●債権回収トホホの1500日●(07) 2001年6月1日号

2000-01発行分

2002年発行分

裁判直前、弁護士さんからの助言は

 僕が手続きした「支払督促」に対して、債務者のA社社長から異議が出され、事件は裁判での決着に移ることになりました。僕は初めての裁判に臨むにあたり、最近弁護士のお世話になった友人から弁護士Tさんを紹介してもらい、今後の対応について相談に行くことにしました。

 Tさんは、人権派の弁護士として法曹界でその名が知れわたっている弁護士のお弟子さん。誰もが知っている有名な裁判で、弁護士団の一員として参加した人です。Tさんに相談に窺いたい旨の電話を入れると、電話口でそのまま無料相談に乗ってくれました。これは、とてもありがたかった。

 まず気になっていた第一点目は、裁判というからには先方が弁護士をたててくるかどうかです。弁護士のTさんの意見は「30万円程度の簡易裁判だから、先方が弁護士を雇ってくる可能性は低いだろう」との見方でした。確かにそうでしょう。そんな金があればとっとと払えということです。もちろん僕にも弁護士を立てる余裕はありません。どうやら僕とA社社長の一騎打ちのようです。

 そして、「分割はイヤだから支払督促での請求内容と同じように一括で支払えと言うことはできるけれど、おそらく裁判所は和解を促してくるだろうから、多くを期待せずに分割で折り合いをつけた方が賢明」「ただし期限の利益喪失約款というものをつけさせた方がいい」とのアドバイスです。

 またまた専門用語が飛び出しました。「期限の利益喪失約款」とは、要するに支払期限を延ばして分割という要求を呑んであげるかわりに、例えば2回以上支払が滞れば、直ちに残り全額を支払いなさいよという約束をさせるということです。つまり、期限延長という利益を被告に与える代わりに、一定の条件に達したらそのメリットを失いますよ、いいですね、という意味です。やれやれ、法律用語は本当にやっかいです。

 ところで気になるのは、これまでものらりくらりと僕の催促を無視してきたA社社長のこと、本当に分割支払いをきちんとしてくるか、かなり怪しいということです。これについてはTさんから歯切れの悪い言葉が返ってきました。

 「即刻耳をそろえて一括で支払えという判決が出ようが、分割弁済の判決が出ようが、向こうが逃げるかもしれないというリスクは常につきまとうんですよ。ですから、相手に逃げられないようにするには、相手をなだめすかして、おとなしくお金が支払われるのを待っていた方が得策なんです」

 なるほど、そういうものなのか。ところで、それでも一向に支払わない場合は、強制執行もできるんですよね? ここでのTさんの答えも、あまり嬉しい話ではありませんでした。

 「分割弁済の判決が出たのに、一向に支払わない場合、強制執行は確かにできます。でも、強制執行できるとも言えるし、強制執行しかできないとも言えるんですよ。強制執行をするには、先方の財産がどこにあるのか、こちらで特定しないといけないんです。例えば先方の銀行の口座番号を調べて、いつそこにお金が入っているのか、判断しなければいけない。あとはオフィスにある財産を押さえる方法もありますが、現金なんて大してないでしょうし、備品を差し押さえしたとしても、パソコンもコピー機もリースでしょう。事務机なんか二束三文ですし、お金にはならないですよ」

 そして強制執行をするには、今度は執行官がいる地方裁判所で手続きしなければなりません。また一から手続きをし、費用を払うのかと思うと、気が重くなります。しかも、強制執行で換金できるとは限らない。実にリスクの多い判断です。

 「こういうケースでは、お金の無い方が強いというかな。正当な訴えをするこちらが強い立場のようで、実はそうではないんですよ。相手が社会的知名度があるような大会社であればともかく、小さい会社で何をするかわからないような会社の場合、いくらでも逃げたり、とぼけたりしますから」「むしろこちら側は、裁判の時には毅然とした態度を示しつつ、なだめすかしてお金が支払われるのを大人しく待っていた方が、結果として得策なんです」

 こうしてTさんのアドバイスをお聞きしていると、つくづく、フリーランスの立場が弱いことに気がつきます。だって、発注する側は、仕事を発注して支払わないでも、こうやってまんまと逃げ仰せるからです。 どうやら、過大な期待はしない方が身のためと言えそうです。

  裁判は99年9月14日の午前11時から行うことが決まりました。果たしてどういう結果になるのでしょうか。

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