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●取材ノートから●(27) 2002年8月1日号
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ニセモノ温泉論議にびっくり 6/19頃の朝日新聞に、「温泉の『湯』5つ星評価 〜協会が新制度導入〜」という見出しの小さな記事が掲載されていました。財団法人日本温泉協会が平成14年度の総会で、お湯の評価制度導入を決定したというのが、記事の主な内容です。一見すると、温泉の効能の高さを5つ星評価しようという試みにも見えてしまうわけですが、実のところは温泉の効能以前の問題。わかりやすく言えば、「そもそも(ホンモノの)温泉といえるかどうか」を5つ星評価でランク分けしようというものなのですね。 日本の温泉が直面している課題を知ったのは、雑誌「通販生活(2002年夏号)」での取材を通じてでした。取材のキッカケとなったのは、昨年末に出版された温泉学者・松田忠徳さん著作の『温泉教授の温泉ゼミナール』(光文社新書)。この本を読み進めていくと、今の日本の温泉がいかに危機的状況にさらされているかが、よくわかります。中には、思わず身震いするような指摘もあったりして、疑わしい温泉には二度と入りたくないと思ってしまいます。松田さんは、春頃に全国紙各紙にも登場しましたので、記事を読んだことがある方も多いことでしょう。 詳しくは同書や同雑誌をご覧いただきたいところですが、主には循環濾過装置を使った温泉水の使い回しが指摘されています。源泉が枯渇してお湯の湧出量が減っている一方で、旅館などの温泉浴槽は最近四半世紀で巨大化・増加する傾向にあったわけですから、使える源泉の量が相対的に少なくなっているのは明らか。そこで、銭湯やプールなどにも使われている循環濾過装置を使って、限りある温泉水を、汚れを取り除きつつ&消毒もしつつ、何日も使い回すわけですね。銭湯は毎日入れ替えますが、温泉はその限りではありません。 熱烈な温泉ファンにとって、この事実は大きな問題です。温泉の効能というのは、時間がたつとともに薄れていくわけですから、何日も使い回しで使っている温泉水は、もはやただのお湯に過ぎません。しかも水道水を遙かに超えるような過度な塩素消毒がされている例もあって、皮膚に与える影響が懸念されます。 ただ、熱烈な温泉ファンでもない僕がいちばん驚いたのは、温泉のヌルい定義でした。現在の法律では、(1)温泉成分がたった一つでも基準量を満たせば温泉です。そして(2)温泉成分が基準量以上なくても地下から湧き出た水が摂氏25度以上あれば温泉です。さらにいえば、(3)液体ではなく気体(ガス)でもいい。しかもこれらの定義は浴槽水ではなく源泉が対象。つまり、源泉を浴槽にひいてきて、水道水や沸かし湯で薄めたって、温泉だと言い張ることができるわけですね。例えば東京某市では、遠くからタンクローリーで運んできた源泉を薄めて使っている施設が、堂々と温泉を名乗っています。 松田さんは、そんな温泉の現状に、憤懣やるかたない様子でした。医学者のなかには、胃腸病に効くのは●●温泉、●●温泉はリウマチにいい、などと解説したりしていますが、これらはいずれも源泉のお湯の成分だけを見て言っているお話だそう。実際の旅館の浴槽がどうなっているかなど、何も知らないで発言しているのだと苦言を呈していました。 僕は「ブームの遺産」を執筆テーマのライフワークの一つと考えていますが、これも温泉ブームがもたらした負の遺産といえるのでしょう。今度皆さんも、「自称・温泉」に行ったら、脱衣場に掲示されている温泉分析表をしげしげと見てください。源泉の湧出地住所と、旅館の住所が全然違っていたり……するかもしれませんよ。 ここで書いたことは、温泉ファンの間ではよく知られた話題ですが、一般の方はまさか温泉の現状がこうだったとはご存じないはず。そこで、冒頭でふれたような温泉の5つ星表示制度が、情報開示の一環として登場してくるわけですね。ただ、ここでも一つ注釈を加えておかねばなりません。この表示制度は今のところ、あくまでも温泉経営者側の自主参加です。すなわち、自分の施設のお湯に自信がない経営者は、最初から表示制度に参加しなくてもいいわけです。 自主参加であるうちは、星がたったの1つだけの施設であっても、褒めてあげたほうがいいのでしょうね。それだけ、お客に対して情報開示をしたいと考えている、優良な経営者が経営している温泉だ、ということなのですから。 |
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