|
●今月のコラム●(11) 2001年4月1日号
|
|
|
●
|
ゴーン流労使交渉の痛快と不安 当サイトには珍しく、経済界の話題を一席。 3月8日付けの朝日新聞に、「労組もびっくりゴーン流春闘 1週間前倒しで満額回答」という興味深い記事がありました。日産自動車の最高責任者として大胆なリストラを敢行しているゴーン氏が、春闘の労使交渉で組合要求に対してとっとと満額回答を示し、組合幹部は面食らったというお話です。ゴーン氏の考え方は「満額と決めたなら、黙っていてモヤモヤさせるより、すかっとしてほしいということ」で、一方の組合幹部は「組合員に直接伝えたいからと、7日夜まで満額回答の公表を控えるように要請した」。これは、今の労使交渉の空洞化をようく表しているニュースだと思いました。 あくまでも一般論ですが、労働者の待遇がそこそこ保障された今となっては、労使交渉もかなり茶番に近いような部分があると思うんですね。執行部の中心メンバーと総務担当重役あたりは結構ツーカーの仲だったりして、春闘の結果なんて実は打ち合わせができているんじゃないの、と邪推したくなることもありました。 ただ、労使交渉の最終的な着地点がおおむね了解済みだったとしても、これまで経営者側はカードを出し惜しみしつつ、勿体をつけながら少しずつ組合側の要求ラインに近づけていく方法をとってきました。一方労働組合側も、すこしずつ要求ラインに近づけていく経営者側の態度を、ある意味、容認してきた部分もあるわけです。つまり少しずつ会社回答を得るたびに、それを自分たちの交渉力の成果として誇示し、「組合の粘り強い交渉の成果! 会社側から×円上積みの回答を引き出す!」なんて教宣ビラをまいたりしながら、末端の組合員に存在感を示すことで、労働組合という仕組みを辛うじて維持させてきたわけです。 なのにゴーン氏は、無駄な労使交渉は不要と、早々と満額回答を出しました。組合側は要求が呑まれたのだから本当は喜ぶべきところですが、一気にゴールを迎えてしまっては交渉力の成果が示せません。しかもその知らせが、組合ルートからではなくマスコミルートから流れたりしたら、ますます組合は立場がなくなってしまいますから、公表は待ってほしいと申し入れたのでしょう。 労働組合の目的は、労働者の雇用と生活を守るために存在しているはずで、そのためのぎりぎりの交渉の場が労使交渉です。でも今は、労使交渉のプロセスそのものが目的化してしまっているともいえる。今回のニュースは、ある意味、痛快でしたが、ひねくれて考えれば、組合潰しの格好の手法ともいえますね。だって組合の要求に押し切られたのではなく、自主的な経営判断で満額回答したという印象を残せば、労働組合の存在を透明にできますから。 ゴーン氏がそこまで企んで満額回答を示していたとすれば、かなりの策略家ということになります。いずれにせよ、日産労組あたりは、前例のない出来事にかなり戸惑っているのではないでしょうか。 |
●
|
||
| BEFORE← | →NEXT |
| 当ホームページに掲載されている原稿の無許可転載・転用を禁止します。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約によって保護を受けています。
Copyright 2001-2004 tomoyasu tateno. All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission. |
|