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書庫1ぞっこん名盤セレクション 〜70年代ロックのきら星たち〜

●ここで取り上げたアルバム


「危機」

●「毎日中学生新聞」(毎日新聞社)96年7月23日号 掲載

(7)イエス

 さて、今回から3回連続で、プログレッシブ・ロックというジャンルから紹介していくよ。まずはprogressiveという英語を辞書で引いてごらん。「進歩的な」とか「革新的な」という和訳が出てくるだろ。

 人によっていろいろな定義をするだろうけど、あえて簡単に説明しちゃうと、未来派ロック、電子楽器をベースにしたロック、という感じかな。

 70年代の初めごろ、電子楽器の代表格、シンセサイザーが徐々に一般的になってきて、前衛的なミュージシャンたちは、これをロックで使おうとしたんだ。

 シンセサイザーの音色は、今から思えば少し陳腐で薄っぺらな音色なんだけど、初めて聴いた時は確かにインパクトがあった。なんだか宇宙的なイメージがかきたてられて、「へえ、これが未来の音楽なのか」みたいな驚きがあったよ。

 そんなプログレッシブ・ロックの中で、まず最初に紹介するのはイエスというバンドだ。結成当初は、どちらかといえばプログレ色が希薄だったんだけど、キーボード奏者のリック・ウェイクマンが加入してからは、どんどん「革新的な」音作りになってきて、プログレの代表的なバンドの一つになったんだ。

 僕のいちばんのお気に入りは、抜群のセールスを記録した「危機」というアルバム。70年代のロックとしては、間違いなく10本の指に入る名作だよ。

 イエスはこのアルバムで初めて、シンフォニックな、つまりクラシック音楽の交響曲的な色彩を打ち出した。タイトル曲は20分近くにも及ぶ組曲でね。当時はもちろんCDではなくてアナログのLPレコード。片面はだいたい20分が標準だったから、この長さにとどめたんだろうね。今なら、70分くらいの組曲を平気で作曲しかねないバンドだったよ。

「危機」はとにかく素敵な作品で、これまで通算すると100回は聴いたんじゃないかな。普通はこれだけ聴き込んでいると少しは飽きてくるんだけど、プログレッシブ・ロックにありがちな、電子楽器に頼りすぎたサウンドではないんだ。

 ギター、キーボード、ベース、ドラム、そしてジョン・アンダーソンの特徴的なボーカルが、それぞれ複雑に絡み合いながら、完璧なアンサンブルにまとまっている。一糸乱れない交響曲ロックとでも言えばいいのかな。

 ちょうどタイミングがいいことに、今月26日にはテレビで彼らの栄光をたどった2時間番組が放映される。ただし衛星放送のWOWOWだから、だれか友達にでも頼んでビデオに録画してもらっちゃおう。ひょっとしたら、キミのお父さんだって、見たい番組かもしれないよ。

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