本的には同じ構図です。メールのやりとりは便利といえば便利なのですが、そこで得られる情報量はごくわずか。できるだけ電話で補足取材をしたいところですが、できない場合はストレスがたまります。

 そんな経験を通して、訪問取材の重要性を当たり前のように再認識しているわけですが、以前は気づかなかったけれど、訪問取材には情報がいっぱい詰まっているんですね。訪問したときの受け入れられ方、質問を投げかけた時の一瞬の表情の変化、ちょっとした言葉のニュアンスも貴重な情報の一つ。訪問先で並べられ飾られた品々から、人となりや企業体質に関する情報が得られることもある。取材は五感を使った仕事であることを、改めて再認識させられます。

 五感を使った作業である「取材」。では、五感が四感、三感になったらどうなるのだろう、などと空想することがあります。障害者や高齢者への取材を重ねてきたから、そんなことを考えるのかもしれませんが。

 身体のどこかに障害を抱えた場合、どのような取材方法があるのでしょう。車いす生活になるくらいであれば、ある程度はカバーできるかもしれない。物理的に行けないところは出てきますが、まあ、無理ではないでしょう。乙武くんもスポーツライターとして頑張ってはいます。視力を失ったらどうするか。これは音声読み上げソフトを使いこなし、人の生の声を聴くことで、まずまずカバーできますが、情景模写を伴うようなルポルタージュものは厳しそう。

 では聴覚や発声の機能を失った場合はどうか。これはかなり厳しくなってきます。文字でのコミュニケーションは、前述のようなメールのやりとりでの齟齬を生みやすいからです。キーボードを押して機械に発声させたり、先方の声を素早くテキスト化するソフトを活用する方法もありますが、どうもまどろっこしそう。自分の声をサンプリングしておき、機械に組み込んでおけば少しマシかもしれません。

 メールのやりとりという取材手段が少しずつ増えてきて、こんなことを考え始めたのでした。ま、聴覚や発声の機能を失った場合は、「初めてのろうあライター」として売り出した方がいいのかもしれません。まだ先駆者はいないようですから。

2003年発行分

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