●今月のコラム●(22) 2002年3月1日号

2000-01発行分

2002年発行分

上手にウソを楽しませて

 アンタッチャブルだった舞台裏の暴露やカミングアウトが続いています。

 例えばマジックショー。たぶん土曜夜のテレビ番組(タイトルは忘れました)がインパクトを広げたと思いますが、一流マジシャンによって門外不出のタネが続々と明かされ、「ここまで明かしちゃって、本当にいいの?」と、驚いてしまいました。思わず興味津々で見入ってしまうわけですが、そのカラクリに興奮できるのはほんの一瞬で、見終わってしまった後は、何だかどっと虚無感におそわれてしまう。覗き見たくて覗いてはみたけれど、「見なきゃ良かったなあ」というイヤな後味が……。そう、「鶴のおんがえし」で鶴の機織りを覗き見てしまった男の心境にも似た感じでしょうか。

 プロレスも、どんどん内幕が明かされている分野の一つです。新日本プロレスで永年レフェリーを務めてきたミスター高橋さんの暴露本、『プロレス、至近距離の真実』『流血の魔術 最強の演技』(共に講談社)の2冊は、いわば決定打とも言えるものでした。とくに昨年末に出版された後者のほうは、ボカシのない裏ビデオにも近い。映画では昨年秋に公開されたドキュメント映画「ビヨンド・ザ・レスリング」もある種、衝撃的ではありました。WWFという世界最大のプロレス団体(アメリカ)の内幕を描いたもので、レスラーのキャラクターが作られていく様子、試合の組み立て方などが淡々と描かれています。

 個人的に趣味で見続けてきたプロレスについては、ファンとして忸怩たる思いもある。30年以上も見ていると、だいたいのカラクリは想像できてくるものですが、想像以上の事実がバラされたりすると、白けてしまう部分があるのも確か。知りたいけれど、知りたくない。見たいけれど、見たくない。実に、複雑な心境です。

 ネットが普及した今の社会では、真実かデマかはともかく、簡単にウラの情報が見えてしまう。そんな時代背景があるからこそ、マジックのタネやプロレスのカラクリが、当事者の手でいとも簡単に明かされてしまうのでしょう。暗黙の了解の上に成り立ったエンターテイメントを、純粋に楽しむのは至難の業です。「鶴のおんがえし」をまた持ち出せば、雪深いなか、突然麗しい女性が山小屋に訪ねてきた程度ではワクワクできないご時世。鶴にも「楽しいウソをつく高度な技量」が求められているのかもしれません。

 証人喚問や記者会見でのウソは困りものですが、人を楽しませてくれるウソは大歓迎。本当は、もっと低レベルなウソで騙されていた時代が楽しかったなあ、とも正直思うわけですが、もはや無理な相談なのですね。

2003年発行分

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