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●ネット散歩道●(8) 2002年11月1日号

2000-01発行分

2002年発行分

多言語国家・ニッポン


(トップページの画像は、コラム掲載当時のものです)

全国方言WEB ほべりぐ
http://hougen.atok.com/

 日本語変換ソフト「ATOK」やワープロソフト「一太郎」でおなじみのジャストシステムが発行している、方言をテーマとするサイトです。同社では「話し言葉関西」モードを手始めに、方言に対応した日本語変換ソフトの開発に取り組んでいますが、おそらく第二弾、第三弾と続編を予定しているのでしょう、その市場調査と単語の収集を目的としたサイトと思われます。

 ここでは、馴染みの深い各地の方言をサイト閲覧者から応募してもらったり、微妙な表現の違いについて意見を募ったりと、インターネットならではの双方向なコンテンツづくりを進めています。ま、商用目的のサイトという意味では、僕がわざわざ紹介することもないのですが、テレビの全国放送ではすっかり消えてしまった感のある方言が、ネットというメディアで脚光を浴びている点が、なかなか愉快だなと思うのです。

 一般の人が「方言で変換されたらいいのになあ」と思うことは案外少ないかもしれませんが、僕のような商売をしている人間には重大な問題。多くの場合、取材を終えてテープ(最近はMDですが)を持ち帰ると、一度テープの内容を文字に起こすという面倒な作業をします。テープ起こしとか、テープリライトと呼ばれる作業で、お金のある出版社の編集部などは専門業者に一時間1万弱〜数万円で外注したりしていますが、原資の少ないフリーライターなんぞは自分でシコシコするしかない。

 で、困ってしまうのが方言の変換です。とくに、言葉のニュアンスをそのまま残したいルポルタージュ系の仕事なんかでは、語られた内容を忠実に文字にしたいわけですが、この変換がもう、大変なんです。よく意味のわからない言葉もあったりますから、こういうサイトや日本語変換ソフトがあるととても助かる。

 ただ、方言って微妙に書き起こし方が違っているから、文字にするのは難しいよね。同じ関西弁なのに、書き手によっては「ほな、いきますわ」と書く人もいれば、「ほな、行きますワ」と書く人もいる。標準語と違って文字化する時のルールが一定ではないですから、方言対応の日本語変換ソフトの開発も大変でしょう。

 こんな話をしながら思い出したことがあります。会社員時代に大阪から東京の事務所に転勤した当時、東京の事務所なのに関東人はたった1人だったので、関西人4人くらいが寄ってたかって、無理矢理に関西弁講座を開いたことがありました。「関西弁っちゅうのは、一文字の言葉の場合に母音を伸ばすんが特徴なんや」と言いつつ、リーダーシップを買って出た女性は事例として「血ィ」「酢ゥ」「木ィ」「蚊ァ」「毛ェ」「戸ォ」などを連発し始めて笑いに包まれたのですが、これも「血」「酢」「木」「蚊」「毛」「戸」と表記してもよさそうですから、これまた難しい。

 数年前にジャストシステムの方を取材したことがあったことも思い出しました。僕のテープレコーダーを指さして、「こういうインタビューも、近い将来、音声データを文字にささっと変換できるようになりますよ」などと担当者氏。実際、そういうシステムがその後世の中に登場したようですが、話し言葉独特の複雑さもあって、思ったほどの効果が得られない、と聞いたことがあります。まして関西弁、津軽弁、博多弁の人などが集まった座談会などは、今のところお手上げでしょうね。

 さてさて気になるのは、このような方言対応の日本語変換ソフトを開発して、ジャストシステムさんとしては商売につながるのかどうか。そのへんを、いつか聞いてみたい気がします。「果たして儲かり真っ赤?」「ぼちぼち伝な」……おっと、僕の変換ソフトは古いATOKでしたね。

関連リンク●[ The Beatles in Kansai-ben ]

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