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書庫1ぞっこん名盤セレクション 〜70年代ロックのきら星たち〜

●ここで取り上げたアルバム


「キャント・バイ・ア・スリル」


「アライブ・イン・アメリカ」

●「毎日中学生新聞」(毎日新聞社)96年10月8日号 掲載

(11)スティーリー・ダン

 ロックバンドというものは、常にメンバーの集合・離散を繰り返すんだよね。金銭上のトラブル、音楽性の違い、人気者へのやっかみなど、理由はいろいろだ。

 さて今回紹介するスティーリー・ダン、今はドナルド・フェイゲン&ウォルター・ベッカーの2人組なんだけど、最初は6人組のバンドとしてスタートした。

 音楽性の特徴を簡単に言えば、ジャズのエッセンスを盛り込んだロックという感じかな。70年代の初めごろは、まだロックンロールが大勢を占めていて、ジャズっぽいロックというのは新鮮な印象だったね。

 ジャズってさあ、何だか大人の音楽って感じがしないかい。席を立ち上がって拳を振り上げるようなロックと違って、酸いも甘いも噛み分けた大人たちが、気持ちよさそうに酒のグラスを傾けながら聴く音楽……そんな感じかな。スティーリー・ダンは僕にとって禁断の大人の香りだったんだよ。

 6人のメンバー全員がジャズ好きのミュージシャンで、ほとんどがスタジオミュージシャン出身だ。スタジオミュージシャンにありがちだけど、ライブパフォーマンスではなくレコーディングを主戦場にしているアーティストは、音の完成度にこだわるんだよね。

 これには一長一短あって、どんどん理想の音楽を突き詰めていくから、無駄なモノが排除されていく。人によっては「鉄壁のアンサンブル」とも、「遊びがなくて息苦しい」とも受け取れるんだ。

 レコーディングのたびに完璧を求めていったスティーリー・ダンでは、2人の音楽理論についていけなかったメンバーが次第に抜けていった。陽気なロックンロールバンドのドゥービー・ブラザーズに移籍した者もいたよ。

 その代わり、ジャズ界でだれもが認める名うてのミュージシャンが次々とレコーディングに参加した。バンドとしてのアイデンティティはフェイゲン&ベッカーの2人が構築し、求める音が出せるミュージシャンを必要に応じて連れてきたってワケさ。

 鉄壁なアンサンブルがお好みなら、昨年発表の「アライブ・イン・アメリカ」というライブ盤がお薦めだ。音楽的に煮詰まってしまって81年に活動を休止して以来、14年ぶりの再結成作品になる。

 ジャズの香りを漂わせたアメリカンなロックが聴きたければ、72年発表のデビューアルバム「キャント・バイ・ア・スリル」がお薦め。シングルチャートをにぎわせたポップなナンバーも収まっているよ。

 スティーリー・ダンは、間もなく今月中旬に再来日する。2人が連れてくるミュージシャンにも注目してみたいね。

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