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書庫3●シルバーシート(優先座席)なんて、もういらない?
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●「通販生活」(カタログハウス)2000年4月発行号 掲載 〜シルバーシートなんて、もういらない!?〜 阪急電鉄が決断した全国初の優先座席全席拡大から一年、 1999年4月、関西私鉄大手の阪急電鉄は「優先座席の全席拡大」に踏み切った。シルバーシート(優先座席)そのものがうまく機能しないなかで、「いっそやめれば」「いやいや必要」と議論は百出してきたが、阪急の試みは一つの答えになったのだろうか。 (1)優先座席の廃止ではなく全席拡大 シルバーシートについては、さまざまな考え方があり、新聞の読者投稿欄や個人のホームページでも格好の題材になってきた。 「座席を占領して狸寝入りする若者は嘆かわしい」という意見があれば、「若者だって本当に座りたいことはある」といった反論や、「通勤時間が長いので、わざわざ始発駅に戻ってまで席を取っている。そこまでして確保した席は譲らない」という生々しい本音も吐露される。 「外見は健常者に見えるから譲ってもらえないが、心臓疾患などの内部障害者もいるのですよ」という指摘にはハッとさせられるし、「家庭や学校での教育の問題」「鉄道事業者はもっと啓蒙を」などの意見もご説ごもっとも。どうすればいいのやら、答えは見えてこない。ニュースのコメンテーターであれば「難しい問題ですねえ」と適当にはぐらかし、コマーシャルにバトンタッチしたくなる。 そんななか、阪急電鉄は99年4月から、車両の一部に設けられていた優先座席の全席拡大に踏み切った。 大阪は梅田にある阪急電鉄本社を訪ねた。応対してくれたのは、鉄道営業部調査役の村山和彦(仮名*)さん。 「優先座席がなぜ一部だけなのかという議論は、以前から社内でもあったように思います。とくに最近では、高齢者や妊婦さんもどんどん外出されますので、いよいよ見直しが必要になってきていました。 では何席に増やせばいいのか。実はこれが決めにくいんですね。それなら全部、皆さんの善意でお譲りいただくのがいいのではないかと。そもそも、一部に限定すること自体、おかしかったのではないかと」 阪急を含む関西の大手私鉄は、関東と違い、当初から足並みそろえてシルバーシートではなく今風に「優先座席」と呼んできた。だが優先座席の全席拡大は、全国でも阪急電鉄だけの試みだ。自動改札もプリペイドカードも阪急が先んじて導入してきたわけで、他社にしてみれば、今回もさてさてお手並み拝見、といったところだったろう。 このニュースは新聞やテレビで紹介され、多くの反響が寄せられた。全国からの反応はおおむね好意的で、今のところ大きな混乱はないようだ。それにしても、気になることが一点。これは事実上の優先座席廃止では? 「確かにそういう受け止め方はありますし、沿線のお客様からは、これからますます譲ってもらいにくくなる、というご指摘はいただいています。ただ私どもとしては、一部に限っていた優先座席を全席に広げたということで訴えかけていきたいと思うんですね」 もう一度、しつこく聞いた。仮に、席を譲るのは当然であるという意識が浸透していれば、全席優先座席と言う必要はなかったですよね? 「なかったかもしれませんね。いちばん望むべくは、そうでしょうね」 (2)シルバーシート誕生の舞台裏 そもそもシルバーシートはどのようにして生まれたのだろう。 初めて登場したのは国電中央線で、1973(昭和48)年9月15日(敬老の日)。運輸省とJR東日本から経緯を聞いたところ、ルーツは意外にも「婦人・子供専用車」だったという。 戦後の混乱期、乗車率が300%を超える過酷な環境から女性と子供を守ろうと、1947(昭和22)年に中央線および京浜東北線で「婦人・子供専用車」が生まれた。だが輸送力増強とともに専用車の意味合いは薄れ、最後は中央線の朝のラッシュ時だけの限定的な運用になり、73年8月末に姿を消している。 この年は、総務庁が老人対策室を設置し、マスコミがこぞって「福祉元年」をうたった年でもある。この機運のなかで、弱者救済の対象は自然と婦人・子供から高齢者・身体障害者にスライドしたのだった。 名前の由来も意外だ。後にJR東海社長の任を務めた須田氏の述懐によれば、座席の色から名がついたという。識別しやすいように座席の布地の色を変えようとしたが、準備期間が短く、余っていた新幹線用の布地を使うことにした。これがシルバーグレー色だったのだ。当時はまだ、高齢者をシルバーと呼ぶ習慣が根づいていない。 全国の私鉄が導入したのは、1975(昭和50)年の運輸省通達によるもの。通達は、意外なことに「身体障害者雇用促進法」施行規則の一部改正に伴うものだった。要するに、身体障害者が通勤に電車を利用しやすいように、という意味だ。実際に、雇用が促進されたかどうかは別にして。 ひょんなキッカケや、時代の気分、関連するようなしないような法律改正に何となく後押しされて、シルバーシートは突然この世に生を受けた。そして、良くも悪くも高齢者や障害者のための席として認識されていったのである。 *個人としてのコメントではなく、会社としてのコメントと理解できるため、原稿掲載から3年以上が経ったことも考慮して、ここでは仮名にさせていただいた。 |
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