1980年のアーウー
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戦後の一時期を除き、少なくとも1948年(昭和23年)以降、終始政権を握ってきた自民党(結党は1955年、それ以前は自民党の前身となる保守系の連立政権)が初めて野に下ったのは、1993年の細川内閣発足時。保守系で45年間、自民党で38年間続いた長期政権は幕がおろされました。結果的には一時的に野党となっただけで、11ヶ月後、社会党を道連れに与党に復帰したのはご存知の通りです。 少なくとも1955年の結党以降、自民党の与党の座は揺るぎなかったかのように見えますが、実は1980年、保革逆転ぎりぎりの攻防が繰り広げられました。この切っ掛けとなったのは、1976年に表面化したロッキード事件です。田中角栄前首相の逮捕によって自民党の金権体質が浮き彫りとなり、一部の議員が離党して新自由クラブを結成(後に自民党と連合政権)。事件究明を掲げた三木首相が総選挙での議席数減少の責任をとって退陣したこともあって、国民のなかにアンチ自民党のムードが漂い始めました。1979年10月の総選挙では「安定多数」の維持に失敗し、いよいよ雲行きは怪しくなります。 政権交代を探る動きは、1980年に入って一気に加速しました。まず1月には社会党と公明党が連合政権構想で正式に合意。すでに公明党との政権構想を温めていた民社党もこれに呼応し、「社公民」路線が固まります。一方で共産党は、右傾化した社会党との対決姿勢を鮮明にして独自の政策を提唱。つまり、「自民+新自由クラブ」VS「社公民」VS「共産」の三つ巴構造となったわけですね。 ここで、「自民+新自ク」の与党にさらなる逆風が吹きます。それが、今ではバラエティ番組にも登場しているハマコーこと浜田幸一議員(自民党)のラスベガス賭博事件でした。賭博による借金(およそ4億円との説)の返済に、ロッキード社からのお金が使われていたのではないかとの疑惑が明るみに出、マスコミや国民から集中砲火を浴びせられたのです。野党が迫っていた証人喚問も実現せず、結局は議員辞職という形で幕引きされたのですが、野党の攻勢を勢いづける原動力になったのは確かです。 政界大激震のカウントダウンは、5月に始まりました。社会党が提出した内閣不信任案が、通常なら与党の反対で廃案になるはずなのに、自民党の非主流派が反旗を翻して議会を欠席。243対187票の大差で可決となったのです。新聞見出しには「クーデター解散」など、おどろおどろしい文字が踊っており、当時の喧噪ぶりがうかがえます。この時点での政党支持率を見ると、自民党支持43%に対して野党支持は合計44%(朝日新聞社調べ)でした。 この3日後、衆議院は解散となり、当初から予定されていた参議院選挙に衆議院選挙も加わって、6月22日に衆参同時選挙が行われることになりました。「社公民」など野党は押せ押せムード。一気に自民党を敗北へ追い込もうと、保革逆転ムードは最高潮に達しました。 ところが、ここで予期せぬ出来事が起こります。選挙戦半ばの6月12日に大平首相が急性心不全で急死したのです。大平首相に反旗を翻したはずの自民党反主流派もこれ以降、自民党結束を訴える選挙戦術を展開し、腕には喪章なんかを巻いて「弔い選挙」の様相を呈していきます。旗色が悪くなったのは野党の面々。死者を攻撃するわけにもいかず、「社公民」のにわか協調関係もあやしくなっていきます。こうして、いかにも日本的な情の世界のなかで自民党は予期せぬ圧勝を果たし、安定政権が戻りました。 政権交代に失敗した野党の間ではぎくしゃくした関係が露見し、翌年には社公協調路線も凍結に。こうして1993年まで13年間、自民党政権は延命していくわけです。あと一歩で与党第一党になるかもしれなかった社会党の党代表は、飛鳥田委員長。「首班指名になったら自分が首相かも……」と考えたでしょうが、それよりも当人が気をもんだのは開票速報。首相選挙どころか、通常の衆議院選挙で国会議員の座を守るのがやっとだったのですから。 大激震から、一転安泰へ、めまぐるしく動いた1980年上半期の政局。その後、鈴木(善幸)政権を経て、中曽根政権が5年弱続くのでした。 ●DATA--衆参同時選挙の結果
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当原稿執筆/2002年5月23日 当ホームページに掲載されている原稿の無許可転載・転用を禁止します。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約によって保護を受けています。 Copyright 2002-3 tomoyasu tateno. All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission. |