●間違いだらけの車いす選び●(04) 2001年4月1日号

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車いすは暴利をむさぼる商品か?

 車いすをめぐる世界にはどうも暗部があるらしい……その暗部を探るべく取材を始めたのは3年前でした。取材開始直後に会った、車いす製造・販売会社の社長は、旧態依然とした業界に憤懣やるかたないといった風で、怒りをぶちまけました。矛先が向かった一つが、車いすの価格です。何度かふれていますように、障害者向けに制度内で措置される車いすの価格は、標準的なもので約10万円と国が決めています。それが暴利だというのが、件の社長の主張でした。

 「世界中の車いすの8割は台湾で安く作ってる。日本の多くのメーカーは向こうで安く作ってこっちで組み立てているだけ。自転車なんて安いもので1万円程度なのに、車いすは10万円と国が決めている。どうしてあんな車いすが10万円もするんですか」

 社長は、某社のカタログを取り出し、さらに過激な発言をします。「こんな車いす、原価は8000円か、よくて2万円ですよ。オプションの部品だって高すぎる。車いすの泥除け、2個で1万5000円って書いてあるでしょう。自転車屋さんに言わせれば、これはもはや詐欺ですよ」

 確かに、台湾には車いす製造会社がたくさんあります。多くは自転車も製造している会社です。社長によると、自社ブランドでの市場参入を望んでいる台湾企業もあるものの、日本の閉鎖的な業界構造に阻まれているのだとか。とある有名な特別養護老人ホームの責任者にこのことをお教えすると、さっそく台湾まで直々に交渉へ出かけ、日本で見たこともないような機能的で美しいデザインの車いすを、大量に自分の新しい施設に導入しました。実に賢いやり方です。

 車いすの価格が本当に暴利なのかどうか、僕には断言できるだけの取材ができていません。裏をとるならば、日本のメーカーと取引がある台湾企業から流通経路をたどって取材しなければならない。いくら何でも「濡れ手に粟」の商売をしているとは思いませんが、コストダウンの努力をしているかどうかの疑問は確かにあります。

 ただ一つだけ言えることは、ホームセンターで2万円程度で売っている車いすは確実にあるということ。そしてもう一つ言えることは、安かろう悪かろうの傾向もあるということです。何も知らない人から見れば同じ車いすでも、実はやたらと重かったり、旋回しにくくて狭い屋内では使えなかったりする。先行き長くない高齢者のための一時的な車いすなら許せるとしても、障害者が毎日使うには不満が残ります。

 2万円の車いすが正しいのかどうかはともかく、標準的な車いすが一律10万円というのは、どうも合点がいきません。障害者の制度では本人の身体に合わせてオーダーメイドで作ることになっていて、もしカタログに載っているような既製品をそのまま給付する場合は2割カットで8万円になります。しかし、ある車いす販売店からは、カットされるのを防ぐために、無理矢理一部分だけ仕様変更をして「これはオーダーメイドだから10万円」と主張するケースがあるとも聞きました。すべては暗闇の中で行われていることです。

 考えてみれば、販売業者が提供してきた車いすに対して、10万円の値段が正しいかどうかを判断する人はどこにもいません。多くの障害者はタダでもらえるものだから、国がいくらお金を出しているか無頓着です。販売業者やメーカーは、決められた価格のなかで原価対策をするだけです。車いすの判定をする人はお金については預かり知らぬところです。誰もが他人事として受け止めている販売価格、元はといえば、国民が納めている税金が財源だということを忘れてはなりません。本当に怒るべきは、給付を受けている障害者ではなく、納税者なのかもしれません。

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