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●間違いだらけの車いす選び●(05) 2001年5月1日号
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車いすはキャンピングチェアーか? キャンピングチェアーって、ありますよね。アルミパイプの間にビニールシートを貼った、折り畳み式のいすです。かつてバイクツーリングに興じていた僕は、キャンプ先での野営に便利な道具として重宝しました。皆さんも、一度くらいは使ったことがあるんじゃないでしょうか。では、あのキャンピングチェアーに、日常生活で四六時中じっと座らせられていたらどうでしょう? おそらく、お尻が痛くなったり、汗ばんできたりして、数時間もたたないうちに、座ることが苦痛でしかなくなることでしょう。 古いタイプの車いすの座面は、実はこのキャンピングチェアーに似た代物です。健常者の場合はお尻が痛くなる感覚がありますし、自由にお尻の位置を動かせますから問題はあまりないとして、下半身の感覚がない人、足で突っ張ってお尻の位置を動かすことができない人、姿勢が崩れても自分では補正できない人の場合は大きな問題です。やがてお尻に床ずれ(じょくそう)ができたり、姿勢の崩れで骨の位置がずれて障害が重くなったりと、いわゆる二次障害を呼び起こす原因になりかねません。 かつて車いすに関する連載を受け持っていたときは、旧態依然とした車いす制度への怒りの声を中心に取材したわけですが、もう一つ、多くの人が指摘していたのが、車いすにおける座りの問題、すなわちシーティングや姿勢保持の問題でした。僕が取材を始めた3年ほど前から、ようやくシーティングに関して活発に発言する人が出始めてきて、姿勢保持を促す車いすや、じょくそうを予防する座面シートなど、商品の面でも各種が見られるようになってきました。シーティングに対する意識が日本であまりに遅れていた理由について、とある車いすメーカーの社長はこのようなことを言っていました。 「日本にはもともと、椅子に座って生活する文化がなかったのが大きな原因だと思います。だから、車いすは椅子ではなく、搬送道具の一つとしか見られてこなかったんですね」 椅子の文化が浸透していた欧米と、浸透していなかった日本の違いは、見事に、欧米メーカーと日本メーカーが作る車いすの違いに表れていました。ここ10年以内の話だったと思いますが、ヨーロッパのとあるリハビリ関係者が来日し、日本の障害者が乗っていた車いすを見て、「経済大国の日本で、こんな貧しい車いすを使っているなんて信じられない」と指摘したと聞きました。その人にとって、日本の車いすは車輪がついたキャンピングチェアーに見えたのかもしれません。 先天的な障害をもつ人や、受傷して長いベテラン車いすユーザーの場合、最近はシーティングに対する意識が高くなっていますから、多くの人が何らかの予防策をとっています。たぶん、問題になってくるのは受傷して間もない障害者、身体が衰えた高齢者など、最近車いすを使い始めた人でしょう。とくに高齢者の場合は、介護にあたる家族も情報収集できていなかったりしますから、車いすが健康を害させる一因になることもあり得るなんて、思いもしないんじゃないかなあ。介護保険の要となるケアマネージャーも、多くは福祉用具に明るくないですから、車いすなんて何でもいいと思っているかもしれない。 車いすの研究では広く知られたリハビリテーションの先生が、こんなことを言っていました。 「老人病院や高齢者施設のなかには、『寝たきり』ゼロを徹底させるために、むやみに車いすに乗せようとするところがある。でも、そこで使われている車いすが、昔ながらの車いすです。お年寄りが、みんな姿勢の崩れたままで車いすに乗せられ、そこで朝から晩まで過ごしているわけです。『寝たきり』ゼロが『座らせきり』を招き、それが新たな障害につながる。『座らせきり』は今後大きな問題になると思いますよ」 |
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