「コラム」トップへ
●取材ノートから●(28) 2002年9月1日号

2000-01発行分

2002年発行分

車いすマップから車いす入りマップへ

 「車いすマップ」というモノをご存知でしょうか。車いす利用者自身が、車いすでも使える施設や交通機関などを調べ上げ、手作りでマップ形式にまとめた冊子です。1973年頃から、一部の障害者団体や障害者運動に関わる人たちの手によって作られたのが始まりのようです。

 ボクが「車いすマップ」を知ったのは、今から8年ほど前だったでしょうか。新聞の家庭欄に「障害者らが車いすマップを作成」「これで外出も気軽に」などの見出しで、時折紹介されることがあり、障害者福祉に関心が芽生えてきた時期だったこともあって、それらを取り寄せてみたことがありました。

 でも、送られてきた中身を見、正直言って落胆させられました。お世辞にも、出来がいいとは思えなかったのです。限られた地域の、限られた施設の情報しかなく、「これで外出も気軽にできる」というイメージとはほど遠いものだったのです。

 車いすマップについては、実際に3年ほど前にいろいろ取材したことがありましたが、その課程でいくつかの課題が見えてきました。まず、掲載対象地域の狭さ。これは、主な発行元が地方自治体や地域の社会福祉団体であるために、自分たちの地域のことしか調べていないわけです。自治体が発行する車いすマップには、民間施設が掲載されにくいという問題もありました。公民館とか体育館とか、公の施設は掲載されているのに、車いすで利用しやすいスーパーマーケットは載っていなかったりする。全く、ヘンな話です。

 発行部数が少なく、必要とする人に行き渡らないという問題や、情報更新ができていなくて掲載情報が古いままになっている、という問題もありました。また、調べる人によって基準がまちまちで、障害の状況によっては使い物にならない場合があるということもわかってきました。

 これらの課題のうち、多くは、車いすマップを商売ベースに乗せることで解決できるように思えました。一般の地図やガイド本のなかに、さりげなくバリアフリー情報が掲載されるようになれば、地域の狭さも解消でき、発行部数の少なさや情報の陳腐化も避けられる。障害者ばかりでなく、高齢者もどんどん外へ出ていくようになるのだから、そんな商品があってもいいのに、と。

 あれから3年近くたって、実際にそのような商品が出てきたことを知ったのは、数ヶ月前のことでした。昭文社から発行されている「街の達人」シリーズがそれです。視力が衰えた高齢者に好評を博している「字が大きい地図」をさらに発展させたもので、地図のなかにバリアフリー情報が掲載されています。第一弾は京阪神版で、ここではバリアフリー駅の表示だけでしたが、第二弾の金沢版(今年5月発行)では、車いすでも利用できる公共施設や文化・スポーツ施設、商業施設などに車いすマークを表示。今後は、金沢版と同様の方法で、主要都市の地図を出していくとのことでした。

 この朗報は、日本で最大部数を誇っていると思われる情報誌「JAF Mate」で連載を担当している超ミニコラム「バリアフリーノート」用にさっそく使いましたが、本当に大きな進化だと思いますね。まだまだ改善の余地はあるものの、ようやくまともに使える「車いす情報入りマップ」が出てきたのですから。

 思えば、昔ながらの「車いすマップ」は、「使う」ことよりも「作る」ことに目的があった気がします。障害者自身が社会に出ていける範囲を自分で確認するためのものとして、あるいはマップづくりを通じて施設の改善を呼びかけるため、あるいはボランティア団体の親睦を深めるためだったりもする。

 でも時代は確実に変わりました。福祉を福祉の範疇だけで考えていては、いつまでたっても、一部の心ある人による一部の人のための「特別な行い」に終始してしまう。福祉に関わる人も、経済活動を単純に敵視するのではなく、うまく折り合いをつけながら力を合わせていく時代に入ったのではないでしょうか。

「街の達人 でっか字金沢便利情報地図」(昭文社)

2003年発行分

BEFORE← →NEXT
当ホームページに掲載されている原稿の無許可転載・転用を禁止します。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約によって保護を受けています。
Copyright 2002-2004 tomoyasu tateno. All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission.