●取材ノートから●(05) 2000年10月1日号

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ケアマネージャーは中立?

 介護保険導入後の問題点の一つとして、ケアマネージャー(介護支援専門員)の中立性が確保されているのか、という問題があります。

 あまりご存じない人のために若干の説明をすると、ケアマネージャーは、介護を要する高齢者が生活を営んでいく上で、その人に必要な介護サービスの計画を立てる専門職で、介護サービスを実施する業者さんへの連絡や交渉も行います。介護保険制度の、まさしく要となる人と言っていいでしょう。

 今問題になっているのは、特定の介護サービス事業者に所属するケアマネージャーが、自社や自社グループに有利なサービス計画を立ててしまう、という問題です。

 わかりやすいような例を挙げれば、自社でデイサービスやショートステイの施設をもっていないために、こうしたサービスがたとえ必要と思われても計画には入れず、自社でやっているホームヘルプサービスや入浴サービスだけで計画を作ってしまう……あるいは、自社でそういう施設をもっていても満杯でとても受け入れられず、競合他社が展開している施設に仕事を回すのがイヤで、前述のような計画を作ってしまう、といったことが、ありえるわけですね。

 介護サービス事業者にとって、ケアマネージャーが営業マンのような存在になってしまっている。上役からは、他社に仕事を回すような計画を立てないよう厳しく言われていることもあるでしょう。

 どうしてこんなことになっちゃったのでしょう。介護保険制度の導入にあたり、ケアマネージャーの中立性を確保するためには、民間サービス事業者ではない、第三者がやるべきだという議論はありました。でも、結局、急ごしらえの介護保険制度を円滑にスタートさせるためには、ケアマネージャーの養成が間に合わないから、民間サービス事業者に勤める人もケアマネージャーになってよい、ということになったわけですね。

 僕自身、介護保険制度には賛成の立場ですし、民間サービス事業者が介護サービスを手がけることについても大いに賛成の立場です。でも、ケアマネージャーを民間にも門戸を開くことについては、現状では「まずいんじゃないのかなあ」という印象でしたし、実際にまずい例も出てきているようです。

 何で「まずいんじゃないのかなあ」と思ったかと言うと、行政によるチェック体制が不十分だ、ということもありますが、何よりも、利用者側への啓蒙が全然出来ていない現状があります。だって、ケアマネージャーが立てたプランに文句をつけられる、訪問してきたケアマネージャーに信頼がもてないから別の人にケアプラン作成を頼む、ケアプランに明記された事業者の変更を申し出る、場合によっては利用者自身がケアプランを立てることだってできる……といったこと、知っている人がどれだけいるんでしょう。

 今まで、措置制度のなかで、行政の担当者の言われるまま、行政側の都合に合わせてサービスを利用してきた人の場合、訪問してきたケアマネージャーの立てたケアプランを「利用者の立場で厳しく評価する」という考え方、習慣がそもそもないんじゃないでしょうかね。

 前回の「今月のコラム」で、与える側と与えられる側のズレについて触れましたが、与える側主導で何事も進んできた日本で、いきなり利用者側に主導権だけをポンと移されても、少し不毛な感じはしますね。利用者が自由に介護サービスを選ぶことができる介護保険制度の誕生は喜ばしいと思いますが、選択肢があっても選び方がわからなければ選べないのは当然のことだし、そもそも選べることすら知らなかったりする。

 高齢になるにしたがって、情報収集能力や理解力は下がってきますから、高齢者の周囲にいる人、例えば息子や娘が制度の勉強をしたり、地域の介護サービスの現状を調べたりした上で、要所要所で関わっていくことがまず必要ですね。どこの家庭でも、老親の介護については逃げ腰だと思いますが、同じ逃げ腰になるなら、せめて正しいケアプランができているのか、その場に立ち会うような側面支援をするだけでも、状況は変わると思うのですが。これは80歳前後の今は健康な両親をもつ、僕自身の肝にも銘じておくことにしましょう。

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