●間違いだらけの車いす選び●(01) 2001年1月1日号

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ユーザー不在の車いす選び

 今回から、以前『WE'LL』という雑誌で98年夏号から99年8月号まで連載させてもらった企画「車いす世界の摩訶不思議」での取材内容を改めて再構成し、「間違いだらけの車いす選び」としてお送りしていきましょう。

 車いすは、今ではずいぶん身近な存在になりました。少なくとも東京では、町中を歩いていて、車いす利用者の姿を見かけることも珍しくなくなってきました。介護者に車いすを押されている高齢者よりも、自分で車いすを漕いだり、電動車いすでスイスイ走っている障害者のほうが多いようです。

 さて、この車いす。障害者の場合はどのようにして入手しているのでしょうか。このことを調べ始めた3年前、なかなか確かな情報にアクセスできなくて一苦労しました。なぜなら、障害者の車いすは、市場経済のなかで売り買いされるものではなく、興味をもった第三者が流通の仕組みを理解しようとしても、適した資料が見つからなかったからです。

 福祉の制度に明るい人であれば、今さら言うまでもありませんが、従来の福祉制度は「措置制度」の考え方で成り立っています。これは、福祉の対象となる、例えば障害者の側にサービスを選ぶ選択権があるのではなく、あくまでも行政機関が判断して「与えて(措置して)あげる」というものです。車いすの制度も、この「措置制度」の枠内でした。

 この取材を始める前まで、僕は次のように勝手に想像していました。まず、車いすの販売店などに障害者自身が出向いたり出張を依頼したりして、自分に合った車いすを、自分の希望と専門職のアドバイスをもとに選ぶ。そして、普通の市場経済における消費活動と同じように、然るべきお金を払って購入する。その後、役所などに届け出を出し、補助金のようなものを支給してもらう。あるいは購入時点で割り引き価格で手に入れるのかもしれない……。どうです、このように想像するのが自然じゃありませんか。

 ところが実態はまったく違います。障害者はまず地元の福祉事務所などに出向き、更正相談所と呼ばれる公的機関で「判定」をしてもらう日時を予約します。そして、決められた日時に更正相談所を訪れた障害者は、判定医と呼ばれる人の判断を仰ぐわけです。その後、更正相談所から車いすの販売業者に製作の指示があり、業者は更正相談所から指示された通りに車いすを製作して、本人の手元にようやく届くわけです。最初に福祉事務所に行ってから、実際に車いすを手にするまで、1カ月以内のこともあれば、3カ月以上かかる場合もあります。これが基本的な流れです。

 基本的な流れを見ただけでも、十分にユーザー不在の状況は伝わってくるわけですが、実際にはこれに輪をかけて、摩訶不思議な事実がいくつもありました。次回から、事例をまじえて詳しくお教えしていきます。

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