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●ネット散歩道●(6) 2002年8月1日号

2000-01発行分

2002年発行分

私たちの顔はどこへ行くのか


(トップページの画像は、コラム掲載当時のものです)

=our face=KenKitanoWebSite
http://www.ourface.com/

 写真家・北野謙さんの個人サイトで、自ら取り組んでいるプロジェクト「our face」を紹介しています。「our face」は、サラリーマン、雑誌編集者、サーファー、キャバクラ嬢など特定の仕事に携わる人々、原宿に集まってきた少女たちのように特定の地域に吸い寄せられる人々など、「ある種の集団」の肖像写真を何枚も重ね焼きし、「集団特有の顔」を浮かび上がらせようという、実にユニークなプロジェクトです。

 僕が最初に、人間の顔の不思議に気づいたのは、ダウン症の人たち。社会問題に関心のかけらもなかった20代半ばの頃、ダウン症の人を町中で見かけるたびに「あれ、この顔、どこかで見たことあるなあ」と思い、「同じ顔をした大家族がいるのか」などと真剣に考えてしまって、後で恥ずかしい思いをしたことがありました。

 いわゆる環境保護運動をしている人たちの顔が共通しているのも、気になったことがあります。どうして男はひげを生やし、女は化粧をしないのか。理由がわからないでもありませんでしたが、その画一性にうんざりしたことがあります。結局、自分も今では「同類」になってしまったのかもしれませんが……。

 「ある種の集団」が同じような顔をしているなあ、という印象は誰でも持っていると思いますが、それを実際に肖像写真の合成で実証してみせる作者の着眼点の良さに、まずは拍手。とくにバイク便ライダーや弁護士、キャバクラ嬢などは「いかにもその顔」になっていて、周囲の環境で人の顔は形作られるのだなあと、改めて感心させられます。

 環境とも関わりますが、時代によっても人の顔は違ってくる。昔の映像を放映している「NHKアーカイブス」などを見ていると、明らかに日本人の顔は変わったなあと思います。高度経済成長時代の日本人は、身なりは貧相でも、実に生命力にあふれたエネルギッシュな顔をしている。内側からにじみ出してくる意思の強さ、自信に満ちた感じが表に出ているのでしょう。「ある種の集団」で平均顔を作ってみると同時に、可能であれば時代ごとの平均顔の変遷も見てみたい気がします。

 作品のなかには、平均化されすぎて特徴が見えづらくなっているものもありますが、それも作者の意図と思われます。とくに、トップページに登場してくる、すべての肖像を重ね合わせた顔などは、その最たるモノでしょう。見た目の差異や個性の演出にばかりとらわれている現代人への警鐘とも受け止めることができるわけで、この「our face」というプロジェクト、想像以上に骨太な企画になりそうな予感がします。

関連リンク●原島・苗村研究室(「平均顔」を研究している東大教授の研究室)

2003年発行分

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