●今月のコラム●(10) 2001年3月1日号

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世田谷に詳しい、手を負傷したA型の男

 当サイトのプロフィール欄でも近況ご報告しましたが、2月3日、洗っていたお皿が突然割れて、割れた切り口が勢いよく右手親指の付け根を直撃。台所には事件現場のように血が飛び散りました。親指の関節を動かす太い腱を切断してしまって縫合に3針以上、皮膚表面を6針以上縫う怪我で、全治4週間との診断。ちょうど前日、フリーライターが集まる勉強会「フリーライターの危機管理策」で初めて講師を務めたばかりなのに、全然危機管理ができていなくて、途方に暮れる始末。お恥ずかしい限りです。

 数日たって落ちつきを取り戻し、左指一本でなんとか執筆活動を再開しました。パソコンとキーボードという便利な道具があって、本当に助かっています。もともと十指を滑らかに使うブラインドタッチのキーボード使いではなかったのが幸いでした。

 さて、バイクのグリップが握れなくなった僕は、毎日バスを2本乗り継いで仕事しに行きます。僕が出没するのは東京都狛江市と、同市に隣接する世田谷区のあたりなのですが、バスに乗ると、大きなビラが2枚貼ってあるのですね。そこに書かれているのは、かの「世田谷一家惨殺事件」の犯人に関する情報です。

 「犯人は手を負傷しています」「血液型はA型です」……おまけに、世田谷周辺の土地勘がある人間ともいわれていますから、いずれも該当してしまって、何だか肩身が狭い気分。手に包帯をぐるぐる巻きし、三角巾で腕をぶら下げている僕を第三者が見ると、多くはじっとその包帯ぐるぐる状態をじっと見、僕の顔もちらりと見る。

 先日なんかは、散髪屋さんが腕の怪我をしげしげと見て「どうしてそんな怪我になったのか」あれこれ聴かれて、とても不愉快。多分に自意識過剰とは思いますが、何だか怪しまれているように思えてしまうんですね。交番の前を通るときも、何だか意識しちゃったりして。ありゃりゃ、僕は関係ないってば。世田谷区在住の人で、年末年始あたりに手を怪我した人は、たぶん10人以上はいるはず。同じように、病院に通いつつ、僕よりももっと冷たい視線に晒されていたのでしょうね。

 救急扱いですぐに縫合手術を受けたわけですが、医師も心得たもの。同席した妻に怪我したときの状況を根ほり葉ほり聴いたらしく、「私が疑われた」と立腹していました。もっとも、これも医師の仕事なのでしょう。疑わしいことがあれば警察に連絡するでしょうし、警察もしょっちゅう聞き込みにくるでしょうし。

 近隣で毎日を過ごしている者にとって、あの事件は今でも生々しい記憶として残っています。世田谷中をうろうろしている僕でも、事件現場付近には立ち入ったことがなく、用事がある人以外あまり行かない場所です。近くに住む屈強な男性曰く「僕でも夜中に歩くのが恐い場所。あそこは歩かないようにしている」そう。

 みんなが探偵ごっこをするのもどうかとは思いますが、勝手な推測をすると、あれは「計画的な通り魔事件」と思えてなりません。計画的な通り魔、という言い方には矛盾がありますが、動機は通り魔と同様で、犯行計画は練りに練ったもの、という意味。殺人ゲームを実行に移してみただけ、なのでは。

 20世紀最後の夜の犯行だったところが、いかにもドラマ仕立てで、意図的なものを感じずにはおれないのですが。ともあれ、早く犯人を検挙してもらいたいところです。

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