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●取材ノートから●(23) 2002年4月1日号
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ボクの取材術(1) フリーライターにとって、執筆作業と同じくらい大切なのが、人のお話をお聞きする取材という作業です。人の話を聞くだけなら何だか楽な作業にも思えるでしょうが、上手に流れをコントロールしながら話を引き出していく技術には奥深いものがあり、未だに取材上手なライターにはなりきれていない気がします。 最近になってようやく気づいたことなのですが、取材者と取材対象者の間には、微妙な力学のようなものが働いているんですね。例えば、「人は、自分の話を聞いてくれる人には饒舌になる」ということ。もっと簡単に言えば、ふむふむと頷いてくれる人にこそ、人は話をしたがるわけです。これを応用すれば、取材のコントロールができます。つまり、今の調子でもっともっと話してほしいときは、大きく頷きながら話を聞き続ける。反対に、その話はもういいから、とっとと別の話に移らせたいという場合は、極端に言えば全然頷かない。そうやって、与えられた時間で聞きたい話が全部出るようにコントロールしながら取材を進めていくわけです。取材者に限らず、一般の人々も日常の会話で気づかないうちにこうした技術を使っているのだと思います。 ところが難しいケースがあります。それは、取材者と取材対象者以外の第三者、例えば編集者やカメラマンなどがいる場合です。取材者である僕が話を転換させたいと思って頷いていないのに、横で編集者が「ほう、なるほど」と、相づちを打ち始めたら危険信号。先の力学が逆に作用してしまい、もう終わらせたい話が延々と続いてしまったりするわけです。一度、編集者の足を蹴って「いいかげんにしてよ」とサインを送ったことがありましたが、全然気づいてくれませんでした。 もっと難しいケースは、例えば企業のPR誌などで、スポンサー担当者も同席してくるような取材です。とくに担当者の個人的な好みで選んだタレントさんを取材するときは、おおむね最悪な結果を招くことがあります。実際に10年ほど前にあったことですが、話がいよいよ佳境にさしかかったとき、まるでファンの集いで飛び出すような質問を挟んできて、すっかり話の流れを乱されてしまったことがありました。「あなたにとって、歌とはなんですか」みたいなド素人丸出しの質問なんかされたりして、取材陣の一人として赤面するしかありません。 さて、もう一つ、取材テクニックを披露しましょう。それは、相手に応じて演じるということです。素直に話をしてくれる人なら、僕も素直に聞けばいいのですが、中にはとてもエキセントリックな人が少なからずいる。このような場合は、普通の態度ではちゃんと喋ってくれません。そこで、違う自分を演じるわけです。他のライターさんが同じことをしているかどうかは不明ですが、ボクの場合は、わりあい奥の手として意図的に使っています。 まずは、ド素人を演じるパターン。「僕、何も知らないんです、だから教えを乞いに来たのです」という態度に出ると、「ふむふむ、じゃあ教えてやっか」というワケで、得意そうに饒舌に話を始める。もう一つは逆のパターンで、にわか勉強で仕入れた専門的な言葉とか、ディープな話題を振り向けることで、「おっ、こいつは話のわかる奴だ。じゃあ喋ってやろう」というワケで、得意そうに饒舌に話を始める。取材スタートから間もないうちに相手のタイプを判断し、ある種の人物を演じていくわけですが、こうした取材は終わればどっと疲れてしまいますね。 今でこそ、このように方法論として開示することもできますが、これらのテクニックは永年の取材経験のなかで知らず知らずのうちに身につけていたものでした。取材にはきっと、いくつもの技術があり、こうして方法論化できる項目がいっぱいあるような気がします。今回は「ボクの取材術(1)」としましたが、(2)がいつ出せるのかはわかりません。いずれ気がついたことがあれば、改めて開陳することにしましょう。 |
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